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喪失と挫折

 龍司は23歳になった。

 北海道に戻り、地元の地域で中学校の体育教員として社会人生活をスタートさせた。教員採用試験には合格していなかったので、臨時採用の枠となった。

 しかし龍司はこの時点ですでに、この先も教員として生きていく気持ちはほとんど無くなっていた。大学時代、共に4年間過ごしたトミちゃんと西田邸の影響が大きく、トミちゃんは観光会社の跡取り、西田邸は整骨院の開業に向けて修行していたから、当然のように龍司もそこに同化して独立願望が芽生えていた。

 教員時代は陸上部の顧問として生徒に指導し、その時間は本当に楽しいものではあったが、やはり龍司の意識は「起業」に向いていた。2年間、教員としての勤務を全うし、龍司は退職。起業するために札幌へ転居することを決める。


 広美との付き合いも続いていた。付き合いが始まって以来4年半、ずっと遠距離恋愛で待たせてしまっていたので、札幌での生活は最初から広美と同棲することにしていた。長い間、離ればなれだった2人にとって、毎日一緒に居ることが出来る生活は、幸せだった。広美はアパレル会社に勤務し、龍司はアルバイトで生計を立てながら独立起業に向けて勉強し、日々忙しく動き回っていた。

 

 そんな日々が1年程経過し、龍司は26歳となっていた。このあたりから、広美との関係に陰りが見え始めていた。理由は、色々あった。龍司はコンサルティング業に方向性を決めていた。それが思うように前に進まず、相変わらずアルバイトに収入を頼る生活だったが、かなり精神的に疲れていた。広美は平凡を好む性格だったから龍司にはそのまま教員を続けて欲しかった、というのが本音だったので、独立起業に向かう龍司に戸惑いを感じていた。全く喧嘩もせず、仲もいい。しかし、それらの要因が重なって少しずつすれ違っていく2人。

 

 決定打が特に無いまま、何となく、龍司と広美は離れることになった。何となく付き合いだし、6年後、何となく別れた龍司と広美。

 広美はいつも龍司の味方をしてくれた。龍司のことを全く否定せず、いつも優しかった。しかし遠距離恋愛の間には見えなかった、価値観や方向性の違い。人生が嚙み合わなければ、仲がよくても一緒にいることが出来なくなる、それを身をもって学んだ龍司。若すぎて、自分のしたいことだけを主張し、広美の話や価値観に意識を向けることが出来ていなかったことを悔やんだ。しかし、全てはもう遅かった。

 

 取り返しのつかないことが人生にはある。またひとつ大きな学びを得た龍司だったが、余りにも痛すぎる代償を伴うものとなってしまった。



 大きな喪失と挫折。


 出口の見えない暗くて深い鬱なトンネルに、龍司は閉じ込められていた。

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