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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第八話「0と1を超えて」
96/134

8-14 料理でミニゲーム

              ♦

アークたちが王城にて歓待を受けてから四日ほど経った。あの日王城では王による厳かな礼と豪勢な報酬の受け渡し、そしてこの世界の現状についての説明があった。

 戦況についてはシロたちが集めた情報と大差はなく。追加された情報としては敵の首長である魔王が座す魔王城は特殊な結界に囲まれていて侵入が不可能であること。そしてその守りを超えるための力を与える伝説のアイテム、ヒュドラの仮面についてだ。

 ヒュドラの仮面は普段は4つに分割されており3つを各地の大神殿、一つを王家が管理していたという。しかしデスピナ以外の四天王によって3つの神殿が占拠されたことで仮面を完成させることはできなくなってしまったという。


「これがヒュドラの仮面の欠片ねえ」


「あんまり弄って壊さないでほしいでござるよアーク殿。一応王族から譲り受けたものなんでござるから」


 小鳥や虫たちが囁く昼の森をアークたち勇者一行はとりとめない会話を楽しみながら歩ていた。ヒュドラの仮面の欠片をしげしげと眺めていたアークはそれを所持品にしまいこむともっと興味のあることについて切り出す。


「わーってるよ。そういや今日のメシは何なんだ?」


「何?というてもわらわが王都でテイクアウトしておいた食事は全部食べてしもうたぞ。おぬしら食いすぎなんじゃ」


「お前も結構食べてたような気がするが……あ~あたしの所持品も食料関係はからだな」


「む、それは不味くないでござるか?やランカ食料に関してはラムルディ殿の役に立つかと木のみ果物ぐらいしか購入してないでござるよ」


「私は食事はシロに任せている」


「もしかして誰もお弁当もってないのだ?」


 皆は昼食がないという現実に悲しみ一斉に押し黙ってしまった。これまでは一日足らずで目的地にたどり着くことも多く気まぐれで購入していた既製品で十分事足りていたため長い旅程での食事量の計算ができていなかったのだ。ゼルデンリンクにおいて調理されたアイテムがそれほど性能のよくない回復アイテムでしかないことも影響しているだろう。

 地図によれば次の村までは後半日ほど戦闘をこなしながら歩かなくてはならない。SHは総じて大食の傾向がある。彼女らにはつらい一日になりそうだ。

 そんなSHたちを元気づけるためかメアは明るく声をかけてやる。


「大丈夫なのだ!ご飯がなければ作っちゃえばいいのだ!」


「料理……か。確かにエネミーからドロップしたものではあるが生肉や野菜、果物など素材はあるわけじゃしのう。ちと時間はかかるがここでゲーム世界野外調理というのもオツではあるかもしれんの」


「ふふふ、やランカは以前のリバイバルキャンプアニメブームの際に野外飯は一通り習得しているでござるよ。そしてこんな時のために野外調理グッズも出発前に王都で購入済みにござる。お任せあれ」


「あたしもやっかな。サメ野郎とメアはリン連れてどっかいってろ。火が使いづれえ」


「待ってくれシロ!やはり火は危険……もご」


「料理しねえ組はおとなしく他所いっとこうな~」


 調理にとりかかろうとする者とそこから距離をとる者で綺麗に別れようとしたタイミングでメアはインタラプトする。


「料理なんてまどろっこしいこと待ってられないのだ。もっと簡単に早くできるほうほうがあるのだ。みんなステータス画面の下の方をよ~く見るのだ!」


 メアの言葉に従って皆はステータス画面を確認していく。するとメアの言いたかったであろうものが見つかった。


「コマンド……料理。こんなん前なかったよな?」


「おそらくゲームの進行に合わせていつの間にか追加されていたのでござろう。他にも色々とコマンドが増えてるでござるよ」 


ランカの言う通りステータス画面の詳細には射撃、カードゲームなど初期の頃には見つからなかったものが追加されていた。おそらく選択すれば王都で遊んだようなものがいつでも遊べるというものであろうとアークたちは予測した。


「つまりこの料理のコマンドを使用すればすぐに料理が作れてしまうということかな?」


「そうなのだ。メアも一回試してみたのだ。やってみるといいのだ」


「なるほどでは私がやってみよう。普段料理はシロに頼んでいるが興味はあったんだ。どれ」


 メアの言葉を受けてリンは料理のコマンドを選択。すると手持ちの素材で生成可能なメニューが表示されるので一つを選択。選んだのはオムライスだ。


「どのような出来で出てくるのだろうか……む?」


 彼女が怪訝な顔をするのも当然だ。即座に生成されるかと思われた料理は生成されず代わりに彼女の眼前にはマラソンのレーンのような5つのラインが現れたのだ。

 リンだけでなくメアを除いた全員が戸惑っていると朝のラジオ体操のような軽快な音楽と共にラインの奥から手足のついた卵型のアイコンがいいフォームで走ってきた。


「なんだこれは……?敵襲か!?」


 リンは難なく卵たちをよけていくが代わりに卵が通過した瞬間にmissというアイコンが発生するようになっていた。ここまで状況が揃うと状況を理解するものもチラホラと現れ始める。


「これ……もしかしなくても音ゲーじゃねえか!?」


 気づきの声にメアはケラケラと笑うと笑顔で説明を加えてやる。


「そうなのだー!音ゲーなのだ。びっくりしたのだ?ちなみにmissが多いと美味しくなくなっちゃうから頑張って欲しいのだ!」


「音ゲー?シロがたまに遊んでいるものか……つまり、この卵たちは避けてはならんものたちなのだな!?」


「おそらくそうでござろう。同タイミングでやってくるものは足を開いて二つのラインにまたがるようにするのがよかろうな」


「そもそも料理中に音ゲーやらすなよ。どんだけミニゲーム好きなんだゼルデンリンク制作スタッフ」


 アドバイスやもっともなツッコミが入るとリンもルールを理解し驚異的な体捌きで次々と卵に衝突していった。流石は戦闘系SHといったところである。

 3分ほどの音楽が途絶え卵や米、ケチャップなどが襲来しなくなるとラインも消失し元の光景に戻った。そうしてリンの手元には大皿の載せられた黄金色のオムライスが現れていた。


「なるほど……少々予想外の調理方法ではあったが……香りも見た目も悪くないな」


「ひとまず試食といこうじゃねえか。皿配るぞ」


「「はーい」」


 オムライスを切り分けて全員に行きわたらせると食事の時間が始まる。始めてコマンドで調理した料理の感想は。


「うむ、ちと焼きすぎであったり引っかかる部分はあるものの食べる分には問題ないのお」


「悪くねえ。最初にしちゃ上出来だ。調理過程が音ゲーってのがなんだが」


「ありがとう。しかしだ、やはりシロの作る料理には遠く及ばない。私がいかにお前に支えられているかがよくわかるな。いつもありがとうシロ」


「バッ……か!?そんなんいいんだよ……好きで……やってんだからよ……」


「のろけはお腹いっぱいなのだ~」


 オムライスを肴にのろけが発生しているとどこからか幽霊のようにすすり泣く声が聴こえてくる。声のほうに視線を向ければランカがオムライスを口に含みべそをかいていた。


「う……うう……この味、なんだかリクちゃん様が始めてお料理に挑戦された時のことを思い出すでござるよ……懐かしい。リクちゃん様と分かれてからどれほど経ったことか、瞼を閉じればリクちゃん様の姿、耳を澄ませばリクちゃん様の声が聴こえる……おお、リクちゃん様はそこにいたのでござるな」


 突如として立ち上がりふらふらとした足取りで森の奥へと消えていこうとするランカを取り押さえてアークは叫んだ。


「やべえ!こいつリクと引き離され過ぎて禁断症状でてんぞ!?」


「流石にワニのリクの作ったものと似ていると言われると気分が悪いのだが……」


「え、なに?お前アイツと知り合いなの?ってそれよりも手伝え!ランカの割にやたら力強ええ!」


「リクちゃん様~!今いくでござるよぉ~!!」


 幻覚に荒ぶるランカを取り押さえ落ち着かせるとSHたちに一つの感情が芽生える。お腹すいた。

 元々お腹はすいていたのである。それが切り分けられたオムライスという少量の食事が腹に入ることによって余計に空腹感が刺激された。やはりまだまだ食べたい。

 そんな欲求に従ってパーティは新たな料理に挑むことにした。料理コマンドを再確認するとどうやら協力プレイで一つの料理をたくさん作ることもできることが判明した。それならばと三組に分かれてそれぞれどの組が一番おいしい料理を作れるかを競うという流れになった。


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