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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第七話「殺人鬼トア」
76/134

7-4 ショートカット

 サンの制止を振り切って、アークはトアに指定された廃屋へとやって来ていた。

 屋根や窓ガラスのあちらこちらに穴が空き。壁も剥がれ古ぼけた様相の一軒家は周囲の荒廃した様も含めて殺人鬼の一つでも出て来そうな雰囲気を醸し出している。

 アークは外れかけた廃屋の扉を蹴り開けそのままずんずんと奥に進む。中は電灯の類がついていないことを除けば外から見るほどには荒れておらず異臭なども感じることはなかった。

 しばし進むとアークにとっては見慣れたものが姿を現した。それは地下への階段だ。床の一部を切り取って開かれたその入り口はまるで地獄へと続いているような威圧感を感じさせたが怯むことなくアークは足を踏み入れる。

 暗く長い階段を下りきるとやがて少し明るく開けた空間に出た。その天井には大きな証明が存在しており部屋を十分に照らしていた。地上の建物と比べて明らかに真新しいものであったがこの部屋の異常な点はそんなところにはなかった。

 入り口付近の僅かな空間を除き部屋の至る所に視認性の悪いワイヤーのようなものが縦横無尽に張り巡らされていた。ワイヤーは特殊な加工がされているのかアークが視る角度を変えるたびに姿を露わにしたり視界から消えたりしていた。また、部屋のあちらこちらに何かしらの装置が存在している。


「ま、引っかかったらなんか飛んで来るなり散布されるなりするんだろな。そんで……」

 

アークの視線は張り巡らされた行く手を阻むワイヤーではなくその奥のモノに注がれていた。

 階段。

 この部屋に入る時に使用したモノと同じく更なる地下へと続く階段の入り口が部屋の奥に存在していた。


「トラップを超えてあそこまでたどり着けって話なんだろうなぁ」


 大層めんどくさそう気にいうアークの頭上からノイズのかかった声が聞こえる。


『おいでませアークちゃん。アークちゃんのために用意した特製トラップ、驚いてくれたかな?』


「トア!?テメェ!メアは無事なんだろうな!?」


 声の発生源は天井に設置されたスピーカーらしき物体からのものであった。アークはスピーカーを睨みつけ構えるも声の主はマイペースに話しかける。


「んーここからじゃ何言ってるのかわからないけど~。多分こういうことだよね。ほら声を聴かせてあげて」


 のだ~?という声のあと暫しの沈黙を経てスピーカーは再び声を発する。ただしその声は先ほどのものではない。


「アークぅ。やっと来たのだ。トラップなんか早く踏み潰してメアを助けるのだ!」


 聞こえて来たのはアークがここにやって来た目的、であるメアの元気そうな声であった。アークはホッと胸をなで下ろすと聞こえるはずもないにもかかわらずスピーカーに向って。宣言する。


「ああ、最短最速で助けてやるよ。だから大人しく待ってろ!」


『やる気満々で何よりだよ。フロアは全部で5層だから、頑張ってね』


 天からの声が途絶えるとアークはつかの間瞳を閉ざし。そして見開き叫ぶ。 


「……ミニアーク!」


「アイヨ」


 呼び出しと共にアークの左肩にはミニアークが、そして右腕にはハンマーナックルがそれぞれ現出していた。


「アレヤンノ?」


「たりめーだ。いちいち罠なんかに構ってられねぇだろ!ぶち抜いてやる!」


アークは全身を使ってハンマーナックルを上に振りかぶり溜めを作ると一気に力を解放し撃ち抜く。砕拳が足元に向って放たれる。そしてそれを力強く後押しするものがあった。


「シン・アーク!」


 ハンマーナックルの拳をシンアークの全身ジェット加速により更なる勢いを与える。通常それぞれが必殺の一撃になりうるものが一つに合わさった時、あらゆる障害を砕く破槌となる。

 振り下ろされた一撃は地面に亀裂を走らせ、次の瞬間破砕となり連鎖する。ミサイル爆撃すら防ぎきる障壁を易々と破壊した威力。ただの分厚い床を貫通することなど造作もないことだった。アークは一直線に床をぶち抜き空いた穴を加速の速度そのままに降下し次なるフロアに辿り着く。


「と、降りてすぐ罠起動ってことにゃならなかったな」


「無茶苦茶スルゼクソマスター」


 周囲の安全を確認したアークはミニアークと共に衣服についた砂埃を払い周囲を見渡す。

 このフロアも開けた明るい空間であり先のフロアと似た構成であったが大きな違いがあった。まず部屋中に張り巡らされたワイヤーが存在しなかった。代わりといったように昇り階段と反対側の壁に大扉と一つ甲の字のようにい配置された十の石板が配置されていた。またその付近には0421という血で書かれた数字とその下に四文字の塗りつぶされたものが三行並んでいた。


「降りる階段が見当たらねぇってことはあの扉の向こうってことかぁ?ま、床ぶち抜いていくから関係ねーけど」


 ぺろりと軽く唇周りを舌で舐めるとアークは再びハンマーナックルを上に構え先の一撃を繰り出そうとする。その時だ、天から声がかかる。


「も~!!アークちゃん!なんでズルするの!せっかくアークちゃんのために用意したのに台無しじゃない!一人で来てって言ったのになんか変な子いるし。こっちには人質がいるってこと忘れてない?」


「のわ~!?アーク!何してるのだ!ちゃんとトアねーちゃんのためにズルせず全部のワナに引っかかってくるのだ!ほら、突っ込むのだ~!?」


「メア!?ちょ、ま、待て!」

挿絵(By みてみん)

 アークのショートカットは企画人の機嫌を大層損ねたようで天からはメアの必死の命乞い、もといアークを売る発言が流れて来る。自らの行動が裏目に出たことでアークとミニアークは同じような動作であたふたとしそして揃ってある行動に出る。


「このとーり。深く反省しているのでどうか落ち着いてください」


「コノトーリ」


 土下座である。


「もうショートカットなんて考えねーからよ!頼む頼むよぉ!」


「タノムー!」 


赤べこのようにペコペコと同時に頭を下げる二匹。その様が面白かったのかどうかはわからないが天井からは次第にメアの胡麻すりからトアの笑い声へと代わり。


「ふふふふふっ、ははははははっ。いいよいいよ。私も一人で来てとは言ったけど人じゃない子も駄目とは書いてなかったし。何か可愛いしねその子。許したげる。もう床をぶち抜いたりしないでね。次やったら……わかってるよね?」


「それはもう!」


「アリガタキシアワセー」


 アークたちは許され天を仰ぐ。ひとまず当面の危機は去ったと言っていいだろう。とはいえこれにより真正面から危険な罠に挑まなくてはならなくなったわけだが。


「扉……壊しちゃ駄目だよなぁ。この石板をどうにかすんのかぁ?」


「クソマスター、代ワルゾ」


「あ?なんか思いついたのか?」


 悩むアークは藁にもすがる思いで肩のミニアークに振り返る。そこにいたのは普段と変わらぬミニアーク。だったのだが。


「……困っているようだな。アーク」


「サン!?」


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