表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SHs大戦  作者: トリケラプラス
第九話「ウシワカ館の連続殺人」
120/134

9-17 連続殺人

 SHオランウータンにして犯人、犯人にして家政婦なソウは顔には出さないながらも焦っていた。


(少々まずうございますね。戦闘系SHに観察力が優れる上に別に戦闘不得意でもないSH。非戦闘系の私が相手をするのは無理がございます)


 ソウは颯爽と逃げることにした。蹴り飛ばされたことでエントランスからは遠ざかってしまったので取るべきはこうだ。スカートの端を走る。


「あいつ階段の方に逃げるぞ!」


「バルコニーから出るつもりだね!逃がさないよ~!」   


階段を飛ぶように駆け上がると眼下に三兄妹たちや刑事たちの姿が見える。三兄妹は戸惑いつつも本音で語りあっている。中々にいい感じだ。もうしばらく続けてやれば自然に本心で語り合える仲になるだろう。刑事たちはこちらを追うことはせずに要人や子供の警護に徹するようだ。態度が悪いなりに職務はちゃんとする気なのだろう。個人的にはあの二人が抱えているであろう秘密も暴露してしまいたいがまだ何も掴んでないのであきらめるしかない。口惜しいが人生は切り替えが肝心だ。

 ソウは衣服の隙間から折りたたまれた棒とモップのようなヘッドを取り出すと、合一し、組み上げると一つの長い清掃器具を組み上げた。彼女は階段から右手側に向って超高速で床を磨き上げながら進んでいった。家政婦として卓越した技能を持つソウは普通に走るのと変わらない速度で清掃しながら移動することができる。


「コラー!待ちなさーい!!」


 東館二階に差し掛かったところで敵が登ってきた。無論待たない。掃除を続行しながら廊下を突き進む。


「待てっつってんだ──うぉわっ!どんな掃除の仕方してんだ!?めっちゃめちゃ滑って前に進めねぇ!」


「むむむ、流石ソウおねーさん。とんでもない家事技術だね……!でもどうせ滑るなら……えいさー!」


 後ろ目で見るとポーは綺麗になった床に手を付きSH能力を発動させたようだ。すると瞬きする間もなく廊下が凍りつき、ソウは頭から派手に転んだ。

 彼女の後方ではアークが凍り付いた床から足を離し冷たがっていた。


「ちょ、なんだこりゃ!?冷て~!!」


「ほい、ほいと。これでよし。アークちゃんスケートやったことある~?」


「お~、靴の裏に氷でスケートの刃か。やったことねーけど感覚でできんだろ。いくぞ!」


 天才スケーターが二人、氷を削る音を立てながら迫ってくる。体勢を立て直し逃げようとするが無駄だ。角を曲がってすぐに来た。


「捕まえた」


「失礼いたします」


 捕まったので死んだ。単純な話だ。SHオランウータンのSH能力バールストンギャンビット(先行一殺)は一瞬で過去に存在した、ありとあらゆる状態の死体を状況を再現できる。館で最初に死んだ時のように新鮮ではない死体にもなれるし、ポーに使用した時のように死因を利用して攻撃に転用することもできる。今回は後者だ。雷の滝に打たれ続けて亡くなった死体。密着してる魚類のアークにはよく効くはずだ。効くはずだったのだが。ソウは死体から戻って、未だに平然としがみついてるアークに尋ねた。


「アーク様は何故にへっちゃらぴーなのでございますか?」


「電気耐性がある。あとグロイのちょっと慣れた」


「うッ……ゲェ……!!」


 かなりいい感じのパンチを腹に貰った。一気に中身を戻してしまいそうになったがなんとかこらえると次が来る。その前に死ぬ。今度は焼きたてどころか焼かれてる真っただ中の死体。これでどうだ。


「炎の耐性もある」


容赦のない一撃が顔面に来た。そのまま殴り飛ばされきりもみ回転して着地。どうやら死因攻撃は効果が薄いようだ。グロテスクに振った死体ならば効果もあるかもしれないが向こうにはポーがいる。死体になっている間に受けた攻撃は元に戻れば無効とはいえ、あまり無駄なことをしていると死んでいるうちに氷漬けにされて再生不能にされるかもしれない。それはとっても怖いので避けたいところだ。

 ソウは軽く溜め息をついた後に再び死ぬことにした。ただこれまでとは違う。もう少し逃げ回っていられると思ったが背に腹は変えられない。我が身の為にアレを使って死ぬことにした。


「うッ、また死にやがった!あん?なんだこりゃ。【階段のところまで”巻き戻り”なさい】。巻き戻りってどういう意味だよこれ?階段まで戻れってか?」


 ミイラ死体となったソウの横には血液で出来た文字列が並んでおり。アークはそれを読んだ。そして元の意味を知らず、そして解釈した。成立だ。


「あ、アークちゃんそれは!」


「あん?どしたよ?──ッ。ちょちょちょなんで!?なんでかすっごく元来た方に戻りたくなってきた!?」


 アークは突如として滑ったり転んだりしながら階段の方へと逆走し始めた。これで数秒敵を減らした。

 ソウの持つ第二のSH能力ダイイング・メッセージ(死語)はかつてこの地球上で一定以上人々の間で認知を得ながらも殆ど使われなくなった言語、死語を文中に含んだメッセージを読ませることでその文を読んで解釈した内容を強制的に実行させることが出来る能力だ。文中で使う死語は意味が通っていなければならないし、再使用すれば前回の効果が中断される。そのうえ文を見せた後に死ななければ効果が発揮されないなど制限が非常に多い能力だが、効果の強制力は大したものだ。朝一でガンホー氏に使用した”0833(おやすみ)”による睡眠は三兄妹に”君も素直になれよぉ!!”を使用するまで途切れることはなかった。

 そしてもう一人の敵もソウが残したこのダイイング・メッセージを直視した。が。


「”巻き戻す”。画面を少し前の秒数に戻すことだよね。ビデオテープが由来だって知ってるよ」


 この能力はその言語が死んでいることを担保に能力を発揮している。つまり偶然本来の用途通りに解釈することは通るものの、本来の意味を相手が知っていた場合、言語が死んでいたことにならず効果が発揮されない。

 結果として不発となり。


「氷漬けの刑でーす。さあ、頭を冷やすがよいぞ~!」


「お断りにございますね!!」

 即座に死者から生者へと転身し、力任せに凍結から脱するもの逃げきれない。とはいえ相手がポー一人なら何とかなる。屋敷を傷つけたくなかったのでやりたくなかったが。


「アボンいたします」


 ソウは派手に内部から爆死した。ポーも直ぐに気付いて距離を取り、”凍て鶴”による氷の盾を生成していたが完全には守り切れなかった。爆風と共に壁に叩きつけられ呻いている。これを好機と見てソウは即座に再生を済ませてこの場を去ることにした。

 直線を突き進みバルコニーの扉を一瞬で開き、外へと躍り出る。洗濯物を潜り抜けて島を一望できる場所に辿り着く。手すりを乗り越えて地面へと降りていこうかと画策していた時だ、ソウは濃厚な死の気配を直感し、自ら死ぬことにした。それは幾度も死を経験してきたソウだからこそ感じ取れたものかもしれない。

 断頭台の露と消えた死体へと変じる。すると幽体離脱状態のソウは自らの首元の位置を銀閃が薙いでいったことを知覚する。即座に戻り背後へと振り返った。


「どなたでございますか……?」


一階にいた中にまだSHが紛れ込んでいたのだろうか。メアが隠し事をしているようだったのでもしかすると彼女かもしれない。そう思っていたのだがそこにいたのは。


「殺人鬼だよ。アークちゃんのお礼参りに来たから苦しんでいってね」


「どなたでございますか……?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ