第六話 今世の名前と周辺の探索
レベルを上げて進化して翼を再生させる。行動方針は定まったし、周辺の探索……の、前に。
名前、考えよう。オレの、今世の名前。
何が良いかな?前世の有名な竜から名前をとるか?それとも自分で考えるか?んー?うーん……
…………エレフセリア。ギリシャ語で自由という意味の女性名詞。
決めた。オレの名前は、エレフセリアだ。
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名前 エレフセリア
一度決めた名前は変更出来ません。
よろしいですか?
YES/NO
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もちろん、YESで。
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名前 エレフセリア
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よし。周辺探索行こう!
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意気揚々と探索に来たはいいけど……視界に入るのは木ばっか。森だから当たり前だけど。
この森、木は一本一本がすごい大きいし、低木も沢山ある。体長が尻尾込みで目算7~8メートルぐらいのオレでも鬱蒼としているって感じるんだし、相当だろう。
この沢山ある低木が厄介なんだよな……
「キャキャーー!!」
『ハァ、またか……』
低木に隠れられる小型の猿の魔獣種が奇襲してくる。これで低木からの奇襲は13回目だ……樹上からを含めると32回目…………
「ギャギャ~ーー!!?」
『しかもたいして旨くないし量も無い…………鬱陶しいなぁ』
この猿は魔獣種だから、魔石を体内に持っている。とはいえサイズが違い過ぎるからか、オレには影響を感じない。食える量も少ない。正直に言っておやつにもならない。効率が悪すぎるし、オレのエネルギー消費が上回る。
まぁオレ以外のステータスを見る方法の実験が出来たし、魔法の使い方も何となく予想できた。実験台になってくれたことは感謝しよう。
レベルは……流石に猿数十匹では上がんないか?
もう少し先へ進んでみよう。
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しばらく進んでから一気に視界に写る景色が変わった。別に森を抜けたとかじゃない。視界に入る木々の種類が変わった。
『ふむ、これは……【分析】』
心臓から全身を巡る魔力の流れ、その一部を眼に集めて対象を調べるイメージを持って魔力を放射する。これで対象を調べる魔法、【分析】が使える。
詳しい理論も在るのかも知れないが、オレは殆ど感覚に頼ってるから詳しいことはわからない。
とにかくオレは魔法が使える様になった。それは確かだ。
それはさておき、この木は何だろ?リンゴっぽい実をつけてるけど………色が、何か、ヤバい。緑色のリンゴに紫色のペンキぶっかけたみたいな色してる……
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アウムドの木
魔境に生育する果樹。
魔力を含む果物を実らせる。
アウムドの実
アウムドの木に実る果物。
果肉には甘い蜜と多量の魔力を含む。
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あ、これ美味しいやつだ。いただきます!
シャグ…シャグシャグ……ムシャムシャ…………ゴクン……
…………甘い……すごく、甘いです……はい……甘過ぎってぐらい、甘い。なんだこれ?あ、でも摂取出来たエネルギーは猿よりもいいね。飢えそうだったらこれ食べるのもアリかも。もう一個食べようっと。
ムシャムシャモグモグうまうま……ん?うーわ!…………この木、そうやって栄養得てるんだ。エグいな、アウムドの木。
食べながらキョロキョロ周りを見てて、チラッと見えたのは、猿の死体。近くには齧られた跡のあるアウムドの実が転がってる。
あくまでも予想だが、アウムドの実に含まれる多量の魔力、これを許容出来ない生物は魔力過多で死んでしまうのだろう。で、アウムドの木はその生物の死骸から栄養を得られる、と、そういう仕組みだろう。一種の食肉植物、なのかな?
『【分析】』
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名前 NO NAME
種族 森猿種・魔獣種
《状態》
死亡:魔力過多
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『ふーん?』
死体で表示される情報はこれだけかな?生前のステータス5項目は消えるのか。称号は……持ってなかったから表示されないのか、持ってたけど死亡したから表示されないのか、どっちかな?まぁ、死人に口無し、後者だと思うけど。
あと、アウムドの木の仮説、合ってるっぽい?
さてと、アウムドの木を嫌がってるのか、この辺には魔獣は殆ど居ないみたいだし、アウムドの木の森、此処を拠点にしよう。
オレはアウムドの実を食えるしね。これで非常食に困らない。
さっきの森と比べてアウムドの森は空が見えやすいな。うん、暗くなってきたし、今日はもう休もう。
オレの眼は竜だからか、暗くてもよく見えるが、夜の森は迷いやすいって聞くし、今夜は大人しくしよう。
それに、気絶したのを除けば初めての睡眠だ。ゆっくり休もう。
それでは、おやすみなさい。