2-6 クレーンゲーム
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人のまばらなゲームセンター区画では電子音がピコピコと鳴り響き、ホログラム映像などが飛び交っていた。
アークたちは立ち並ぶ筐体の合間を吟味しながら進みゆく。
「ホログラム式からインベーダー筐体まで置いてら。錆びてるわりに質はいいなここ」
「あ、メアあれが欲しいのだ!」
ビシっとメアが指さす方に目をやると。
「クレーンゲームですかメアさん。どれが欲し……私!?に、似てる人ー!?なんでこんなところに……!?」
メアがさしたのはアイドル服を着たリクちゃんぬいぐるみだった。メアは早速硬貨を投入。標識にしたがってボタンでクレーンを操作していく。
狙いを澄ましてじっと待ち。目当てのリクぬいぐるみ目掛けて発射する。アームが降下し。獲物を捉えて戻って来る。その成果は……
「うえー……リクの姉御がおっさんになって帰って来たのだ。いらないのだ」
「だからそれ私じゃないですって!」
とって来たのはケツ顎の半裸なオッサンのぬいぐるみだった。メアはさっとアークのポケットにおっさんを押し込むと再び筐体に硬貨を投入する。
「今度こそなのだー!」
おっさんが増えた。
「なぜなのだー!」
嘆くメアを見かねたリクが硬貨を投入し選手交代する。
「大丈夫ですよメアさん。お姉さんがさっと取ってあげますからね」
リクの操作に従ってクレーンが動いていく。
「今です!」
解き放たれたアームは真っすぐに降り。そして。
盛大に空を切った。
「なんですと!?」
そうして三人は何の成果も得られなかった。クレーンが帰っていくのをただ見守った。
「あ、姉御……」
「いえ。大丈夫ですとも。数をこなせばきっと取れます。年上の力を見ててください。十連射!」
十回空を掴んだ。
「なんでですかー!」
わっと筐体に雪崩かかるリクを尻目にアークが次の硬貨を投入する。
「あーもーお前等下手すぎ。こういうのはコツがあんだよ。見てろアタシの神テク」
「ふん。そんなこといってアークもきっとオッサンか空を掴むに決まってるのだ」
そういうメアの予想とは反対にクレーンは正確に目当てのリクぬいぐるみの上で停止。アームが降下するもこちらも的確に目当てを捉え引き上げる。
「ま、まさかほんとに……凄いですよアークさん!」
「はっはっは。まーな。伊達に遊び馴れてるわけじゃねーんだ……」
ここで一つトラブルが起きた。景品の確保に支障をきたすようなものではない。だが一名にとって致命的なトラブルだった。
アームはぬいぐるみを上下逆さに捉えていた。結果何が起きるかというと重力にしたがい。スカート部分がめくれ。
「パンツが!わ、私……に、似た人の……下着が!」
「うお、ちょ、暴れんな途中で落としたらどうすんだ!メア。二人がかりで押さえるぞ」
「ラジャ」
「下着が~!」