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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第八話「0と1を超えて」
97/134

8-15 音ゲーで料理対決

アークとメア組が選んだのはステーキだ。正直なんの肉だか今一つわからない生肉を調味料と共に大量投入してミュージックスタート。ミニゲームが始まった。


「ん、お?さっきと譜面っていうか……ゲーム自体がちがくね!?」


「何してるのだアーク!さっさとハンマーでぶったたくのだ~!!」


 アークたちの眼前には縛られた巨大な肉塊と流れる譜面が存在しており。その両手にはいつのまにか小型の金づちが握られていた。明らかに先ほどと雰囲気が違う様相に戸惑うアークだったがメアの叱責にすぐに我に返り分析する。

 おそらく流れるベシというアイコンが弱打、グチョオが強打。アイコンの色によって叩く色が分けられているのだろう。そこまでわかれば十分だ。


「よっしメア。アタシらが一番うめーメシを作るぞ。たけー部位はアタシが叩くオメーは下の部位だ」


「任されたのだ。メアのハンマー捌き見せてやるのだ」


 がっつりとしたメインディッシュを選択したアークたちとは異なりアップルパイというデザートを選択したラムルディとランカのペアには秘策があった。ラムルディの能力フライングフォックスである。果実によって様々な能力を引き出すことのできるこの能力の内の一つにリズム感をよくしダンスを上手くするといった効能をもつものが存在する。それがパパイヤ。二人はパパイヤを含んだラムルディ製のミックスジュースを飲むことで抜群のリズム感を手にしていた。ここまでやって負けるはずがない。そんな心持ちで挑んだが甘かった。


「何でござるこの鍵盤?」


 彼女らの手元にはホログラムでできたグランドピアノのような黒白の鍵盤が現れていた。戸惑っていても曲は止まってはくれない明るいピアノミュージックは始まっている。


「ぬうううううう!?ピアノはピアノアニメが流行るたびにちょっと触れる程度の経験しかないでござるが……ラムルディ殿は吸血鬼ロールで弾けたりするでござるか!?」


 そこそこ上手い指捌きでポイントを稼ぎつつランカはちらりと相方を横目に見る。そこには一指し指でおそるおそる鍵盤を押しているラムルディがいた。


「わからん……!わからんぞ……!ランカ!どれがドで、ミで、ファなんじゃ!?わらわ音符がわからぬ!」


 ラムルディの自宅の古城にはピアノが設置されている。だがそれは吸血鬼とか古城には黒くて大きなピアノが必須じゃよなというインテリア的な理由から設置されたものであり別にラムルディはピアノが弾けるわけではなかった。いかに抜群のリズム感を手に入れようともどこを押せばよいのかがわからなければ意味をなしはしない。

 あたふたと助けを求めるラムルディを見てランカはぼんやりとこう思った。これはダメそうでござるな。と。

 調理に励む三組の中で一際激しい動きをする組が存在していた。リンとシロのカップルである。二人は地面に現れたマットの点滅に合わせてせわしなく足を動かしていた。

 残像すら見える動きの中で息の一つも切らさずにリンは笑っていう。


「これも音ゲーの一種というものか。皆もそれぞれ違うゲームを行っているようだし音ゲーというのは随分種類があるのだな」


「こりゃダンス系だな。激しく動くから運動不足の解消やダイエットにも効果的ってわけよ」


「ふむダンス……なるほど確かに言いえて妙だ。どれ、臨場感を上げるために手でもつなごう」


「繋がなかったら握ってくるんだろ……いいさ、あいつらにはちょうどいいハンデだ」


 自信に満ちた発言とそれを裏付けるようにperfect表示が連続する。

 義手に伝うシロの熱を感じ。リンは子供のように笑った。


「存外に楽しいじゃないかシロ!凄いなゲームセンターとやらにはこういったものがたくさんおいてあるのか?」


「何だよ急に……あるけど」


「現実に帰ったら二人で訪れよう。お前は前から行きたそうだったが私に遠慮していただろう?」


「別に一人の時は行ってるけど……そだな。興味があるんなら……うん、行くか」


 現実世界に帰った後のデートの約束を取り付け二人はダンスを終えた。

 三組それぞれの調理が終わり料理が皆に行きわたっていく。全員で手を合わせおたのしみの実食の時間に移るのであった。

挿絵(By みてみん)

「「いただきま~す」」


 アークたちが作った肉厚のステーキは限りなく現実の和牛に近い味わいで醤油ベースの味付けに舌をピリっと刺激する胡椒の味付けが絶妙の食いがいのある一品に仕上がっていた。


「肉が……軟らかくて食いやすいな。口の中で溶けるみてえだ」


「いっぱい叩いて軟らかくしたのだ~」


 次にみなが手を付けたのはリンたちが用意したホワイトシチュー。雪原のような白さの中に色とりどりの野菜が顔を出している。それぞれの具材の味がよくしみ出した香りとチーズのように尾を引くとろみは否応なしに味の期待を引き上げた。


「非常に濃厚で口の中が多幸感で溢れてくるでござる……!それでいて全くくどくなく具材も食べやすい大きさ……美味にござる!」


「そうだろうそうだろう。なんせ私とシロが腕に……脚によりをかけて作った結晶だからな。ゆっくり味わうといい」


 残すところ最後の一品となったアップルパイは……少し、見栄えが悪かった。形が崩れ焼きすぎて焦げも見えるアップルパイの味は果たして。


「……うん。不味くはねえ……けど。味も薄いし、美味くは……ねえな!これラムルディが普通に作った方が美味かったんじゃね?」


「うぬぬぬぬぬ、すまぬぅ……音符さえ音符さえわかっておればあ」


 そうして三種の料理全てを平らげると審査の時間がやってくる。三組の中でどこが一番美味かったのかがこれで決まる。とはいえ始まる前から肩を落としている組が存在するので実質一騎打ちだ。


「ステーキ」


 手を挙げたのは二人。


「シチュー」


 ここで残りの四人全てが挙手する。この時点で結果は確定した。


「優勝はリン・シロチームでござる~ぱちぱちぱち~」


 まばらな拍手でしばしの間勝者たちを称えると言いたいことがあるというようにアークは立ち上がった。


「くっそ次は勝つからな!?いい気になるんじゃねえぞ。ごちそうさまでした」


「そう吠えるな次と言わず今やってもいいんだぞ。ごちそうさまでした」


「そ、そうじゃあ……このままでは飲食店経営としてのプライドが許せん……始めようぞ2回戦!!」


「ええ……もうお腹いっぱいなのだ。そろそろ行こうなのだ」


 面倒な流れに変わったのを察知してメアは恐る恐る抗議を飛ばすがSHたちの腹はまだ満たされていない。


「「やるぞー!!」」


 こうして食い気と負けん気に突き動かされたSHたちによって料理対決が繰り返され、普通に一品調理するよりも長い時間旅の進行が止まったのは言うまでもない。

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