第十六話 人との交流
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『気分はどう?』
…………まだ、無理……
『そっかー、なら暫く私が表に出るよ。エレフセリアは休んでいなよ。』
………う~、やらかさないでね~…………心配……
『あははっ、エレフセリアより私の方が強いから心配する必要ないよ。』
……ムカつく……
『エレフセリアは無垢だけど、私は違うからね。』
……頼むから面倒事起こさないでね………
『あはっ、善処しまーす。』
……守る気無いでしょその返し……
□□□□
傷を癒すための深い眠りからゆっくりと目覚める。瞼は開かず、聴覚と嗅覚で周囲を確認する。
あ、すぐ横に人間がいる。
「■■■■■■■■■■」
しかも変態だ。取り敢えずぶん殴ろう。
「■■■■■■■■」
「■■■■■■■■■■■■■■」
「■■■■■■■■■■■■■■」
「■■■■■■■■■■」
人間、数は四人、男が三、女が一、若くはない、平均年齢は三十代くらいかな。
そこそこの腕の奴が一人いるね、それ以外は並み。
私がいるのは……幌馬車か、人が十人は乗れそう、木箱とか樽とか色々積んであるから実際には三~四人が限度だろうけど。
さっきの変態男は入り口から吹っ飛んだみたい。幌を突き破らなくて良かったね。
んー……布、これ包帯か、治療の後がある。ならこの人間達は安全か。それといい加減馬車を出ようか。
「■■■■■■■■■■■■■■……■……」
ん?黙っちゃった……どうしたんだろ?……まぁいいか。
それよりも、人化した身体を見てみようっと!いやーこれでやっと確認できる!私は前世からこういう人外系のやつが好きだったからね~♪
「"水鏡よ"」
「■■■■■■■■」
「■■■■■■■」
ふむふむふむ…………だいぶ、ドラゴンっぽいね……
瞳は青紫色、魔力のせいかな、宝石みたいにキラキラしてる。瞳孔は縦に長いねぇ、ドラゴンっぽい。
角は……なんだこれ?角は二対、一対は前向きに生えているけど……ほんとなんだこれ?角というより装身具みたいな感じになってる。もう一対は獣耳と一体化してる、こっちは割りと普通の角だね。角の色は黒、鱗と同じ色か。
後さっき変態を殴るのに使った翼腕。翼腕は肩甲骨の辺りから生えてる。これ骨格とかどうなってるんだろう?試しに翼を広げてみる。うん、人化しても風魔法で補助しないと安定して飛べなそう。くそぅ。
翼腕は結構可動域が広かったから、背中で折り畳んで肩を掴む。これで多少の違和感はあるだろうけど、遠目では肩当て付きのマントみたいに見えるはず。
胴体は……包帯が巻かれてて見えない所も多いけど、鱗に覆われている所が多いね。
腕は人の腕の形なだけで殆ど竜だね。黒い鱗と白い獣毛に覆われていて、なんというか獣っぽさと竜っぽさが同居してる感じ。足も腕と同じだね、獣っぽいし竜っぽい。
尻尾は、って尻尾長くないっ!?えぇ……身長と同じか少し長いくらいあるよ……人化してこれでしょ、竜の時どうなるん?
尻尾の見た目は、根本の方は黒鱗に覆われていて、先端にいくほど細くなって白い獣毛が多くなってる。
顔は……うーん、転生したからか美醜が分かんない。整ってはいると思うけど。
さて、最後は……
("ステータス")
ーーーーーー
名前 NO NAME (エレフセリア)
種族 中級竜種・黒鱗種・魔獣種・純竜種・白狼種・異竜種
レベル 6/50
剛力 B+
耐久 E-
持久 C+
敏捷 B++
魔力 F--(A+)
《称号》
転生者
純竜
厄災
変異種
常世を知る者
《状態》
損傷:心臓
ーーーーーー
翼の次は心臓かぁ、魔力ステータスが壊滅的なんですがどうしてくれんねんこれ。
進化以外だと魔力しか長所無いのに…………
まぁ、何とかならなくは無いけど。
例えると、心臓は発電機みたいな物で、魔力が電気みたいなものだ。本来の竜の姿だと消費に対して生産量が少なくなってしまうけど、人化した事で身体が小さくなり魔力の消費が減った。
今まではMPが最大1000あって、身体の維持に50消費、回復するMPが100だった。
今は最大MPが1000で回復するMPが10、身体の維持に5消費する、みたいな感じだ。実際には進化で魔力の最大保持量も増えてるけど。
心臓の修復が終わるまでは、人化して魔力を少しづつ溜めて、限られた時間だけ竜化するってかんじになる。
今までの様に魔法を使えなくなるけど、まぁしょうがない。あの人間は強かった、防御が遅れてたらヤバかった。
さてと、称号とか他にも色々試したいことはあるけど………まぁそれはエレフセリアに任せようか。私にはそういうのは性に合わない。こういう頭を使うことは嫌いなんだよなぁ……出来なくは無いけどさ。私は暴れるのが好きなんだよ。
暴れると言えば……あの都市の襲撃は楽しかったなぁ………気分が上がりすぎて、眠るまで思考が単純化してた。頭を使うのは嫌いだけど、普段からあれは流石に無いしね。
結構な時間放っておいちゃったし、そろそろ人間との交流を始めようか。まずは言語の習得からいこう。
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(なんなんだ、この状況………)
冒険者稼業を引退し、貯めた金で馬車を買って、夢だった行商人を始めた男、ジェイドは今…………
「おい、竜人の嬢ちゃん……近いからもう少し離れようぜ、な?」
「■■、竜人、竜、人、■■、おれ、竜、お前、人?」
「お、おう。俺は人だぞ?あと嬢ちゃん、嬢ちゃんはおれじゃなくて私じゃねぇかな……?」
「■、わ、た、し……私?」
「そうだな、合ってる合ってる。ところでよ、近すぎなんだが離れてくれ目のやり場に困る。」
「■■■、ん……?」
「言葉通じてる……?」
竜人の少女の腕みたいな翼にがっしりと捕まった状態で至近距離で言葉の練習をさせられていた。
冒険者を引退して行商人を始めた時に、専属冒険者として護衛してくれている仲間達は、気絶してる一人を連れて少し離れた所からニヤニヤしながら見ているだけで、助けに入ってくれない。
何でこうなった…………ジェイドはこの少女を助けた朝からのことを思い返した。
眼前にいるこの竜人の少女は、日が出る少し前にあった大きな音がした場所に向かった時に、草原狼に血塗れの状態で襲われていた所を見つけた。
その後、草原狼から助け、その後街道脇に停めていた馬車にあるポーションや包帯で治療して、向かっていた都市に居るだろう治癒術師の所まで運ぼうとした。
けど、仲間の中で唯一の女で治療の心得のあるイータが、「この怪我じゃ馬車の振動で傷口が開いちゃう。取り敢えずこの子が目を覚ますまでここに野営しましょ。」といったのでここに野営することにした。そこまでは良かった。そこまでは。
日も落ちて肌寒くなってきたので、暖をとるために火を起こしてスープを作ろうと、アレクを馬車に材料を取りに行かせた。
そしたらアレクが馬車から吹っ飛んで来た。何が起こったんだよ。
どうやら竜人の子が起きていたらしく、女好きなアレクが何かやらかしたんだろう。馬車から出てきた彼女に敵意はなかった。
だが致命的なものが一つあった。それは………服だ。
イータ曰く、上を着せるには翼が邪魔だし、下も……尻尾が邪魔して着せられなかったらしい…………
そのため、彼女は下着代わりに包帯が巻かれているだけだった。
最初は気付かずに話し掛けて真っ正面から見てしまい…………見惚れてしまった。いい年したおっさんが、異種族とはいえ見た目十五~六歳の少女に見惚れるとか…………
そんな風に考えていたら……
「"■■■"」
「うおぉっ!水!?」
「何今の言語!?」
俺たちの知らない言葉だった。竜人の言葉だろうか?よく分からんが、魔術を使ったらしい。何でかは分からないが…………
その後は、暫く水面に写った姿を見ながら何かを確認していた。
そして彼女は確認が終わったのか、何やら頷きながら水を地面に落とした。
そしておれが彼女の腕みたいな翼に捕まってそっから強制的にお話しに突入。現在に至る。
「何でどうしてこうなったんだよ…………」
「ん?…何で?……困る?……」
ジェイドが思わず口にした不満に、竜人の少女がしょんぼりとする。仲間達も批難する様にこちらを見ている。
「はぁ、もうしょうがねぇ……おい、イータ!ドズル!言葉教えんの手伝ってくれ!」
「ふふふっ、やっと言った。最初からそう言えばいいのに。」
「俺は見張りをしているからな。あと気絶してるバカを叩き起こしとけ。」
やっと助けを求めた頑固者のジェイドの元に、イータが笑いながら来て、ドズルが言葉を教えている間の周囲の見張りをかってでた。
「何から教えるよ?」
「よく使うやつからで良いんじゃない?」
「よく使うやつなぁ……ん?」
イータと話し合っていると、今まで絶対に離さんとばかりに掴んできていた翼が離れ、竜人の少女の背中に折り畳まれた。
そして竜人の少女がこちらに向かって言う。
「こ、と、ば…言葉、教え、て?」
「おぉ、それで合ってるぞ。すごいなお前。」
「言葉の習得、意外と速そうだねぇこれは。」
温かいスープを飲みながら、イータと二人で竜人の少女に言葉を教える。
二人の人と一匹の竜を、夜空に輝く月と星達が優しく照らしていた。




