10-9 一時の別れ
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「えーっと、つまりミニアークちゃんの推測でいうと。コタツちゃんていう運命的な持ち主に出会ってテンション上がったけど箱の中から出れないから何とかしようと暴れてたらアークちゃんに斬りかかられて思わず逃げた……そいう事?」
「多分ナ。ツマリクソマスターガ悪イ」
「納得いかね~」
「イデッ、イデッ」
アークはミニアークは凹ませる手を止めると、床に手をついてコタツに謝罪した。
「御免コタツちゃん。お家が大変なことになっちゃって……」
「い~よ~こーんなフカフカのベッドが手に入ったんだ~もーん」
即許したコタツは宙に浮く綿雲の上で半分寝たような状態になっていた。それを見たライズは手を合わせ。
「はい。コタツも満足してるんだからこの話はこれで終わり。さ、楽しいお話の続きをしましょ」
「ライズ姉ちゃん流石なのだ~」
「ありがとう。じゃ、次は何話そっか!」
「zzzzzzz」
「寝ちゃダメ~!!」
その後もしばし彼女たちのお茶会は続いた。
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アークとメアは、コタツ宅の玄関で廊下に立つライズとコタツに向き直っていた。
「それじゃあ、メアたちはもう帰るのだ~」
「ライズちゃん、コタツちゃん。今日はありがとう。とっても楽しかった」
「私こそ、よ。また会いましょうね」
「あ~え~てーよーかった~」
一通りの別れの前の挨拶を済ませた後、アークは歯切れと居心地の悪そうな表情で切り出した。
「あの……二人とも……私、まだ二人に言ってない……ことが、あって」
「いいの」
「え?」
言葉を途中で切ったライズは隣のコタツ共にとても優しい笑顔で言った。
「話す決心がついてないなら。それはまだ言わなくていいことよ。そしてそれがどんなことであっても。私たちはアークちゃんを嫌いになったりはしないわ。約束よ」
「あた~りーまえ~」
「ライズちゃん……コタツちゃん……」
「だから決心がついたら。その時教えてちょうだい。ね」
「うん!いつか……絶対、絶対言うから!それまで……待ってて!」
「その時もメアは隣にいてやるのだ。どーんと構えているのだ」
「アークちゃんを~よ~ろーしーくーね~」
「うむ!」
決意を新たに、アークとメアは”トモダチ”の家から帰路へとついた。
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<若干げっそりした女性の声>
今回も……見ごたえは……あるにはあったが……!!
なんっだあの間延びした喋り方わ~!?イライラして仕方なかったよ全く……。しかも内容的にコレ……思い出話じゃないか。僕は新鮮な事件が見たいんだよ~!!
はあはあ……すまない。取り乱してしまったよ。ところで君はあまり疲れてないようだね?三倍速だったから?何それ?
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アークとメアが去ってからもライズはコタツと部屋で一緒に過ごしていた。
「アークちゃんだーけどさ~」
「うん」
「私~たちのーきろーくー見た時~」
「ええ、すっごく。泣いてたわ。嬉しかったのか悲しかったのか……それはわからないけど」
アークは気付いていなかったかもしれないが当時シネマにいた他の者は皆アークの異変に気付いていた。メアですら、戻った後にそれを触れないほど顕著なものであった。
「アークちゃんの言いたくて言えないことがもしもあの事を裏付けることだったとしたら……あの子はどれほどの傷を得てるのかしらね」
「……だーいじょ~ぶ。メアちゃんがーいるも~の。わたーしもーいる~し~。自分だけで抱えこまーなくてーオーケー」
「そうね。ありがとう」
コタツはいつもそうだ。こちらが周囲の折衝に気苦労を得ていれば直ぐに気付き側にいてくれる。そんな彼女だからこそ自分は……
「ところで~」
「うん」
「いんこ~車両~てーなぁーにー?」
「ウッ!?なぜ今それを……!」
そう、彼女は割と鋭い。
「ライ~ズ~。お外で~エッチな~ことーしてる~のー?わた~しにはーしないーのに~」
「え、ええとそれはですねえ。両者合意というか、ね?」
「ふぅ~~~ん~~~」
「ゆ、許して~!!」
数多の風俗を潰してきた女にも勝てない者は、いる。
SHs大戦第9話「SHs大戦-昔日の記録-」これにて完結です。
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さて、ここで放送がTwitter版に追いつきました。以降の放送については次回のSH図鑑と次回予告の際に記載いたします。