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さんかく様のイケニエ係!

作者: 寺尾友希(田崎幻望)


「ほら、コン(きち)! 稲にちゃんと実が入ったよ! 今年は稲の花が咲く時期に雨が多かったから、ちょっとだけ心配してたけど、さんかく様の田んぼは今年も豊作だぁ!」


 穂の垂れてきたまだ緑色の田んぼを見回し、歓声を上げる僕のすぐ横で、黒い子狐のコン吉が嬉しそうにピョンピョンと跳ねた。

 そのままクルリと宙返りし、勢い余って田んぼの畦からコロリと落ちた。


「あー、何やってんだよコン吉ってば。今は水があんまりない時期だからまだいいけど」


 稲の根元まで落ちたコン吉を拾い上げ、僕は笑いながら泥に汚れたお尻を手ぬぐいで拭いてやった。


「おいでコン吉! 草取りも一段落したし、お昼にしよう!」


 田んぼの土手に風呂敷を広げ、よいしょと腰を下ろした僕の太ももの上に、コン吉がトトッと乗り上げて、ふっさふっさとしっぽを振る。


「ちょっと待てって、コン吉の分もちゃんとあるから」


 取り出したのは、菜っぱの漬物で巻いたおむすびと玉子焼きだ。

 コン吉は野菜を食べないから、コン吉の分は塩分なしのおむすび、具は鮭。手のひらに乗せて差し出したそれを、コン吉が夢中で食べているのを見ていると、こっちまで楽しくなってくる。


「うーん、幸せな景色だねー。これもさんかく様の御利益(ごりやく)だ」


 反対側の手で玉子焼きを口に放り込みつつ、僕は理想的な田園風景に目を細めた。

 キラキラとした清流が流れ、ギシギシと水車が回り、森に囲まれた一面の田んぼの稲は病気一つなくそよそよとそよぎ、遠くからは鶏の鳴き声が聞こえる。

 ここは、さんかく様の庭。

 四百年前から続く、契約の箱庭だ。


「さて、ご飯を食べ終わったら、魚の池の様子を見に行こう。昨日の鶏は気に入って頂けたかな? 今夜のイケニエは、マスとかどうだろう? さんかく様のおかげで、おっきく育ったからね」


 僕は「うーん」とひとつ伸びをすると、立ち上がって風呂敷に付いた葉っぱを払った。

 僕より先に食べ終わっていたコン吉は、近くでイナゴを追いかけて遊んでいる。


 僕は、さんかく様のイケニエ係。

 さんかく様というのは、この地に祀られている田んぼの神様だ。

 多分、本当の名前は違うんだろうけれど、地元の人間は皆さんかく様と呼んでいる。

 さんかく様は、元々あまり作物の取れなかったこの国の初代国王と契約して、毎日生き()を捧げる代わりに、この国に作物が実るように守護してくれるようになったそうだ。

 ここは、まっくろ森と言われるさんかく様の神域で、とても広い。

 僕はここで、さんかく様に捧げる生き餌――イケニエを育てている。

 僕を育ててくれた爺様も、その爺様を育ててくれた爺様も、ここで畑を耕し、稲を育て、川魚や鶏を育てて、さんかく様のイケニエを用意してきた。

 本当は、さんかく様のイケニエは、生きてさえいればアリでもダンゴムシでもいいらしい。

 爺様の爺様が足を折って寝込んだとき、さんかく様から『イケニエは虫でも良いから無理をするな』とお告げがあったそうだ。

 でも、僕だったら、アリより魚が食べたいし、たまにはお肉だって食べたい。魚やお肉だけじゃなくて、ご飯も食べたいし味噌汁があればなおいい。漬物だっておひたしだって食べたくなる。マズイものより美味しいものが食べたい。

 爺様も、爺様の爺様もそう思ったようで、僕たちは代々、美味しいお米、美味しい麦、美味しい野菜、美味しい魚に美味しい鶏、とこだわって育ててきた。

 だから胸を張って言える。

 僕はさんかく様のイケニエ係。

 誰より美味しいイケニエを用意出来る、さんかく様のイケニエ係だ。


「おーい、オド!」


 川魚――ここのはマスだ――の池に付くと、遠くからブンブン手を振りながら、二人の少年が走ってきた。僕より頭一つ分高いけれど、まっくろ森のすぐ外の村に住む、僕の幼なじみだ。


「どうしたの、ヨハにミヒヤ?」


「今くらいなら、きっとオドが養殖池にいると思ってよ。魚分けて欲しいんだ」


「ええー、またぁ?」


 僕は口を尖らせて腰に手を当てた。足下ではコン吉が、カッカッと可愛く威嚇の音を出している。

 僕だって幼なじみのお願いを快く聞いてあげたいところだけれど、ヨハたちが来たのは今月に入ってもう五回目だ。ほとんど二日おきに来ている。


「そう言うなって。ここんとこ、村じゃろくに作物が採れないんだよ。魚なんてみんな取り尽くされて、ここくらいにしかいねぇしよ」


「おかしいなぁ。僕、ちゃんとさんかく様に毎日イケニエを供えてるのに。村に加護が届いてないのかな? 僕の所は今年も豊作だよ。ここのはさんかく様の魚なんだから、本当は、幾ら友だちだからって、僕の都合であげちゃうわけにいかないんだからね!?」


 念を押すと、ヨハは顔の前でパチンと両手を合わせた。


「分かってるって。手が空いたら稲刈りの手伝いに来るからよ! ばあちゃんに魚を食わせてやりたいんだよ」


「しょうがないなぁ。今回だけだよ」


「恩に着る」


 ニカッと笑ったヨハに、僕は魚の池から十匹のマスを網ですくってあげた。ちゃっかり者のヨハは、しっかりと麻の袋を二枚持って来ていて、自分の袋に六匹、ミヒヤの袋に四匹入れた。ヨハとミヒヤの家族の数だ。


「稲刈りの約束、忘れないでよー?」


 不機嫌に鼻の頭にシワを寄せるコン吉をなだめる僕に、遠ざかっていくヨハが笑顔でブンブン手を振った。



◇◇◇

(sideミヒヤ)


「いくら何でも、罪悪感とか感じないのか?」


 マスの入った麻袋を担ぎ、渋い顔をした俺に、ヨハはあっけらかんと笑った。


「なんだよ、俺はひとっつも嘘なんかついてないぜ? オドは人が好いからな、村が不作だっつっときゃ、いっくらでも食料を分けてくれるんだよ。なんでか知んねぇけど、オドの作るもんはうめぇんだよなぁ」


「……そもそも、不作になる畑もないだろうに」

  

 くしゃりと笑ったヨハと俺は、もう長いこと、鍬も鋤も握っていない。

まっくろ森から一歩踏み出せば、そこは、近代化した町並みに舗装された道、四角い建物の並ぶ工業地帯だ。

 俺らの家が、畑を耕し、田んぼに稲を植えていたのはもう十年も昔のことだ。

 『村じゃ最近ろくに作物が採れない』『川に魚もいない』

 ヨハが言ったのは本当のことだ。

 まっくろ森の中のさんかく様の庭は四百年前からほとんど変化していないらしいが、森の外は違う。

 この国は水資源が豊富で、以前は農業が盛んだったが、なにせ土地の高低差があり、一つの畑や田んぼの面積が狭い。大型の農業魔道具を導入出来るほどの平地がなく、良い作物を作ろうと思えば多くの人間の手が必要で、農作物の単価が高くなる。地産地消していた昔はそれでも良かったが、二十年前に隣国で大規模な輸送用魔道具が開発されると、状況は一変した。土地が平らで大型の農業魔道具を使い、低いコストで大量に生産できる隣国の農産物が輸入されるようになり、この国の農家は立ちゆかなくなった。

 そこで、国策として進められたのが、魔道具用の精密機器の工場誘致だった。

 精密機器を作るためには、綺麗な水が大量に必要だ。

 農家は自分の土地を売り、かつて自分が耕していた田畑に立つ工場で働くようになった。

 先祖代々の土地を、好き好んで売るヤツはいない。

 だが、これも時代の流れってことなんだろう。

 この村に、畑も田んぼももう一つもない。

 

「まあ、農家とちがって、六日働けば一日は休みだし? 冬になって雪が降っても出稼ぎに出なくていいし、今まで自分で必死に計算して税金払ってたのも、工場主が勝手に計算して払ってくれるし? 米や麦は、正直父ちゃん母ちゃんが作ってた頃のが旨かったと思うけど……安く食える分、金貯めて……俺、最新の写真魔道具が欲しいんだよ」


 少しだけ苦く笑っていたヨハは、話題を逸らすように自分が好きな魔道具の話を始めると、あっという間に夢中になってペラペラとしゃべり出した。

 最新の魔道具を手に入れても、二年もすればもっと性能が良く軽いものが発売される。

 それを買うために働き、買ったらまた次が欲しくなる。


「で? 今年の稲刈りは手伝うのか?」


「そうだなぁ。基本、朝から夜まで工場だからな。休みが合えば手伝わねぇこともないかも?」


「絶対手伝う気ねぇだろ」


「はははっ」



◇◇◇

(sideオド)


「あれ?」


 日が暮れかけた頃、さんかく様のお社にたらいに入ったマスを二匹お供えした後、自分の小屋に戻ろうとしていた僕は、変なものを見つけた。

 足下を歩いていたコン吉が、急に走り出したと思ったら、何か木陰から黒いものをくわえて引っ張り出そうとしている。

 黒い布――服?


「うわ、ひょっとして行き倒れ!? 大丈夫ですか、お姉さん!?」


 木陰にうつ伏せに倒れていたのは、すっかり汚れてはいたけれど、まだ若い女性だった。

 行き倒れとか話には聞いたことがあったけれど、実際見たことはなかった。慌てて揺すると、お姉さんは薄目を開けた。


「……お腹……すいた……」


「お腹すいてるの? お腹すいてるだけなら、僕でも何とかなるかな? とりあえず、お茶飲んで……僕のうち、すぐそこなんだけど、自分で歩けるかなぁ?」


 ぐったりとしたお姉さんに水筒の麦茶と、持っていた蜂蜜飴をあげて、身を起こしたお姉さんに肩を貸す。

 小柄だと思っていたけれど、力の入らない大人の体というのはしっかりと重くて、僕はよろよろしながら家へ向かった。


「どれくらい食べてないの? ご飯より、おじやとかのほうがいいかなぁ」


「……ん、十日、くらい?」


「そりゃ大変だったねぇ、お姉さん」


 僕の家は、大きさは普通の家くらいあるけれど、もう何百年も前に建てられたものだから、あちこち壊れてちゃんと住めるのはほんの一部だ。昔は、さんかく様の社務所とかいうものだったらしい。爺様の爺様の爺様が子どもだった頃には、さんかく様のお社にお参りする人が毎日何十人もやって来て、お祭りの日にはズラリと屋台が並んで、社務所では人を雇ってお守りやお札を売っていたそうだ。その頃には、その売り上げでお社や社務所の修理や補強が出来ていたそうだけれど、今、さんかく様のお社にお参りするのは僕だけで、僕一人じゃ、お社の雨漏りに板を打ち付けて、破れた障子を張り替えて、割れた土壁の隙間を塞ぐのがせいぜいだ。

 それでも、普段寝起きしている囲炉裏のある板の間一間と、竈のある土間だけは何とか死守している。

 板の間に一カ所だけ敷いてある畳の上にお姉さんを寝かせると、僕は大根と人参を刻んでおじやを作り始めた。今日は特別に卵も入れちゃおうか。


「……んー、染み渡るわー」


 お肉もお魚も入っていないおじやだったけれど、お姉さんは嬉しそうに食べてくれた。

 ふぅふぅと冷ましたおじやをコン吉によそり、自分も食べようとして、僕はふと首を傾げた。


「そういえば、なんでこんなところで行き倒れたの? お姉さん? はっきり言ってここって何もないよ?」


「ああ、あたしは北の方にある国の出身なんだけど、実家のほうがここんとこ冷害で困ってるらしくてね。この辺に、霊験あらたかな作物の神様が祀られてるって聞いて、お札か何かもらえないかと思って神社を探してたんだけど……見つからない内に森で迷っちゃって」


「ああ、なんだ、お客さんだったのか!」


「……お客さん?」


 はて? と不思議そうな顔をしたお姉さんに、お参りに来る人をお客さんて呼ぶのは違ったかな、と思うけれど、相応しい言い方が思い浮かばない。


「お姉さんが目指してたのは、ここで間違いないよ! ここは、田んぼの神様のさんかく様の庭だからね。お社はもっと奥。明日の朝になったら案内するよ。……でも、お札、お札かぁ」


 眉尻を下げた僕に、お姉さんも困った顔をする。


「ひょっとして、この国の人じゃないと売ってもらえないとか?」


「うーん、それは大丈夫だと思うんだけど、最近お参りに来る人って全然いなくてね……ぶっちゃけ、お札がどこにあるか分かんないんだよね。爺様が生きてた頃には、まだポツポツいたみたいだから、どっかにはあると思うんだけど……」 


 おじやをすする手を止めて、お姉さんが目をパチクリさせる。


「霊験あらたかな、作物の神様なんだよね?」


「うん、霊験とかご加護とかは間違いないよ。僕の畑も田んぼも毎年大豊作だからね。冷害にあったことも干ばつにあったことも、イナゴに食われたこともないよ。でも、なんでかお参りに来る人っていないんだよねぇ」


 僕も斜め九十五度に首を傾げる。

 僕はさんかく様のイケニエ係。

 イケニエは毎日すくすくと美味しく育っているから、その他のことはあんまり気にしていなかったけれど、そういえばなんでお参りに来る人がいないんだろう。

 もしお参りする人が増えることがあったら、僕も爺様みたいにお守りを作ったりお札を作ったり出来なきゃならい。

 確か、小さい頃に爺様が作り方を教えてくれたと思うんだけど……?


「そうだ、お守りとかお札には、お使い狐の毛を入れるんだよ!」


「お使い狐?」


 不思議そうなお姉さんの前で、僕はおじやを食べ終わって毛繕いしているコン吉をひと撫でふた撫でした。そうすると、手のひらには何本かの抜け毛がくっついた。


「この辺だと、黒狐はさんかく様のお使い狐だから、いじめたり殺したりすると罰が当たるって言われいてるんだ。コン吉も、稲を食べちゃう雀を追っ払ってくれたり、芋をかじっちゃうネズミを獲ってくれたり大活躍なんだ。この毛を入れて、お札を作るね。さんかく様のお守りを作って売れるようになったら、お参りの人も増えるかもしれないし。そっか、爺様の頃よりお参りの人が減ったのは、お守りとかお札がなくなっちゃったからかもしれない」


 爺様が死んだのは、もう七年前で、僕は九歳だった。

 僕は、爺様が死んでからそのまんまになっている爺様の部屋から、りんごの木箱を引っ張り出した。この中に、お札の紙と硯と墨が入っていたはずだ。


「……それって、古語? 凄いわね、そんな難しい字が書けるの?」


「隷書はさんかく様のお札に使う字、篆書はさんかく様のお守りに使う字だからね。爺様にこってりしぼられながら勉強したんだ。ふふ、だからむしろ、ヨハ達が村で使っている字は下手くそなんだよ、僕」


 お札の中には、さんかく様の本当の名前を書く。

 この名前を知っているのは、さんかく様のイケニエ係だけで、もしお札を分解するような罰当たりな人がいたとしても、この字を使っていれば、他の人にはさんかく様の名前がバレない。

 それにこの字は、さんかく様の春と秋のお祭りの時の祝詞や請願文を書くときにも使う。さんかく様は、今の字は読めないけれど、昔のこの字は読めるんだそうだ。


「はい、出来た。さんかく様は田んぼの神様だから、子宝とか商売繁盛とかの御利益はなくて、豊作祈願しかないんだけど……これでいい?」


「ええ、もちろんよ。ありがとう」

 

 お姉さんはニコニコ笑うと、大切そうにお札を懐にしまった。



◇◇◇


「やめろ! やめてくれ! そこはさんかく様の田んぼだ、さんかく様の魚、さんかく様の鶏なんだ!」


 必死に叫んで暴れる僕の腹を、軍服に包まれたがっしりとした腕が抱え、びくともしない。

 ついさっきまで、僕はいつもの年のように、コン吉と稲刈りをしていた。

 さんかく様の田んぼは今年も豊作で――



◇◇◇


「さぁ、稲刈りだよコン吉!」


 重く穂を垂れた金の湖のような田んぼを前に、僕は鎌を握って気合いを入れた。

 さんかく様の田んぼは広くて、僕一人で稲刈りするのは大仕事だ。

 刈った稲は穂が付いたまま干して、干した稲が雨に降られないよう管理しなきゃならない。まぁ、でも、ここはさんかく様の庭。さんかく様のご利益てきめんで、稲を干している間は大抵良い天気で、急な雨で慌てて走り回ったりした記憶は、ここんとこない。


「結局、ヨハは来なかったねぇ」


 とはいっても、別に稲刈りの日を知らせていたわけじゃないし、作物はみんな似たような時期に収穫するわけだから、きっとヨハの家も今頃は稲刈りで忙しいんだろう。

 稲を刈っていると、時々稲の隙間を抜けて、野ネズミがびゅんっと飛び出して来る。それを追いかけて捕まえるコン吉を見ながら「働き者だなぁ」と目を細めていると、村の方から聞き慣れない音がしてきた。


「なんだろ? 大勢の馬? みたいな?」


 馬と、鉄で出来た箱のような車に乗って来たのは、たくさんの軍人だった。

 のどかな田園風景の中に突如として現れた異質な軍馬と軍人たちに固まっていると、背の高い黒縁の眼鏡をかけた軍人がカツカツと軍靴を鳴らして近づいて来た。

 整った顔つきだけど、何故だか背筋がゾワリとした。


「くっ、はは、まさか王都の外れにこんな場所が残っているとは。実に見事だ」


 何が面白いのか、顔を歪めて笑った男に、全身の毛を膨らませてコン吉が威嚇する。

 

『ギャンッ!』


 軍靴に蹴り飛ばされたコン吉の小さな体が、放物線を描いて茂みの中にガササッと落ちた。

 ……え?


「コン吉! コン吉! 何すんだよいきなり! 子狐にするこっちゃないだろ!」


 理解出来ず、一瞬フリーズした後、地面に落ちたコン吉のところへ走り出した僕の肩を、軍人の長い腕が押しとどめる。それを振り払おうとすると、今度は腹に手を回され持ち上げられた。


「まぁ、まぁ、たかが狐じゃありませんか。狩りの獲物だ」


「黒狐は、さんかく様のお使いなんだ! 狩っちゃいけないって知らないのかよ!?」


「ほう、神の使いにしては随分と呆気ない。ただの狐をありがたがって、これだから迷信深い田舎者は救いようがない」  

 

 やれやれ、と首を振りながら、軍人は訳の分からないことを続けた。


「こんな田舎にいらしたならご存じないのも仕方ありませんが、三年ほど前に法律が変わったのですよ。この国の水資源は、生活用水以外での個人の過使用は禁止。つまり、農業用水としての使用は法律に違反します」


「……は?」


 何を言っているんだ、コイツは?


「特に水資源を大量に消費する稲作は重罪です。富国強兵、工業立国としてこの国を育てるための国策です。ご理解くださいますね、三の姫」


「……は?」


 何を……何を言われているのか、理解出来ない。


「三の姫、あるいは『まっくろ森のイケニエ姫』といったほうが通りが良いか。ご承知ですよね? 貴女は現国王の末娘でしょう? オディカ姫」


「……僕は、オドだ」


「国王陛下は貴女をかばってこられたが、軍部としては重罪にこれ以上目をつむるわけにはいかない。貴女の今までの罪を帳消しにする代わりに、私と貴女の婚姻が決まったのですよ」


「……僕は、姫なんかじゃない。さんかく様のイケニエ係だ!」


 何を言っても、軍人には通じない。暴れても、軍人の腕はびくともしなかった。 


「ああ、その件でしたらご心配なく。貴女の仕事はなくなります。この森は、撤去されますので」


「はぁ?」


「田んぼの守り神のさんかく様、でしたか。言ったでしょう? この国で、稲作は重罪。最早この国に、ここ以外の田んぼは存在しないのですよ。国では今、商売の神が信仰されておりますよ。神使は白狐とか。田んぼの存在しない国に、田んぼの守り神は必要ないでしょう? 時代遅れのさんかく様には、一刻も早く退場頂かなくては」


「田んぼが、ない……?」


 愕然と、僕は村の方を振り返った。ヨハや、ミヒヤの顔が浮かぶ。

 ヨハは言っていた。最近、村で作物が採れないと。オドの作る米は旨いなぁ、とおむすびを頬張っていた。

 呆然とする僕と、僕を抱えたままの軍人の元に、別の軍人が走り寄って来た。

 そのまま、カッと踵と踵を合わせて静止すると、軍帽に手を当てて敬礼した。


「この奥に、鶏舎と川魚の養殖場を発見致しました!」


「そうか。他の田畑ともども破壊しろ」


「はっ!」


「なっ、何を言っているんだ!」


 目を剥いて睨み付けた僕に、軍人はニヤニヤした笑みを向ける。


「おっとそうか、訂正しよう。鳥と魚は我が部隊への愛しの婚約者殿の気遣いだ。遠慮なく馳走になろうじゃないか。作物は馬の飼い葉にちょうど良かろう」


 再び敬礼して去った軍人が、後方に控えていた数人に何かを伝えると、その数人があちこちにパッと散らばっていった。


「やめろ! やめてくれ! それはさんかく様の田んぼだ、さんかく様の鶏、さんかく様の魚、さんかく様のイケニエだ!」


 手を伸ばして叫ぶ僕の耳元に顔を寄せて、軍人は薄く笑った。


「存在するかも分からない神のために、今まで苦労しましたね。もう、こんなに手を荒らして、畑仕事なんてしなくて良いんですよ。私の妻として、何不自由なくお暮らしなさい。国の実務は既に掌握しました。後は、王家直系の姫さえ娶れば、老害どもも文句は言わない。この国は名実ともに私のもの。風にも当てぬよう、大切に大切にすると約束しましょう。

 ああ、名乗り忘れました。私はサムリフ・ポスカ。階級は准将です」

 


◇◇◇


 僕は、暗いお社の中で、月明かりに照らされたご神体を前に、ペタリと座りこんでいた。

 青白い月明かりに照らされたご神体は、涙に歪んでぼんやりとしか見えない。

 軍人達が来た夜。

 僕は、さんかく様と最後のお別れがしたいと言って、一人、さんかく様のお社に泊まることを許された。

 男所帯の軍の中に、僕がいることはあまり望ましくなかったようで、むしろ好都合とポスカ准将は僕を閉じ込めて行った。

 外には見張りの軍人が二人立っているけれど、そんなことはどうでもいい。


「ごめんなさい、ごめんなさい、さんかく様……僕は、さんかく様のイケニエ係なのに、さんかく様のイケニエを守れませんでした……」


 軍人達は知らない。

 さんかく様のイケニエ係は、決してお社には泊まらない。

 どんなに大雪でも大雨でも、イケニエをお供えした後は自分の社務所へと帰っていく。

 お社で夜を越すのは、イケニエの仕事だから。


「さんかく様、今日のイケニエを用意出来ませんでした。だから今日は、僕を召し上がってください。僕は一人きりだから、さんかく様のイケニエには足りないけれど……」


 今日は僕をお供えするとして、明日のイケニエはどうしよう。

 軍人達は、このお社やご神体をも破壊してしまうかもしれない。

 イケニエもなく、お社もなくなってしまったら、さんかく様はどうなるのだろう。

 お腹を空かせないだろうか、これから冬に向かうのに、寒くて凍えたりしないだろうか。

 

「ごめんなさい、さんかく様……」


 何度目かも知れずつぶやいたとき、締め切ったはずの横手の雨戸がガタタッと音を立てた。

 泣きすぎて重くなった頭を振りながらそちらを見ると、破れた雨戸の隙間から、何か黒くて小さいものがむぎゅぎゅっと入ってきた。


「コン吉? ああ、コン吉だ! 良かった無事だったんだね。あんな目にあったのに、探しに行けなくて、手当してあげられなくて本当にごめん……近くにいたのに、守れなくて……僕ってば、イケニエも、コン吉も守れなくて……本当に駄目なヤツだ……」


 すりっ、と顔を寄せてくれるコン吉を抱きしめると、いったんは枯れたかと思った涙が、次から次へと零れてきた。

 僕がさんかく様に食べられた後、コン吉はどうなるんだろう。さんかく様のお使い狐だから、さんかく様が守ってくれるだろうか。

 このさんかく様のまっくろ森も更地にして、大きな施設が建つと軍人達は言っていた。さんかく様のお社の脇にある泉は、良質の水資源で、全ての川につながる源流だから、国が管理することになると。そんな場所で、コン吉や他の狐達は生きていけるのだろうか。


「ごめんね、ごめんねコン吉……僕はこれからさんかく様のイケニエになるから、もう守ってあげられないんだ……どうか君は幸せになって欲しいけど……」


 いなくなる僕が、こんなことを祈るのは無責任だろうか。


「会いに来てくれてありがとう、会えて良かった」


 涙を拭いながら、そっとコン吉の体を放すと、コン吉はピョンと飛び上がって、さんかく様のご神体の上に着地した。


「ちょっ、ダメだよコン吉! 罰が当たっちゃうよ!」


 慌てて立ち上がった瞬間、シャン、という鈴の音がした。

 お社で神事に使う、たくさんの鈴が付いた神具の音だ。

 僕以外の誰が……?

 さんかく様のお社で、神事に鈴を鳴らすのは僕の役目だった。ゆっくりと周りを見回した僕が、再びコン吉に視線を戻すと、コン吉とご神体がぼんやりと暗く輝いていた。


「……コン吉?」


 目を離したはずもないのに、コン吉とご神体は、いつの間にか黄色っぽい狩衣を着た長い黒髪の男の人へと変わっていた。片あぐらで頬杖を付いた男の人のボサボサした頭には、コン吉に似た三角の黒い耳が乗っていて、狩衣のお尻では黒いフサフサ尻尾が揺れていた。

 暗いはずなのに、何故かはっきり見える。

 黄色じゃない。狩衣の色は、緑が少し混じった、稲刈り時期の稲の色。


「まさか、さんかく、様……?」


 呆然とした僕の声に、男の人は気まずそうにボリボリと頭を掻いた。


「いや、な、だますつもりはなかったんだ。ただ、オドに手ずから食べさせてもらう贄が旨すぎてなぁ。つい、子狐の姿をとって、通ってしまったというだけの話で」


「コン吉が、さんかく様?」


 三角耳の男の人は、気まずそうに視線をそらすと、しっかりと頷いた。

 僕は二、三回瞬いて――次の瞬間、顔に血が昇ってきた。


「す、すみません、さんかく様だとは知らず、色々とご無礼なことを……」


 走馬灯のように、今までのコン吉とのやり取りが脳内を駆け巡る。

 コン吉がマスを食べたいと訴えるのに、『めっ、これはさんかく様のだからね』なんて偉そうに嗜めていたことなんか序の口で、寄生虫がいるかもしれないと嫌がるコン吉に虫下しを飲ませたり、外を歩いたコン吉の足を雑巾で拭いたり、お風呂で洗ったり、一緒に寝たりまでしていた。ネズミや雀を捕ってくれば頭を撫でたし、膝に乗るコン吉の体をなで回していた。その上、日常的に食べさせていたのは、野菜くずの雑穀おじやだ。まぁ、僕も同じものを食べていたけれど、さんかく様に食べさせるようなものじゃないのは確実だ。


「いや、まぁ、俺だと知らなかったんだから気にするな」


 コホン、と咳をすると、さんかく様は僕の顔へと視線を戻した。


「そんなことより、オドは城に戻って、あのいけ好かない男の妻になるのか?」


「そんな、まさか! 僕はさんかく様のイケニエ係です……から」


 勢い込んで言おうとして、僕の声は尻つぼみになる。

 イケニエを用意出来ないイケニエ係なんて……


「さんかく様、僕はさんかく様のイケニエ係。それなのに今夜のイケニエを用意出来ませんでした。だから、足りないかもしれないけど、僕をイケニエとして召し上がってください」


 悲壮な覚悟を込めて言った僕に、さんかく様はニカリと破顔した。


「そうか」


 嬉しそうに立ち上がったさんかく様が、僕の方へと手を伸ばしてくる。

 ああ、爺様。四百年続いてきたイケニエ係は、僕の代で終わりになってしまう。でも、さんかく様のイケニエになって終わるなんて、イケニエ係に相応しい最後なんじゃないだろうか。 


「……え?」


 てっきり食べられると思った僕は、ひょいと縦抱きに抱き上げられて変な声を上げてしまった。


「ん? オドは俺のイケニエになるんだろ? ということは、俺のものになるということだ。この国じゃなく、俺に付いてくるということだろう?」


 さんかく様のビックリ理論にちょっと付いていけないけれど、ここからさんかく様と逃げられるなら、問答無用で賛成する。

 でも、外には軍人が見張りに立っていて、そのさらに向こうにはたくさんの軍人がさんかく様の鶏や魚を食らいながら野営している。


「心配するな」


 さんかく様が、お社の入り口の戸に手をかけると、再び『シャン』と鈴の音がした。

 ガチッ、と鍵の開く音、続いてゴトンと鍵の落ちる音。


「腐っても神なんでな。人の世のモンにゃ捕まらんよ」


 『シャン』『シャン』『シャン』『シャン』という鈴の音に混ざって、横笛や笙の音が遠くから聞こえてくる。


「さぁ、大神の門出だ。残る者は残り、従う者は従え」


 タンッ、と戸が開くと、僕は思わず息を呑んだ。

 戸の両端に立った見張りの軍人は、凍り付いたようにピクリともしない。瞬きもせず、呼吸すら止まっているように見えた。僕たちの姿は見えていないようだ。

 それよりも、軍人達の向こうに佇んでいる数十の人影。

 黒い狐面を被った人たちが、白い狩衣姿で手に手に鈴や横笛、鼓、提灯を持って佇んでいた。その中でも一番手前にいた人が、狐面を持ち上げる。右目の上に切り傷のある、優しそうな白髪交じりのおじいさんだった。


「御前に」


「この森にいる眷属はこれで全てか」


「さようにございます」


「残る者は」


「おりませぬ」


 そこまできて、僕は気付いた。多分、この人たち、まっくろ森に棲んでいる狐達だ。おじいさんの傷に見覚えがある。森の長老狐にも、同じ傷があったはず。


「ではゆくか」


 僕を抱えたまま、歩み出したさんかく様の周りから、雅楽の音が湧き上がる。

 まるで何かの儀式か、お祭りか、花嫁行列のようだった。住処を追われる悲壮さは全くなく、何匹かは踊りさえ交えて、どちらかというとむしろ楽しそうな様子で狐の群れは進む。

 しばらく行くと、軍人達の野営地へとぶつかった。

 魚を焼く火も、おむすびを口に放り込む手も、注いだ酒の滴さえそのまま凍り付いたように時を止めるその中を、さんかく様の一団はまるで森の木立を抜けるかのように通り過ぎていく。

 僕が、魚や鶏に目を止めて眉尻を下げたのに気付いたのだろう。

 さんかく様が、僕の背中をトントンと叩いた。


「心配するな、オド。お前や、エダや、ウヅが長年かけて俺好みに改良してくれたイケニエだ。眷属どもが生きたまま確保している。またそこから、新たな地で増やしてゆけば良かろうよ」


 僕は、込み上げる嗚咽をさんかく様の肩に顔を埋めてやり過ごした。

 エダは僕を育ててくれた爺様、ウヅは爺様の爺様だ。さんかく様は分かってくれていた。僕や、爺様や、爺様の爺様がやって来たことは、無駄にならなかった。

 

「御前、失礼致します!」


 どこかで聞いた声に、僕は顔を上げた。

 時間が止まったかのような軍人達の合間に飛び出して来たのは、以前にまっくろ森で行き倒れていたお姉さんだった。


「……なぜ、眷属でもない者が動ける?」


 いぶかしそうに眉をひそめたさんかく様が、ああ、と頷いた。


「そうか、そなた、オドが札を授けた娘か」


「覚えてくださっていて光栄です! もし、さんかく様が次の住処を決めておられないのなら……我が国に、いらしてもらえませんか」


 さんかく様は首を傾げた。


「そなたは、幼いとはいえど神の一員だろう? 自らの信仰される国に、自らより強い神を招いて何とする?」


「私の国、エンヤ国は、ここより北にあって、乾いた貧しい土地です。私は赤狐、火の気を持つので、国を多少暖めてやることはできますが……水は呼べません。あの国の民に必要なのは、水の神です」


 お姉さんの嘆願に、さんかく様は「なるほど」と頷き、僕のお尻を支える手に力を込めて、僕をお姉さんに押し出すようにした。


「自らの利より、民を思う志や見事。オドはどうしたい? この新神の国へ俺とゆくか?」


「え?」


 僕はさんかく様とお姉さんの顔を見比べる。僕はさんかく様のイケニエになったんだから、食べられるまでさんかく様に付いていくものだとばかり思っていたけど……僕が行きたい場所を決めていいの?


「オドさん、是非いらしてください。ほんと、なーんにもない国ですけど、国を挙げて歓迎しますよ!」


「え? え?」


「もちろん、国王陛下の許可はとってますし、あの軍人みたいに、無理矢理陛下の嫁になれとか言いません。むしろ陛下は私の嫁ですから!」


 渡してなるものかー、とか元気に叫ぶお姉さんに、僕は毒気を抜かれた。

 こんな人間味のあるお姉さんが、実は神様?

 さんかく様もコン吉に化けていたことが気まずそうだったし、神様って、僕が思っていたよりも親しみやすいのかもしれない。


「国王陛下のお嫁さんなんて、とんでもないですよ。僕には何の力もありませんから。イケニエも守れなかった、役立たずのイケニエ係です……」


「何を言っているんですか! オドさんは、隷書と篆書が読めて、書けるんでしょう?」


「……はい」


 なんで、ここでその話題? 不思議に思ったのは僕だけではないようで、さんかく様も不思議そうな顔をした。


「娘、隷書と篆書がなんだというんだ?」


「かーっ、これだから大神て方は。人間に興味がないんだから。四百年前とは違うんですよ。今現在この世界で、隷書と篆書が読み書きできる人間がどれくらいいると思います? 多分、オドさんお一人ですよ」


「は?」


 さんかく様が目を丸くして、三角耳がピクピクと揺れた。


「神の契約には、篆書を用いなければなりません。今回は契約違反ですから、破棄は出来るでしょうが、新たな地に根を下ろすには、篆書を書けるオドさんにその地の者と契約書を作ってもらう必要があるんですよ。そして、神の力の代行には隷書が必要。ね? オドさんの力が必要なんです」


「えっと……? でも、お姉さんは新しく神になって、エンヤ国の神様になったんですよね?」


「私は、地元で産まれて地元で信仰を得て地元で神になったから、まぁなんていうか仮契約みたいな? でも、よその神がその地に居着くには、先住者との契約が必要なんですよ。いや、まぁ、住み着くくらいならなくてもいいけど、それだと全ての力を出せないって言うか、人間でいうと両手縛られてる状態みたいな? ともかく、今、神業界じゃ、篆書の書ける人間が喉から手が出るほど求められてるわけです」


 ペラペラと説明してくれるお姉さんに、さんかく様は僕をギュッと抱きしめた。


「オドは俺のだ」


「あー、もう、分かってますよ! 力の大小を気にしなければ水の神はさんかく様の他にもいるけど、オドさんの代わりはいない、だから自分に価値がないとか言わないで、自信を持って、って話をですね」


 さんかく様の三角耳が、ペタリと折れた。


「……俺はオドに付いていく」


 その姿に、僕に怒られて凹んでいるコン吉の姿が妙に重なった。まぁ、コン吉はさんかく様だったんだから、思い返せば、アレもコレもさんかく様だったわけで。


「ぷっ。くふふ、ふはっ」


 思わず笑い出した僕の顔を、さんかく様がニコニコとのぞき込んだ。


「おお、オドが笑った」


「だって、さんかく様がコン吉だったと思ったら……」


「今頃!?」


 僕につっこむさんかく様の憮然とした顔も、何だか面白くて。時が止まった軍人達の姿さえ、何だかツボに入ってしまった。

 ひときしり笑った後、僕はお姉さんの顔をちゃんと見て返事をした。


「僕が役に立てるなら、行きたいです。もちろん、さんかく様も一緒に」


「うわぁ、ありがとう! エンヤ国に来たら、ぜひ私と陛下の契約書も作ってね! 契約書さえあれば、神だって人のお嫁さんになれるもの!」


 口調が素に戻ったお姉さんに、さんかく様が「何が民のためだ、完全にそれは私欲だろう」とつっこんでいたけれど、楽しくなってしまった僕は、さんかく様の腕の中で、ずっとケラケラと笑っていた。



◇◇◇


 王城を、一匹のネズミが走っていた。その黒いネズミは、鍵の閉められた国王の居室、その扉の下に顔を突っ込み、体をねじ込むようにして部屋の中へと侵入した。

 しかし、豪華な調度品にはホコリが被り、ソファやベッドには白い布が掛けられている。部屋の主は不在のようだった。

 黒いネズミは首をひねり、王城をチョロチョロと駆け巡って彼の人を探した。

 そうして、ネズミは、忘れ去られたような北の塔に、ついに目的の人物を見つけた。

 火も入っていない暖炉の前、その男は一人がけのソファに沈み込むように座っていた。

 黒いネズミの姿は揺らめくように黒い狐へと変わり、狐は口を開いた。


「契約は破られた。この国は我の影響下から外れる。違約金代わりに、オドはもらっていく」


『おお……』


 くぐもった声に、黒狐はピクピクとヒゲを揺らした。


『オドを……お連れくださいますか。あの子を……オドを、末永くよろしくお願い致します、さんかく様』


 身じろぎすらもしない国王に、黒狐はコテリと首を傾げた。


「我を排除するは、そなたの指示ではないのか?」


『全ては……わしの不徳の致すところ。四百年前、この国は、荒れ乾いた貧しい土地でした。それが、さんかく様のおかげて水と緑に溢れた美しい国土に変わった。その恩を、皆は忘れてしまったのです。供え物を持って、参拝の人々が列を作っていたお社は、訪れる者もいなくなり、いつしか供え物はイケニエ係の「仕事」になってしまいました。覚えておられますか、さんかく様。最後に、わしと酒を酌み交わした日のことを』


 黒狐は、在りし日の国王を思い出した。

 あれは、まだ前任のイケニエ係、エダが健在の頃で、オドが六歳くらいだっただろうか。

 あの頃まで、国王だけは毎年黒狐の社を訪れていた。

 神である黒狐は、只人の前には姿を現さない。姿を現すのは、お社で一晩を過ごしたことのあるイケニエ係と、イケニエ係をお社に奉った父王だけと言われている。

 神とて、ある程度は舅を慮るのだ。


『国民がさんかく様への信仰を忘れても、王家だけはと思っておりましたが……あの直後、今から十年前、クーデターが起こったのです。首謀者は当時の王太子。オドの兄ですな。国王を弑虐しようとした王太子は、それを事前に察知した軍部によって捕らえられ、処刑されました。それから国王は、軍部に感謝し信任し、王太子をそそのかした文族貴族から軍閥貴族へと権威は徐々に移行していった……と、表向きはそういうことになっております』


「表向きは?」


『全ては、軍部の謀でございました。馬鹿な王太子をそそのかしたのも、味方をするふりをして、王太子を捕らえ、処刑したのも。軍部が実権を握るための自作自演のマッチポンプ。すぐにわしを殺さなかったのは、軍事クーデターによるインパクトで、国民の反発を受けないための緩衝期間ということですかな。この国の主権は既に国民にも国王にもなく、全ては軍部が掌握しているのです。……オドの姉二人は、既に国外に嫁いでおりました。王太子は死に、わしの心残りは、オドのことだけ。しかし、幽閉されたわしには、オドに知らせる術が何もなかったのです』


 黒狐は、静かに王へと歩み寄り、その虚ろな眼窩をじっと見上げた。


「すまなかったな、舅殿。そなたを、守れなかった」


 その途端、静かだった王の声が、楽しそうに揺れた。


『なんのなんの、お気になさいますな。オドを守ってくださる、それで充分。この国の祖は、さんかく様の主様の危難を救った功でさんかく様との契約を得た。それがどれほどの働きであったとしても、もう四百年です。かつて、守り神の斎宮と呼ばれた姫巫女は、いつしかさんかく様のイケニエ係と呼ばれるようになり、人々は昔を忘れ、与えられた恵みを当然のものと享受し、恩を忘れ、信仰を失っていった。守り神の宮の予算は削られ、イケニエ係は誰よりも貧しい態で自給自足の生活を余儀なくされた。もう充分です。もう、この国に縛られることはない。今まで有り難うございました。至らぬ王で申し訳なかった。これからは、どうぞ自由に……』


 つらつらとしゃべっていたしゃれこうべが、カタリと落ちた。あれほど生き生きとしゃべっていた死人は、もうピクリとも動かない。

 忘れ去られた国王。

 死んでは都合が悪いからと、書類の上だけで生かされている国王。

 葬られることもなく、十年前に幽閉された、暖炉もベッドもない塔の一室で。

 ポスカ准将がオドを連れ帰ったなら、生きているはずの国王のサインが婚姻証明書に書かれ、唯一の王族の夫となった准将が、正統な新国王として即位する運びになっていたのだろう。

 正統なる王の血脈を失ったこの国が、どうなるのか。

 そんな人間の些事など、神たる黒狐の気にするところではなかった。

 ただ、昔、盃を交わした男の死に。救えなかった友の死に。黒狐はほんの数秒目を伏せ、僅かな黙祷を捧げた。



◇◇◇


「さんかく池の水位が下がっているだと? どういうことだ、昨年調査させた学者の話では、今後数十年は枯れることのない良質な水源だという話だったではないか!」


 苛立ち紛れに部下を怒鳴りつけるポスカ准将を、まっくろ森の大杉の上から見下ろす一匹の白狐と、一人の男がいた。

 大勢の軍人や軍馬、装甲車でさんかく様のまっくろ森を制圧し、上機嫌に宴を開いたのはほんの半日前のこと。

 朝起きて見れば、閉じ込めたはずの社にオディカ姫の姿はなく、草木はハラハラと葉を落とし、こんこんと湧き出していたはずの泉の水は少なくなり、澄んでいた川は濁り始めた。

 まるで、魔法が解けたかのような光景に、軍人達はしばしの間立ち尽くしていた。


「ははっ、馬鹿だねぇ、人間てのは。ここの大神は、田んぼの神様なんかじゃない。水神だ。発展に水を利用しようって国の人間が、水神を追っ払っちまってどうするつもりなんだか」


 ポリポリと干した魚を囓りながらヒゲをこする白狐に、傍らの男が問いかける。


「あなた様では、水を呼べませぬか」


「おいおい、俺は白狐だぜ? 白狐は金の気だ、商売繁盛の利益(りやく)はやれても、水は専門外だ。まぁ、水は金より生ずるっていってな、すんげぇ頑張れば天才の俺様に出来ねぇはずはねぇけど? そもそも俺はこの国の神でもねぇし? この国にそこまでしてやる義理もねぇわな。神の神力ってなぁ、たいていの場合、受けた信心の量に比例する。俺もここんとこ大概信心を荒稼ぎしてきたが、四百年も前から国中の信心を集めてた大神に勝てるかっつったら、まぁ無理だな。世話係たった一人で満足して国中に水を呼んでくれてた超ー効率の良いオトクなじいさんを、何でまた追い出すなんてアホなマネしたのかね」


 白狐と共にいた男は、不思議そうに首を傾げた。


「この森の主は、もう長年、信仰を失っていたようですが」


「ハハッ、その代わりいただろぉ? 『さんかく様のイケニエ係』ってのがさ。俺らにとって、利益度外視の無私の信心ってなぁこの上ないご馳走なのさ。願い事有りきの上っ面の信心の何百倍、何千倍もの力になる。イケニエなんてのは手段に過ぎねぇ。その上に乗っかった信心ってのが旨くて旨くて、可愛いイケニエ係のために、じいさんはいつでも破棄できる契約をここまでずるずる続けて来たんだろうさ。ま、俺でいうところのお前だな」


「破棄出来たのですか? 契約を?」


「イケニエ係は気付いてなかったが、この周りの村人はじいさんに供えられたイケニエをちょいちょいちょろまかしてたからな。人間が契約に違反したなら、神はいつだって契約を破棄できる」


 白狐は、枝の下に投げ出した前足をプラプラさせながら、右往左往する軍人達を面白そうに眺めた。


「神と引き換えにしてでも手に入れたいほど、オディカ姫ってなぁ魅力的だったのかね?」


「オディカ姫を娶ることで付随する、この国の王位が、でしょうな」


 白狐は、足下を通り過ぎるポスカ准将の背中に、魚の頭をプッと吐き出した。


「王位が手に入っても、国が滅びちまったら意味がねぇと思うがね。この国でも信心が集められそうだつぅんではるばる遠征してきたが、こりゃもう落ち目だな。この国に必要なのは、もう商売繁盛の白狐なんぞじゃねぇよ。帰るぞ、ロク」

 

 背に何かが当たった感触にポスカ准将が振り返ったとき、そこには既に誰の姿もなく、大杉の枝が緩やかに揺れるのみであった。


◇◇◇


「オード、オド、ほれ、あーんだ、あーん」


 目の前で大きな口をカパッと開ける黒狐――じゃなかった黒い狩衣の三角耳のイケメンに、僕は胡乱な目を向けた。

 ここは、エンヤ国の、新しいさんかく様の庭。さんかく様のお社だ。

 さんかく様の服は、その時期の田んぼの色を写しているらしく、稲刈りが終わった今は焦げ茶や黒の土色に変わっている。


「ちゃんとイケニエとご飯を用意してあるじゃないですか。自分で食べてくださいよ」


「何を言うのだ、オド。コン吉には手ずから食べさせてくれたではないか」


「あれは子狐だと思っていたから……!」


 僕の顔が耳までカーッと赤くなるのが分かる。

 コン吉の中身がさんかく様だったなんて反則だ。コン吉とは、一緒にお風呂に入っていたし、一緒の布団で寝ていたりもしたのに。

 それに、さんかく様が……


「ほれ、言っただろう? 狐の雄は、巣ごもり中の妻たる狐に餌を運ぶ。だから、雌に餌を食べさせてもらうというのは、この上ない贅沢で幸せなんだ。オドが巣ごもりしたら、俺が餌を運んでやるがゆえに、今だけは、な?」


 とか言うから、言うから!

 今まで、自分が女だとか、さんかく様がオスだとか意識してこなかった僕には刺激が強すぎる。さんかく様が、大きな男の人の体で、コン吉みたいに僕にすり寄ったり、頭を撫でて欲しがったり、膝の上に頭を乗せてきたり、ほっぺを舐めてきたりするのに、どうしても慣れない。その度ごとにあわあわする僕を見て、さんかく様が楽しそうに、でも寂しそうにするのを見て、何とか慣れなきゃとは思うんだけど……やっぱり無理ぃ!


「そんなこと言って、このエンヤ国に来てから、さんかく様ずっと寝っ転がってるだけじゃないですか。ご飯くらい自分で食べてくれたって……」


 神たるさんかく様に向かって不敬だとは思うけど、恥ずかしさが先に立って、思わず皮肉を言ってしまった。はっ、と口を押さえるけれど、言ってしまった言葉は元に戻らない。


「人であるオドには分からぬかもしれぬが、俺は今、この国に水を呼ぶために繊細な神力の操作に全神経を傾けているのだ。餌くらい、可愛いオドに食べさせてもらいたいと思うのは当然だろう? そもそも、初代と俺との契約は、『毎日手ずから生き餌を食べさせること』だったんだぞ? 初代が亡くなり、次第に『初代の血脈の契約者が、毎日イケニエを供えること』へと変わっていったが、国を替えた今、初心に戻ってもおかしくはあるまい?」


「うー」


 なんでも、さんかく様の今の契約相手は僕なんだそうだ。

 爺様が亡くなる前に爺様から僕へと契約を書き換えたんだそうだけど、僕自身はあんまり覚えていない。

 僕個人との契約だから、さんかく様がまっくろ森を離れても、国を離れても問題はない……って、さんかく様は言うけれど、言いくるめられているようで何だか怪しい。そう思って、さんかく様は国の守り神でもあったはず、って聞いてみたら、そっちは契約違反があったから破棄してきたんだって。じゃあ僕との契約って何の契約なの?


「オドさんっ、有り難うございました、書いて頂いた契約書のおかげで陛下と本契約にこぎつけました~! これでっ、ついに陛下を嫁に出来ますっ」


 マスを片手に僕が逡巡していたら、バンッと勢いよく戸を開けて、歌い出しそうな上機嫌で目をキラッキラさせたお姉さんが入ってきた。


「ああ、少しでも役に立ったなら良かったです」


「少しだなんてとんでもない! 神と人との婚姻には、篆書の契約書が不可欠ですもんね~。オドさんがいなかったら、陛下との子も望めないところでした! 感謝してもしきれません~!」


 ん? あれ? 何か今、聞き流しちゃいけないことを聞いたような?


「陛下もオドさんとさんかく様がいらしてくれたおかげで、定期的に雨が降るようになったし水も湧いてきたってすっごく感謝してるんですよ!」


 満面の笑顔で両手をガシッとつかまれ、ブンブン振り回されて、さっきチラッと引っかかったことが消えていく。


「いやぁ、こちらこそ。さんかく様の土地ももらえたし、畑や田んぼの世話係も派遣してもらいましたし、まだ水は貴重なのに、魚の池まで確保してもらって。心置きなくさんかく様のイケニエが育てられます」


 さんかく様がまっくろ森を出るときに確保しておいてくれたのは、マスだけじゃなかった。爺様や爺様の爺様、代々のイケニエ係が頑張って改良した、米や麦、トウモロコシ、マスにコイにアユ、鶏まで。種籾は両手のひらに一杯ずつ、魚や鶏は四つがいずつ。連れ出せたイケニエ達は少ないけれど、これからどんどん増やしていける。爺様たちの努力が、無為にならなかったことがとても嬉しい。  


「あれだけのさんかく様の庭を、オドさん一人で管理してたんですって? これからは、人手が必要なときにはどんどん言ってくださいね。私もお手伝いしに来ますから」


「有り難うございます!」


「いやぁ、オドさんは相変わらず素直で可愛いですねぇ。さんかく様のイケニエ係がメロメロなのも頷けます。神業界に契約書が書ける人間がいるって噂を流しましたからね、これからは依頼に来る神達が増えて忙しくなると思いますよ。神の出入りする土地は、神力の流れが良くなって豊かになる傾向がありますからねぇ。これもオドさんとさんかく様のおかげ」


「僕が役に立つことがあって嬉しいです」


 まっくろ森を出たら、僕に出来るコトなんて何もないと思っていた。それなのに、僕も知らなかった僕の価値を見つけてくれたお姉さんにはとても感謝している。

 ニコニコ笑うと、お姉さんも嬉しそうにニコニコ笑ってくれた。


「……で、オドさんはこんなに可愛いのに、さんかく様は何をふてくされているんです?」


 見ないようにしていたけれど、さんかく様は、僕が『あーん』を拒んで以来、むすっとした顔をしている。


「俺は、オドに手ずから餌を食べさせて欲しいのに、オドは嫌だと言うのだ」


「あー」


 お姉さんは僕とさんかく様を見比べ、何やら納得顔で頷いた。

 それから、さんかく様の三角耳に口を寄せて、何やらぼそぼそと言ってる。


「ですから……じゃなくて、照れてる……なので……になったら……」


「……そんなことでいいのか?」


 今度はさんかく様が、不信そうにお姉さんと僕を見比べた。

 そして、ポンッという音がすると。


「うわぁ、コン吉、コン吉だ!」


 そこにいたのは、まっくろ森で見た以来、つまり一ヶ月ぶりのコン吉だった。

 僕は思わず懐かしくなって、ガバッとコン吉に抱きつき真っ黒いお腹に頬ずりする。

 それからハッと気付いた。


「コン吉は――さんかく様……」


 けれどそんな僕の手のひらに、コン吉がいつものようにグイグイと頭を擦り付ける。

 その上で、ご飯のお膳の前にフッサフサのしっぽを振りながらトテテーと駆け寄って、お膳の上に右前足を『てしっ』と乗せた。その上で、いかにも『食べさせて』と言うように、可愛い顔で大きな口を『あーん』と開いた。


「もー、コン吉ってば可愛いなぁ~」


 長年の習性で、コン吉の口にせっせとお肉を放り込んで、ご飯は手のひらに乗せ、そこから美味しそうに食べるコン吉を目を細めて見守る――……ハッ。


「コン吉は……」


 食べ終わったコン吉が、口の周りをペロリと舐めると、僕の口の周りもペロペロと舐める。

 それから、トントンと僕の分の食事が載ったお膳を前足で差した。


「あ、そうだね。早く食べて、さんかく様の田んぼの見回りに行かなきゃ」


 長年繰り返した、あまりにいつも通りなコン吉の行動に、僕も思わずいつも通りに応える。

 膝の上に乗ったコン吉の背中を撫でながら、お菜や漬物をつまんで、残りは一気に味噌汁をかけてご飯を掻き込む。


「お待たせ、コン吉! 今日はまず、鶏が卵を産んだか見に行こう! ここの王さまから、羊も分けてもらったから、冬に備えて干し草も作っておかなきゃね! さんかく様は、羊も気に入ってくれるかなぁ。やることがいっぱいだよ、コン吉!」


 弾むように駆け出せば、コン吉も踊るようにはしゃいで付いてくる。

 いつの間にか僕を追い越して、『早く』とでも言いたげにこちらを振り返るコン吉を、今度は僕が追いかけて。


「鶏もまたいっぱい増えるといいなぁ。連れてきたマスやアユも病気にならないように気をつけなきゃね。でも、きっと大丈夫だよね、コン吉。さんかく様の御利益てきめん、イケニエたちは元気に育つに違いないんだから!」


 今日も僕は、さんかく様の世界一のイケニエ係だ。




◇◇◇

お姉さん「ですから、オドさんは嫌がってるんじゃなくて、可愛がってた子狐が実は信仰していたさんかく様だったと知って照れてるんですよ。人型でグイグイ迫るのは逆効果だと思われるので、最初はコン吉の姿に戻って、少しずつ狐姿を成長させていって、大人の狐の姿に慣れさせてから人型へと徐々に変わっていったら、オドさんも受け入れやすいんじゃないですかね? 口説くのはその後です、後! 何年生きてるんですか、まったく。待てないじゃありませんよ、今さら一年や二年、誤差の範囲内でしょう?」

 ダメ元でやってみたら、オドに効果てきめんだったので、戻れなくなってしまったさんかく様でした。 



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連載「聖女の恵み?いいえそれは。~オブシディアン・ライムールと神の心臓」もよろしくお願いします!

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