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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第四話「英霊転生」
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4-17 マーリン封じ

 復活したアルトリウスと共にアークたちは再び行動を開始した。腕時計に映るマーリンの現在地に向ってアイテムを回収しながら移動する。

 道すがら収集できたのはサードステージでアークたちが使っていた設置型スリップ装置バナナトラップ、撃ち込んだ特定の機械の動きを遅くするバナナスタン・ガン、傘状の盾バナナパラソル。


「相変わらずバナナばっかだな。使い回しが激しいっつーか金かかってんだかかかってねーんだかよくわかんねえよこのイベント。でもまあおかげで」


 言葉の途中でアークは振り返る。そこには共闘する仲間たちと、その後ろには


「こいつも使えるんだからな。使い回し様様だ」


 セカンドステージ、サードステージで使用した荷車型の車が停まっていた。


「これに余のDEXカリバー・ドゥスタリオンをかけてやればマーリンの紛い物などどうということではないな」


「エクスカリバー化した荷車に触れて万一マーリンが破損したらどうする。我らにはその代価を払うほどの資金はないんだぞ」


 「やーい怒られてやんのー、庶民感覚のねー王様はこれだからよぉ~」


「不敬が過ぎるぞ貴侯……!」


「喧嘩は後にするでござるよ。来るでござる」


 ケイの制止の通り、眼下の背の高い林が独りでに蠢き立つ。しばしの間掻き分ける音が続いた後、白の影が姿を現す。マーリンである。そして。

 そしてその肩にはスーツを木の葉まみれにした者がいた。つんざめく実況がその者の正体を暴く。


『し、市長ー!?これはどうしたことでしょう!林から出て来たマーリンに乗っかっているのは我らが方舟市市長アトイさんです。何やってんすか市長!?』


 実況の困惑する声に肩上のアトイは高く笑い。


 「いやぁなに。早々に選手の半分が脱落してしまったからねぇ。ここいらでちょいとアプローチを変えてやらないと観客のみなさんも退屈してしまうんじゃないかと思って一計を案じたわけだよ。トウ!」


 バランスの悪い肩上で市長は高らかに飛び上がる。そしてその着地地点にはマーリンの大きく開いた口があり。市長はパックリと呑まれた。


『し、市長ー!?そんな、いくら多額の資金を投じたイベントが企画倒れになりそうだからって我が身を犠牲にしなくても……おかしい人を亡くしました』


『誰がおかしい人だってー?』


『その声は市長!?』


 実況の嘆きを掻き消すようにくぐもった大きな声が響き渡る。音の発信源はマーリン。その腹からだ。


「マーリンは実は人が搭乗することも出来てねぇ~。マニュアル操作が出来て……その状態だと特別な機能が使えるんだ。それをお見せしよう……おかしい人って私のことか……私のことかぁ~!!」


「「まぶしっ!?」」


 宣言と共にマーリンの身体が神秘的な黄金の輝きを放ち、周囲を照らした。その様は地上に現れたもう一つの太陽であり猿の形をしていた。

 全身の毛が静電気で逆立ちその色は白色から黄金へと切り替わり周囲には覇気のようなものが漂う。


『見よ!これがマーリンバージョン二、激オコモードだよ。かっこいいだろ~う?』


 得意げな市長の声を実況の声が遮る。


『見てください皆さん!この機能を実装するのに一体いくらかけたのか!皆さんの血税がこのような機能に使われている!これは怒るところですよ!』


「ふざけんな市長ー!」「次の選挙では覚悟しろよ市長!」


 「ま、待ちたまえヒカリくん。そんなのは実況しなくていいんだがね?あと私財もつぎ込んでるからそんな税金は使ってないとも!ブーイングやめなさい!!ちゃんと実利があるんだ!この状態になるとエネルギーの消費量が五倍になる代わりになんと各出力が1.5倍になる」


「「利率しょっぱ!!」」


 市民たちの怒りに対応する市長を他所にアークたちはこそこそと相談をしている。やがて合意が取れた後、アークがマーリンの元に駆け、何かを拾って来ると、帰って来る。


「誘導装置!取ったどー!」


「「でかした!!」」


 バナナを手に取りはしゃぎ合うアークたちに対してマーリンin市長はクレーム対応を停止し無言になるやがて口を開くと。


「ど、どうやって探知機を盗ったんだい?」


 それに対してアークはあっけらかんと答えてやる。


「変身した時に落としてたぞ」


『えー!?ポーズをとってる最中でもにぎっといてくれないものかい!?』


 どうやら仕様のようだ。変身後あまり動きを見せなかったマーリンは不意にドラミングを開始するとアークたちを睨み付ける。


『ん~?私はアクセルもブレーキも触っていないが~……誘導装置が君らの手にある以上そうなるかぁ。せいぜい頑張って逃げたたまえよ?』



『現職市長が市民を大猿で追い回している~!なんという非道!これは次の市長選挙に影響しそうだ~!』


 実況の言葉通り、非道は展開されていた。アークたち五人が乗る荷車は猿顔の巨大トレーラーに迫られていた。徐々にその距離を詰められていく。


「まだまだ封印地点には距離があるのにこれでは早々に轢き殺されて終わりにござるよぉ~!?」


「重いから速度が出ないのだ。アークは自分の足で走るのだ」


 そう言い放ったメアの蹴りによりアークは「きゃん!!」と車外へと放り出される。


「メアテメー!!」


「ははははは、不敬な言動ばかりとっているからそのようなことになるのだ「アルトリウス、お前も重いぞ。蜂蜜と菓子の食べ過ぎだ、運動してこい」


「不敬!?」


 アルトリウスも排出された。

 二人分軽くなってからはマーリンから徐々に距離を離すことができ。余裕が生まれつつあった。


「これで速度は十分に出たようにござるな。あのーところでやらんかは」


「やらんかは何かあったときの肉盾だから勝手に降りることは許さんのだ」


「さいでござるか」


 追走劇は始まったばかりだ。


 荷車から追い出された二人は荷車とマーリンの中間を仲良く併走し。


「アハハハハハハ!追い出されてやんのやっぱオメーんだ!筋肉の重さと脂肪の重さどっちかね~?」


「貴侯が笑えた義理か……聖剣を手に入れた後の試し振りの相手は決まったようだな……!」


 仲良く罵りあっていた。途中幾度か鉄拳が落ちて来るがジャンプで躱し。荷車に追いつく。


「あとどれぐらいだよ!?」


「もうちょい、もうちょいで見えて来るでござるよホラ!」


 言葉通り幾度の拳と木々をくぐり抜けると開けた場所に出る、すると遠方に巨大な岩宿が見えて来る。


『ハッハハハハハ!無事に辿り着けるかな~?ほーれほーれ!』


 荷車は左右に移動し拳を躱し、時にランカが構えるバナナの盾で衝撃を吸収するなどして進んでいく。時折対応のため速度を緩めることはあったがアークとアルトリウスが立ち止まりカバーしたりメアがスタンガンで動きを緩めることで事なきを得た。そうこうしていると。


「ラストスパートなのだ~!」


 幾多の妨害を越え、一行は岩宿の間近までやってきた。妨害も激しくなるが構わず。


「といやー!なのだ!!」


 メアは威勢のいい掛け声で岩宿の中にバナナ型誘導装置を放り込む。仕事を終えた荷車は岩宿から離れ停車する。


「これで後は中に入るのを待つだけだ」


『む、やるねえ。えーとここから逆転できる手はあったかな。お?』


 誘導装置を目的地に運び込んだことで後はマーリンが自主的に封印されるのを待つだけと思われた、その時だった。マーリンは糸が切れたように突如として動きを停止し、岩宿の眼前で佇むこととなった。あれほど眩い輝きを携えていた毛も元の白色に戻っていた。


「こりゃ一体……」


 あっけに取られるアークたちだがそれよりも一層困惑した声がマーリンの中から聞こえて来る。


『なんだいなんだいどうしたっていうんだい?真っ暗じゃあないかね。まさかもう閉じ込められてしまったというのかね?』


「もしかしてでござるが……消費五倍の出力のモードを使い倒してたせいでエネルギー切れを起こしたのではござらん……か?」


 ランカの提示した仮説に気まずい沈黙が続く。それを打ち破ったのが実況からの声です。


『あ、あんまり意味のない機能でなんとマーリン、行動不能となってしまった~!これでマーリンは自力で岩宿に入れなくなってしまいましたがここからどうするというのでしょうか!?それともこれも全て想定の内かー!?』


『もーちろんそうに決まっているじゃあないか。さあ、君たち。もはや勝ち確のこの状況退くなどあり得ないだろう?なんとかしたまえよ』


「あ、これが使えるかもなのだ!」


 荷車からメアが何かを取り出しアークたちの前に駆けてくる。彼女はマーリンの眼前に立つと取り出したもの、バナナ型スリップトラップを敷き詰めるとアークの顔を見据える。


「これでちょっとは押し込みやすくなるはずなのだ。後は任せるのだ!」


「おう、任せとけ。ちょっくら一仕事だぜアルトリウス」


「ウム。仕事は最後まで果たさねばどうにも座りが悪いからな。いくぞ」


 二人はマーリンの背面側につくとせーので押してやる。すると五メートル代の鋼鉄の塊が動き出す。


「アタシらはSHだぞこんなもんどうってことねえ!なあ、アルトリウスよぉ!」


「無論……だ」


 マーリンは押し上げられ、やがてバナナスリップを踏むと一気に加速。そこからは流れるように岩宿に向って吸い込まれていった。大猿を収めた岩宿は瞬間的に閉じ対象を封印した。


「「やった」のだー!」


 一仕事を終えたアークは飛び跳ねるメアとハイタッチをし、そのままの勢いで隣にいたものに手をかざす。


「あ」


「……フム」


 一瞬戸惑った様子を見せるもののその意を察したアルトリウスは勢いよく掌を重ねてくる。激しい衝撃が伝うが快感を共有できたようでアークは笑い、それにつられアルトリウスもまた笑う。

 

 マーリン封印成功。フィフスステージクリア。

 アルトリウス、アーク、ランカ、ケイ、メア。ファイナルステージ進出決定。

 

 皆が思い思いにフィフスステージの思い出を楽し気に語る中岩宿から悲し気な声が響くが、話し声で誰も気づかない 


『私が悪かったから出しておくれよ~!おーいおーい……』

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