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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第八話「0と1を超えて」
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8-12 空中戦

「リン!」


「ああ!任せた!」


 そこから少し離れた地点でリンがシロと合流していた。彼女は相方を自らの脚に乗せると自らのもてる全ての力で蹴り放った。砲弾をも超える速度でシロが空を征く。

 高速で敵に追いすがりながら腰の十字キーを操作していた。今必要なのは荷重をかけることではない。これ以上一切先に進ませないように蓋をしてしまうことだ。だからこれを選ぶ。


 GAMECHANGE!FIGHTINGGAME!


 異界の空に広がる熱い声。それを皮切りにデスピナは透明な壁にぶつかったように前に進めなくなる。力で押しても周り込んでも意味はない。文字通り彼女は進行不可能に陥った。対応に惑っている背後から声がかけられる。


「飛んで逃げるボスとか随分ヘイト貯まる奴が実装されてんな。ワールドツアーとは洒落こませねえよ?」


そこにはシロが立っていた。比喩ではない。そこに足場が存在するかのように彼女は空を踏み、デスピナへと歩みよる。

 例外もあるが対戦格闘ゲームは限られた空間で外部からの干渉を断ち一対一で雌雄を決する遊びだ。シロのFIGHTINGGAMEも同様の性質をもつ。


「こっから出たきゃあたしを倒すか99秒待ちな。ま、あたしはガン逃げかますけどな」 そして1ラウンド限りのバトルが始まった。といっても宣言通りフィールド一杯を逃げ回る者と空中から降りてこずに音波攻撃を投下し続ける者同士では真っ当とは言い難いが。互いに攻撃が届かずただ時間だけが過ぎていく。上空に座すカウントが0を迎えた

時。シロの足場は実態を失いその身はゆっくりと降下を始めた。


 結局一打も与えることなく敵との距離が離れていく。だがシロは自分の行為を無為だとは思わない。今の自分には相棒がいる更にはパーティメンバーすらもいるのだ。一人で全てを果たさねばならないソロプレイではない。ならばこれだけ時間稼ぎさえすれば他の仲間が何とかするだろう。その予感は背から来た。


「今度はやランカがキャッチする番でござるか……できればリクちゃん様がよかったでござるな~」


「逃がさないのだ~」


 シロを空中で受けとめたのはランカだった。それも通常の彼女ではない背から鳥類のような巨大な翼を広げている。見れば彼女らを追いこしていったメアもまた翼を携えており小さな掌から雷撃を放っている。


 少し予想を上回られた形になったシロに対してジョッキが差し出される。パステルカラーの液体で満たされたそれを差し出したのはコウモリの翼を展開したラムルディである。であればこの液体の用途は決まっている。


「さ、飲むがよい味は保障するぞ。全く空戦可能戦力を揃えるのに時間がかかってしもうたわ。待たせたの」


 シロが喉を鳴らしてラムルディお手製オレンジとプルーンのミックスジュースを飲み干すとその背からやはり白の翼が現出した。同時に視力も大幅に強化されたように感じる。二丁の銃を呼び出して準備は完了だ。


「リアル戦闘機シミュレーションたぁ面白い趣向じゃねえの。チュートリアルは頼むぜ暁の簒奪者」


「空を飛ぶことに関しては一家言ある。任せておくがよいぞmashiro!」


三羽は先んじて牽制をしかけていたメアに追いつくと編隊を組み密度の高い遠距離攻撃でデスピナを墜としにかかった。

 デスピナ本体は速度はあるもののそれ以外は操縦していた怪虫程の性能はなかった。音波攻撃による反撃を行うがメアたちの多種多様な属性を持つ弾幕に押し返されていく。


「今だ!」


 猛撃に敵が怯んだ今を好機と見たシロは編隊を飛び出すと円を描くようにデスピナの頭上から足元まで周回しながら銃弾を打ち込んでいく。


「やランカもいくでござるよ」


「ビリビリなのだ~!」


 メアとランカはデスピナを囲むようにして魔法やレモンによって得た電撃を浴びせかけた。派手に発せられるカラフルなエフェクトの数々はまるで花火のようだ。だが今はまだ昼間だ。ゆえに吸血鬼が帳を降ろす。


「闇に呑まれよ!これが吸血鬼の大いなる力じゃあ!」


【馬鹿な……これが勇者の力!?魔王様に……報告……を……】


 闇の魔法が空を塗りつぶしデスピナを永遠の暗闇に墜とした。


「やったでござるな!これで王都は守られた。流石に王族としても何の感謝もなしとはいかぬでござろう」


「なかなか決まってたぜ。四天王の一人にとどめを刺すたぁ大戦果じゃねえか」


「かっこよかったのだ~」


 戦闘を終えた皆はラムルディの元に集まり祝勝ムードでラムルディを褒めてやる。ドリンク作り以外では滅多にない賛辞に頬を掻くラムルディだったがその空気を地上からの爆発音が破壊した。

 眼下を見下ろすと市街地では爆発が連続して発生し噴煙をまき散らしていた。仲間の二人は恐らくその真っただ中にいるのだろう。うんざりした様子でランカは呟く。


「本体を倒しても外側だけで動くでござるか……厄介極まりないでござるな……」


「愚痴ってないでさっさと行くぞ。あっちは二人しかいねーんだ!」


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