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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第八話「0と1を超えて」
91/134

8-9 陰の会合

 ♦


晴天の広がる市場にてこの場にそぐわぬ……というよりも通常であれば即座に通報されてしかるべき野盗のようないでたちの少女が通りすがりの女性へと声をかけた。


「よ」


【最近はみんな戦争戦争って嫌だねぇ。どこかに明るい話題でもないかしら】


 悪党に怯むことなく芝居がかった仕草で所感を述べた女性は言い終わると何事もなかったように去っていこうとした。そんな彼女を再び野盗が声をかけた。


「おい」


【最近はみんな戦争戦争って嫌だねぇ。どこかに明るい話題でもないかしら】


 判を押したようにそっくりそのまま仕草とセリフで返した女性を見送り野盗は傍らの暗黒騎士へと声をかけた。


「こいつは外れっぽいな次やるぞ」


「も、もう止めるのじゃ……そんな道行く人道行く人に二回も声をかけるなど……不審すぎる。羞恥で死んでしまうぞ」


 暗黒騎士ラムルディは野盗シロに懇願するように言うが相手はすげなく却下する。 


「リアルならやるわけねーけどゲームだぞこれ?何回か話かけたら内容が変わったりフラグたつ奴もいるかもしんねーしホントは全員に5回は声かけてーとこなんだよ。ほらお前も声かけろ」


「接客ならともかくアウェイで見知らぬ人に声をかけるのはハードル高いんじゃ~」

挿絵(By みてみん)

 およよと嘆きつつも声掛けを続けるラムルディとシロ、それによって今まで不明瞭だった世界の情勢が少しずつ理解出来た。

 曰く、この世界には数年前に魔王と名乗る存在が突然現れて侵攻を開始したと。それに対抗して王都は兵を送っているが上手くいっていないのだという。

 曰く、魔王の軍勢の中には一際強大な戦闘能力を持つ【四天王】と呼ばれる存在がおりそれぞれ特殊な任についているという。


「まとめると今のところこんなもんか。四天王ねえ。ゲームらしくなってきたじゃねえか。食べたらすぐ情報収集再開するぞ」


 シロは王都の食事処で向き合ってランチを食しながらラムルディを急かすが騎士風の吸血鬼はテーブルに顔をうずめ唸っている。


「ま、待つのじゃ……少し、僅かでいい。冷却期間をおかぬか?吸血種は連続で人と関わるには冷却期間が必要なのじゃ」


「わからんでもないけどな、あたしも人付き合いは嫌いだしさ。つーかお前何で吸血鬼名乗ってんの?血吸わねーだろお前」


「うぬぬぬぬどいつもこいつも人の触れてはならん部分にずけずけと……考えてもみよ。SHじゃぞ?人知を超越した存在じゃぞ?そしてコウモリ!……なるしかないじゃろ吸血鬼に!」


 身を乗り出していきり立つラムルディをシロは冷ややかな目でみつつ所感を述べる。


「あー……なるほど。中二病ってやつか」


「ちゃうわい!よいか!吸血鬼とは換歴以前から続く空想種であり古くは─」


「いい!いいよ!オタクの話はなげーんだ。自分事だから知ってる」


 荒ぶるラムルディを片手で制するとシロは顎に手を当て訝し気に彼女を見る。


「しかし吸血鬼……吸血鬼なあ。何かあたしお前以外に組織で吸血鬼って言われてる奴見たことある気がするんだけどなあ」


「な、なんじゃと!?わた……わらわを差し置いて吸血鬼を名乗るとはどこの馬の骨じゃ!?教えよ!教えよ!」


「あーあー知らねーよー。何かパーカー着た色白の奴だった気がすっけどそれ以上は知らん自分で調べろ」


「ぬぐ~!!」


 頭を抱え心底忌まわし気に歯噛みするラムルディだったが途中で何かを思いだしたようにじ~っとシロの顔を凝視する。すると視線に耐えかねたシロは頬を染め顔を逸らした。


「……なんだよ」


「いや、見たことがあると言えばお主もこの世界に来る前どこかで見た覚えがある気がするなと。カルヴァリー……とは違う場所だったと思うのじゃがぁ」


 歯に物が詰まったようなラムルディの物言いにシロは大したこともなさげにあっさりといった。


「多分アレだな。配信だろゲームの。RTAでそこそこ有名だからあたしは」


「RTA走者!?……いや、そうか……確かにその顔は見たぞ。去年のRTA大会でチャーハンと一緒にゲーム機を炒めることによって世界記録を大幅に縮めることに成功したmashiro!mashiroじゃなお主!ファンなんじゃ~サインしてもうていいかの?」


「紙持ってねえだろお前……現実であったらやってやるよそれでいいだろ?」


「うむ!ふふふ、我が広間にもついに有名人のサインが飾られる時が来たか。楽しみじゃのう」 


 ラムルディのミーハーな反応に若干照れくさそうに頬を緩ませたシロは自らの顔を叩き引き締めなおすと席を立ちあがる。


「現実に帰るモチベも上がったろ?そのために情報収集頑張ろうぜ」


「ならばわらわも仕事モードで動くとするかのう……あ、そうじゃ」


「どうした」


「mashiroはどうやってあのイケメンと知りおうたのじゃ?付き合っておるのか?」


「なっ……!」


 画面の向こうの存在に出会ったことで距離感が狂った中二病のあけすけに放った質問にシロは顔を真っ赤にするがすぐに鳴りを潜め代わりに自嘲気味な表情に変わり。試すような、確かめるような言葉が顔を出す。


「そーだよ……お前もやっぱ、不釣り合いって思うかよ。こんな陰気なゲーマーと人気者王子様とじ─」


「お似合いなのじゃ~!美少女RTA走者mashiroにはやはりそれに相応しい美麗なつがいがおらねばのう。眼福眼福」


「……そーかよ……そーか、そうか」


「ぬおおおお何故泣くのじゃ!?わらわなんぞやってしもうたか!?」


 普段交流のない他人の裏表を感じさせない根拠のない肯定こそが心に響くことはたまにある。 

 自分に自信のない皮肉屋の少女はそれをもろに受けた。結局この日の情報収集はこれで終わり。後は愚痴を交えた少女二人のガールズトークが繰り広げられることになった

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