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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第四話「英霊転生」
51/134

4-21 閉会

 イベントが終わり撤収作業が進む運営テント。エレインたちが忙しなく駆けずり回るその中で、方舟市市長アトイは悠々と椅子に座りあぐらをかいていた。そんな彼女に後ろから冷淡な声が掛けられる。


「周りがあくせく働いてる中で堂々とサボりとはいい度胸してるな。少しは働いたらどうだ?」


 市長は振り返らず声だけで相手を判別する。


「リト君かぁ。私は市長だよ?彼らにはお金を払ってるんだからいいじゃあないかね。ほら、君も座り給えよ。今日はご苦労だったね。ん?」


 そういうと市長は背後のスーツ姿の女性、リトに隣の席に座るように促す。だがリトは座る気配を見せず言葉を紡ぐ。


「随分機嫌がよさそうだがそんなにいいことがあったのか?」


「昔馴染とはいえ一応私は上司なんだからその勧めにはありがた~く従うのが……ごめんごめん拳構えないで。そうだね。君も見てただろう?アーク君、合格だよ。これからも彼女には期待できそうじゃあないか、ねえ。私はこれから彼女が巻き起こしてくれるであろうあれこれに期待が止まらないわけだ」


 心底楽しそうに語るアトイの言にリトは顔を歪め。


「趣味が悪い。興味ない。俺は帰る。公園にゴミ一つ残したら殺す」


「言いたい放題言うね~。っともう行ったか気が早いんだから」


 アトイが後ろを振り返るとリトの姿はもうなかった。代わりというように頬を赤くした元気な少女ヒカリが駆けて来ており、アトイの前まで来ると頭を下げた。


「今日はありがとうございました。こんな大きなイベントに呼んで貰えて本当に楽しかったです!」


「いやいや、今日は盛り上げてくれてこちらこそありがとうだとも。これからもよろしく頼むよ」


「また呼んでもらえるんですか!」


「ああ、うん。きっとこれから色々あるだろうから……ねえ」


 市長は含みを持ったいたずらっぽい笑顔でそういった。

 夜半、イベントが終わりもう人通りも少なくなった方舟市の公園に一人の少女が佇んでいた。アークだ。彼女は公園の湖の前で「オイッチニ、オイッチニ」と柔軟体操を繰り返すと意を決したように湖に向って飛び込む姿勢を取る。そんな彼女の後ろから唐突に幼い声がかかる。


「剣ドロボーするつもりなのだアーク?」


「ひゃぁ!?メ、メアかよ!?……べ、別にーアタシはちょっとちょうどいい湖があるから泳ぎてーなーって思っただけだし~?」


「嘘がへたっぴなのだ~。ね、ママ~」


「そうね~嘘はいけないわね~」


 そこにいたのはメアとその母親の一人、トウコだった。穏やかな彼女はアークに語り掛ける。



「これから晩御飯の支度をするのだけど良かったらアークさんもどうかしら?」


「マジ!?ただ飯!?サンの奴暫く作らないっていってたから助か……あー、でもちょっと……今日はやることが~」


「剣が欲しいのだ~」


「うるせっ!この!そんなんじゃねえよ!金が欲しいんだよ!?」


「同じなのだ~」


 アークはメアときゃっきゃとじゃれ合っていたがふとトウコが何かに注目していることに気付くそれは自分たちの後ろ、つまり湖の方で。

 振り返ると水面に大量の泡が浮かび。泡沫が割れる音が聞こえる。そして次の瞬間。

 爆発的な勢いで水面が飛び散り中から巨大、としかいいようのない首の長い竜が顔を出した。


「ネッ……!!?」 


「首長竜なのだー!!!」


「あらあら、あんまり寄っていっちゃだめよ」


 目をキラキラと輝かせるメアをよそに首長竜はキョロキョロとあたりを見渡しつつ、スンスンと周囲の臭いを嗅いだ後、欠伸と思われる大きな呼吸をするとやがてのっそりと湖の中へと帰っていった。

 誰もが言葉を失い、沈黙が続く。しかしその静寂を神妙な面持ちのメアが破る。彼女はアークを見ると。

挿絵(By みてみん)

「剣、取りに行くのだ?」


「いや……止めとくわ」


「首長竜、(討ち)取りに行くのだ?」


「止めるっていってるでしょぉ!?もーやだやだご飯食べたーい!!」


 アークがメアの家でアルに怪訝な顔をされながら食事を楽しむのはまた別の話。

SHs大戦第四話「英霊転生」完

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