8-18 ゲームクリア
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【まさか……まさかこの私が野望の成就を目前として力尽きるとは……な】
光りを全て閉じ込めてしまうような黒の外壁に覆われた城の玉座にて魔の王が力尽きようとしていた。
【いいだろう……認めてやる。貴様らが勝者だ。仮初の平穏を、謳歌するがいい】
一本角の兜を被ったような頭部を持つ異形の彼は自身を討ち取った勇者たちをたたえるとその身の一片すらこの世界に残さず消えさっていった。
後に残されたのはアークたち勇者パーティと盛大なファンファーレだった。
「……終わったな」
「魔王を倒したのだ~!」
「おお、エンドロールが流れ始めたでござる」
魔王城の玉座の床からは白い立体文字が下から上へと一定の速度で流れていった。記されているはのは恐らく人名であるといことと主題歌がどこからともなく流れ始めていることからゲームのクリアを祝うエンドロールの演出であると判断することができた。
勇者たちは流れる文字列を追うのもそこそこに恐らく最後になるであろう会話に移った。
「これでようやくゲームクリアじゃな!ここまで長かったのう」
「しかしここまで道のり。決して悪くはなかったぞ」
「楽しかったでいんだよこういうのはよ!お、なんか出て来たな」
見ればクソデカエンドロールは終わりは告げ。彼女らの前にはゲームの終わりを告げる表示枠が現れていた。
【あなた方の手によって魔王は打ち滅ぼされこの大地には再び平穏が取り戻されました。ゲームクリアおめでとうございます】
称賛の言葉もそこそこに文字列は勇者たちが求めていたものを記す。
【それではゲームをクリアされた皆様方を元の世界に帰還させます】
「お、やっぱゲームクリアが条件だったか」
「これで帰れるのじゃな。これまで楽しかったぞ」
喜色を露わに皆が浮足立つなか表示枠の中で変化が生じる。通常のように文字が切り替わるのではない。上から塗り替えられるように表示される文字が変化していく。新たに現れた文字列はこうだ。
【ゲームクリアおめでとうございます!それではゼルデンリンク二周目の世界をお楽しみくださいませ】
「「は?」」
一同の現状が理解できないという気の抜けた声もそこそこに世界が一瞬にして切り替わるように光で包まれていく。彼女らが光を前に視界を覆っているうちに何もかもが変わっていた。
気付けばアークは一人で街中に立っていた。突然のことだがこの光景には見覚えはある確かにこの光景はこの世界に取り込まれて初めてみた光景と一致していた。
「は?」