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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第八話「0と1を超えて」
92/134

8-10 王都デート

♦ 


「ケッ、なーにがカジノはやランカの専門分野でござる~。年中素寒貧はこんなところにこないで外で働いてくるでござる。だ」


「餅は餅屋なのだ~。代わりにメアたちはメアたちで遊べばいいのだ。ここにはそんなところがいっぱいあるのだ。む、あそこにいくのだ~」


「あ、おい!」


 ぶつくさと不平不満を述べるアークを宥めていたメアは何かを見つけるとそちらの方に走り去ってしまった。アークはその後を追うと一つの建物に辿り着く。


「なんだこれ……ShootingHouse?」


「射的屋さんなのだ~。王都の案内板を見た時から連れて行きたかったのだ~」


 パタパタと手足を動かして興奮を伝えるメアの言を受けアークは一息をつき笑う。


「他にあてもねーし遊んでくか!」


 建物の中に入ると陽気なチョビ髭の男がアークたちを迎えた。彼は簡単なルール説明を行うと彼女らを会場に通した。


「好きな武器を選んで次々現れるターゲットを壊していけばいいんだな」


「まずは銃なのだ」 


【500Gネー】


 代金を支払うとゲームが始まった。アークたちとテーブルを隔てた位置に人型のターゲットがどこからともなく出現し移動を始めた。アークはそれを一発一発外すことなく正確に撃ち抜いていく。

 途中からターゲットの動きにフェイントが混じり始めるがそれにも惑わされることなく撃ち切り。


「パーフェクトなのだ~」


「ま、こんなもんだな」


【凄いネ!こんな得点だした人初めてヨ!景品アゲルヨ。またきてネ】


【アークは景品のマッスルの種を入手した】


 アークとメアは景品を受け取るとハイタッチし。アイテムの詳細を確認する。


「なるほど食うと基礎ステータスが上がるタイプのアイテムか。こりゃなかなかいいもんが手に入ったな」


「凄いのだアーク!銃を使ったのは初めてじゃないのだ?」


「ん、まあな。組織抜ける前は武器全般一通りは使えるように訓練を積んでたからな。あの鳥教官のシゴキは今思い出しても寒気がするぜ……」


 アークは痛みを伴う過去を思い出しぶるりと体を震わせると一つのことに思い当たる。「そういやオメエはやんねーのかよ?誘ったのオメエだろ」


「む、それもそうなのだ。メアもやるのだ!見ているのだアーク!」


【500Gネー】


 Gを払うとメアは意気揚々とゲームに挑んでいった。威勢のいい発砲音が鳴り響くが破砕音はそれに続かない。

 「あれ?おかしいのだ。当たるのだ~!」

 結局メアのスコアは半分を下回ってゲームが終了した。メアはアークの元に戻るとがっくりと肩を落とす。 


「む~……アークみたいに上手くいかないのだ……屈辱なのだ」


「オマエね……やり方が悪いんだ。教えてやっからもっかいやんぞ」


【500Gネー】


  追加料金を払いメアはアークと共に再びゲームに挑む。銃を構えるメアの後ろにアークがしゃがみ込みその姿勢を矯正していく。


「初心者なんだから銃はちゃんと両手で持て。握りはこう。肘はちょっと曲げてターゲットを正面に捉えるように体を回せ。落ち着いて、呼吸を忘れるんじゃねえぞ。よし、様になってきたな」


 これで十分と判断したアークがメアの元から離れると丁度新たなゲームの開始を告げる陽気な効果音が鳴る。

 目が回るほどのターゲットが現れては消えるが先ほどとは異なりメアは慌てはしない。しっかり呼吸を意識して標的を見定めトリガーを引く。

 銃声からの気持ちのいい破砕音が連続する。それは少女の成果を示していた。


「やったのだア~ク~!」


「やるじゃねえか!けどまだまだゲームは続くぜ油断すんなよ~!」


「うむ!」


 無論完璧とはいかない。不規則に軌道を変えることもある自由なターゲットたちに時折弾は外れる。だが途中で自棄になりはしない。最後の瞬間まで目一杯撃ち切り。

 終了を告げる甲高い笛の音が響いた。最終スコアはアークの物にはほど遠いが先ほどの結果とは雲泥の差がある。これにはメアも満足げな笑みを見せ。


「見るのだ!アーク。これがメアの実力なのだ!もっともっとやるのだ!」


「お~お~凄い凄い。アタシも武器を変えてやるか」


「負けないのだ~!」


 そうして二人は気の済むまで撃ち放し。景品をたんまりと抱えて店を後にした。


【もうこないでネ~】


「たんまりゲットしたな~。パチンコもこんだけ稼げりゃいいんだが……次どうするよ?」


「もちろんこの王都にはまだまだ遊び場が一杯あるのだ。この勢いで全部回るのだ~!」


 二人の遊びはまだまだ続く。お次は王都の地下に広がる大迷宮。迷宮おじさんに代金を支払い探索の旅へ。


「ハンマーナックルがありゃ探知にしろ壁壊すにしろ楽だったんだけどなあ」


「チートはダメ絶対なのだBANするのだー」


迷宮を抜けたアークたちが次に向ったのは独楽屋。それもただの独楽屋ではない。射出した人間大の独楽、BAEに乗り相手を弾き飛ばし合うBAEフロンティアだった。


「これ……目が回んねえのか?アタシはアークネードで慣れてるけどよぉ」


「遊びには何事も忍耐が必要なのだ~」


 BAEを弾き合いフラフラと街をさまよう二人に向って路地裏から声がかけられた。


【お嬢さんたち、新時代の遊びってやつには興味ないかね?】


「興味あるのだ!な、アーク!」


「勝手に決めんな!あるけど」


 路地裏の男と話すと彼は最近誕生したばかりというカードゲームのルールを話した。なんでもこの王都にはそのゲームの実力者が多く隠れ潜んでおり彼らを倒すことがゲームキングの称号を得ることができるという。


 アークたちは男からデッキを受け取るとまだ見ぬライバルたちへと戦いを挑みにいくのだった。

 その最中、共に走るアークに対しメアが伺うように声をかける。


「アークぅ……」


「ん?」


「楽しいのだ?」


「そりゃそうだろ。そういうオメエはどうなんだ?」


「楽しいのだ!」


「そっか……じゃ、もっと遊び尽くさなきゃな」


「お~!」


 とアークたちが次の遊び場に向かうとしているところだった。それは突如として発生する。

 巨大な建造物が打ち壊されたような音が王都の街に轟いた。見れば南の方の城壁で土煙が昇っておりその周辺から混乱した住民たちの悲鳴がいくつも上がっている。目を凝らしてみると土煙の奥から巨大な影が姿を現した。

 土気色の分厚い外郭。城下のレンガをその重量で圧し砕く節状の脚部。逃げ惑うものたちを決して見逃さない複数に渡るレンズ、機械化された巨大なセミの幼虫ともいうべき兵器が王都へと攻め込んでいた。

              

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