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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第八話「0と1を超えて」
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8-4 vsメカゴブリン戦車

「ぬおおおおおおおでござるぅ!!」

 

挨拶代わりの砲撃を回避したアークたちはそれぞれ武器を構え戦車を睨みつけた。この世界で最初のボス戦へと突入した興奮と緊張感が彼女らの喉を飢えさせる。


「おい!どうするんじゃあこんなバケモン!明らかに最初に遭遇するような相手ではないぞ!?」


「ゼルデンリンクの開発元は死にゲー量産してるでござるからなぁ。そういうものでござろう」


「ち、チェーンソードでもありゃあ装甲もスパスパっといけるんだろうがなあ。ミニアークもいねえし今はこのナマクラ一本だけでどうにかするしかねえ!」


 この世界に入る前、アークはミニアークや位相空間を使うための腕輪を外していた。故にそれらの装備は今もってこれていない。とはいえラムルディも実家の倉庫に入れてある果物にアクセスできていないところを見るに身に着けていても同じ結果に終わっていたようにも思えるが。


「ベイン!」


 気後れするSHたちに先んじてメアが一歩前に出て炎系の魔法を戦車に一発いれた。


「何をやっているのだ!勇者たちが気後れしていてどうするというのだ!?」


「お……おお、いくぞおめぇらぁ!」


「「おお!」」


 メアに負けじと前に出たアークに続いてSHたちも立つ。怪物と怪物の争いが始まった。

 現実でならばいざ知れずこの世界に来たばかりのアークたちのステータスでメカゴブリン戦車の巨体を真正面から受け止めるのは無理がある。彼女らは小回りを活かして戦車から距離をとり直接ぶつかることを避けながら戦っていた。

 彼女らの基本的な陣形はアークがヒット&アウェイで斬撃やSH能力でダメージを与える近接アタッカー、ランカがスキルによってメカゴブリン戦車のヘイトを集めて後衛に攻撃を届かせないように立ち回る。そして守られる後衛はラムルディがブーメランを投げメアが魔法で削る。そんな陣形だ。

 ラムルディのSH能力、乳と糖と果実(フライングフォックス)は非常に多種多様な能力を自他問わず付与できる優秀な能力であるが使用には対応した果物が最低二種類必要だ。現実世界の貯蔵にアクセスできない以上この世界で手に入れたものを利用するしかないが、入手できたのは林檎、バナナ、レモンがそれぞれ一個ずつ。少ない。

 現在のラムルディは能力が拡張されたことにより最大三種を同時に混ぜることが可能だ。とはいえ攻め時にはまだ早い、相手の弱点を見極めねばならないだろう。


「のわ~!?」


 砲火が工場施設ごとアークたちを襲う。当たるようなヘマはしないが徐々に遮蔽物などが少なくなっていく。それは一つの事実を示していた。


「アタシらよりも戦車のほうがよっぽど工場ぶっ壊してんじゃねーか!?何がしたいの!?」


 工場は既に4割程が戦車の砲撃や戦車の無理な突撃などによって破壊されている。アークたちにとって防壁は減っていくものの目的は勝手に達成されようとしているのだ。そのことにランカが分析を発する。


「恐らく人?さえ残っていればいずれ復旧できるということなのでござろう!ランカたちを排除した後は合一を解くなりして人員を戻し修復に取り掛かる。とかく全滅さえ逃れればどうにでもなる。そういう腹積もりにござるよ!」


「なんじゃ結局全滅させねばならんのか……ぬおっ!?……どうじゃアーク!わかったか!?」


 砲声と破砕音に負けぬよう張り上げたラムルディの問いにたったいま敵にアークショックを打ち込んだアークが答える。


「ああ!こいつは電気だ!アークショックを食らわせた途端動きが明らかにおかしくなりやがった。ダメージ表記もデケエ。機械にゃ電気ってやつだな!ラムルディ、おめぇもそういうの持ってたよなぁ!?やるぞ!」


 アークの要請にラムルディは軽くうなずくと所持品から三つのアイテムを取り出す。バナナ、林檎、そしてレモンこの世界で手にいれることが出来た3つの果物それを。


「フライングフォックス」


 Apple・Banana・Lemon 三つの読み取り音声と共にベルトに附属したミキサーが起動。果実を掘削し、圧搾し……電子音。完成の合図だ。


「おいまだか!?」


 蓋を開けミキサーを引き上げ顔の高さまで。腰に手を当て体を反ってぐっ、ぐっ、と飲みこんでいく。味付けは完璧。このおいしさは脳まで直接届く身体が変化を始める。

 ラムルディの髪色は赤とグラデーションの効いた黄色が混ざった極彩色となった。変身完了。そこで終わらない。


「まだなのでござるか~!?!」


 ラムルディは自身の能力に追加で新たな能力を重ねがけする。能力の重ね掛けは片手と片脚でそれぞれ別のゲームを行うようなものだ、能力を通常通り複数回使う以上の消耗が起きる。しかし今必要なことだせめて気を上げるためかっこよく叫ぶ。


「暁の黄昏(スイートパラドックス)!!」


 ラムルディの体がカートリッジ・ライフに接続を果たした直後変化が生じる。おおよそ3色で構成されていたラムルディの髪色が喰われるようにレモン色一色に塗りつぶされていった。


「お主ら人が饗宴の下ごしらえをしておる間に喚きおってからに。おかげで少し零してしもうたではないか……じゃが、これで雷の吸血種誕生じゃ。それでは始めるとするか……のう!」


 柑橘系な彼女が指運を振るうとその軌道上に閃光が走る。行き先はメカゴブリン戦車、到達点で炸裂する。

 雷が隣人に落ちたような轟音と衝撃が部屋中に響き渡る。それはそのままラムルディの雷の威力を物語っていた。直撃を喰らったメカゴブリン戦車は動きを停止しこれまでより一桁多い大きさの数字を計上している。読み通り電気には弱いようだ。

 好機は逃さない。動きを止めた戦車に取り付いたアークごとラムルディは雷を幾度も振るっていく雷閃が装甲を削り、刺し、穿つ。

挿絵(By みてみん)

「それそれそれそれそぉーれそれ!どうしたその程度か?もっと抗ってみせよ。わらわを楽しませて見せよ!」


「おめーアタシもいんの忘れてんだろ!!」


 反撃すらも許さない圧倒的な攻撃性能。これがラムルディが進化で手に入れた新能力「暁の黄昏」の力だった。自身の複数ある属性に対し一つのみを前面に強く押し出すことができるようになるというこの能力は平時は高い効果を期待できないが、フライングフォックスと併用することで劇的な成果を発揮する。

 フライングフォックスは果物が持つ属性の力を最大三種まで同時に自身に付与することができる。ただし個々の能力においては複数種同時という面が足を引っ張ってか出力が低かった。ここで暁の黄昏を使うとどうなるか?一つの属性が他の属性の前に出てそれ以外の効能を得られなくなる代わりにその出てこれない分の出力を押し出した属性に回すことができる。つまり多様性を犠牲に出力を飛躍的に向上させることができるのだ。


「これで終いじゃ」


 指運は上昇を示している。それを誇示するかのようにメカゴブリン戦車の足元は柑橘色に染まり次の瞬間。地から昇る雷が天上を衝き砕いた。

 危険を感じたアークが跳ぶように離れるとメカゴブリン戦車は不規則な電光を全身から幾度も発し煙を上げていく、そんな状態の物に天井から岩が振ってくればどうなるか。答えは簡単だ、瞬く間に内部から焔を上げ景気よく爆散する。

 一つの集落の終わりを告げる爆発を祝砲に変えるようにけたたましいファンファーレが流れレベルアップの効果音が響き渡る。


「ようやく……」


「終わったな」


「の~だ~」


 初めての依頼イベントもといダンジョン攻略&ボス戦完了。


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