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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第九話「ウシワカ館の連続殺人」
117/134

9-14 取り調べ

 ♦

 一班と二班が共にホールへと降りて合流を果たし、彼女らはそれぞれが集めた情報の交換を行った。メアは最初の内は興味津々で二班の話を聞いていたが最後の方になると若干飽きてしまっていた。

 情報交換が終わると不審者を連れた警察二人が主導になって再度聞き取り調査を行うことになった。警察が最初の人を呼ぼうとした時だ。探偵が飛び跳ねた。


「ジャジャーン!ポーちゃんもじじょうちょうしゅー!に参加するよ!いいよね!」


「いいわけないだろう。分をわきまえたまえよ」


「いや、参加してもらう」


「先輩!?」


 明らかに不服そうな顔を向けるレヴンだったがイヌカイは気にせず続けた。


「どの道すでに捜査に協力してもらってるしな。私の勘ではこの一件、普通の発想では解決できん気がしてやがるし。もう何度か波乱が起きそうだ。この探偵の実力が本物なら面倒なことにならんうちにさっさと解決してもらったほうがいい」


「さっすが先輩~話がわかるね~。うりうり~」 


 悪戯っぽい表情で肘を脇腹に押し当ててくるポーにイヌカイは遠い目をした。


「やはり埋めるか」


「この僕が手伝ってあげますよ先輩」


「やん。こわーい」


 こうして探偵を加えて事情聴取部屋と化したリビングに最初に呼ばれたのは、館の主であるイッコウ。次にオウカ、そしてアマミという順であった。戻ってきた時にアマミはあまり変わりはなかったが兄と姉、特に姉のほうは呼ばれる前より調子が悪そうに見えた。

 アトイが呼ばれた後にオウカは皆に宣言した。


「ワタシ。少しお手洗いに行くわ。もう我慢できないの。兄さん、一人だと不安だからちょっとついてきて」


「あ、ああ。わかった」


 そうして二人は最初の捜査を終えた後かけていた鍵を開けて東館へと消えた。その後十分も経たぬうちに彼らはそろってホールへと戻ってきた。それからしばらくしてアトイが戻り、アークと交代した。

 アトイはメアの元へと来ると飴を渡してくる。


「すまないね。君にはちょっと退屈だろう。鰻薔薇味、退屈しのぎに舐めておいてくれ」


「ぶーっ!!なんてもの……。あ、でも結構おいしいのだ」


「そうだろう。それでなんだが私が呼ばれている間にメア君から見て何か変わったことはあったかな?」


「うーん、あんまり大したことはなかったのだ。せいぜいオウカねーちゃんがイッコウにいちゃんを連れてトイレに行ったぐらいなのだ」


「ふーん……。そう言われると私も長く行っていないし行きたくなってきたな」


「ついてくのだ?」


 護衛としての仕事のしどきかと思ったがアトイは手を振り否定する。


「いや、君にはホールを見張っておいて欲しいからね。ガンホー氏にでも頼むとするさ。あれでかなり腕は立つからねえ」


そういうとアトイはメアの元から離れ天狗を呼びつけると二人は東館に消えていった。

 彼女らも十分未満でホールへと戻って来て互いに歓談を楽しんでいるようだった。


「むー……まだなのだ~?」


 ホールをうろちょろと落ち着きなく歩き回っているとようやくアークが解放されて戻ってきた。明らかに他よりも長く拘束されていた彼女にかけより声をかける。


「アーク大丈夫なのだ?いじめられなかったのだ?」 


「いじめらんねーよ。でもまーあの刑事はことある毎につっかかってきてウゼーことこの上なかったな。あの天狗が多分女だってこと言ってやったらスゲー驚いてたからザマア見ろってんだ」


「ほんとなのだ!?全然わからなかったのだ」


「わかりづれーけど動きかたとかたまに見えるライン的にそうだと思うわ。アタシとライズちゃんぐらいしか気付かないかもしれないけどな」


 得意げに言うアークにメアは少し嬉しくなり続きをせがんだ。


「他には何かなかったのだ?」


「あー、なんか天狗と長女の香っていうの?香水かな。それが一緒っぽいのも言ったんだけどそれは全然驚きやがらなくてつまんなかったな~。ポーは感心してたけど」


 そこまで聞くと面倒な方の刑事に呼ばれてしまう。


「そこの小学生。何をやっているのかね。事態の速やかな解決に時間は無駄にできぬというのにグズグズしているんじゃないよまったく」


「うつわの小さいねーちゃん。今く行くのだー」


「僕ほど器の大きなものもいないのだがね!」


「いや、お前は小さいよ」


メアはようやくの出番にアークの元から駆けだした。その背に見送る声がかかる。


「あんま変なこと言われたら呼べよー」

 

 リビングに行くと警察二人と探偵、そして知らん爺さんが出迎えた。

 メアは着席するとさっそく質問を投げかけられる。イヌカイは知らん爺さんを指し。


「メアさん、一応聞きますがこのおじいさん知ってます?」


「知らんじいさんなのだ」


「でしょうね」


 イヌカイは深いため息をつくと気を取り直したように質問を再開する。


「まず一日の流れですが朝家を出てアークさんと釣りに行こうとしている途中でアトイ市長に声をかけられこの島に来ることになった。間違いありませんね?」


「うむ。まちがいないのだ」


「クルーザーを降りた後に始めて出迎えたのがソウさん。彼女の案内で会議室に行くことになった」


「うむ」


「あ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?いいよね」


 ポーの割り込みにレヴンが噛みつきかけたがイヌカイが押さえてうながした。


「その乗って来たクルーザーってー……本当に三人だけだった?」


「────!?」


 メア的にある意味核心的な問いに思わず息をつめる。言ってしまいたかったが言えば恐ろしいことが待っている気がする。なのでこう答える。


「……三人じゃないのだ。ミニアークがいるから四人なのだ」


「それもそうだねー。じゃあ質問を変えるけど、アークちゃんってストー……熱烈なファンがいたりする?」


「それはいるのだ」


 これは別に口止めされていないから大丈夫……のはず。素直に答えた。そこから先はポーの奇妙な質問はなりを潜めスムーズに質問は進行した。こちらもこんな状況なので今まで黙っていたソウとの会話についても話してやり、やがてアークの弁護をした段にさしかかかった。ここで再びトアに関することを訪ねられるかと思い身構えていたが、その必要はなくなった。事情聴取が取りやめになったからだ。

 きっかけはリビングへと入りこんできたアークだった。


「おい、ちょっと来てくれ」


「なんだい。今は取り調べ中だぞ」


「いいから!次女の部屋から化粧品箱が盗まれたんだ!」


「──!!」


刑事たちは勢いよく立ち上がりホールへと向かっていった。メアやポーもそれに続いていく。ホールを抜けて東館に入るとアマミの部屋の前で人だかりが出来ていた。先に到着した刑事たちがアマミに話を聞いている。


「どういった状況ですか?」


「先生にもしかしたら君の化粧品箱も狙われているかもしれない。手にもっておいたほうがいいかもしれないって言われたから先生とアークさんの三人人でウチの部屋に入ったんだけど。そしたらこの惨状よ」


 覗いてみればアマミの部屋は荒らされていた。床や机に書籍が散逸し、そして先程みた化粧品箱は姿を消していた。


 アマミは部屋の中で肩を落とし拳を震わせていた。


「なんで……今日は先生を初めて迎えるいい日になるはずだったのになんでこんなことに……」


「アマミちゃん……大丈夫、きっとなんとかなるわ」


「ああ、必ず犯人からアレを取り戻そう」


 兄と姉が妹を慰めるているなかで警察たちはアトイにホールでの出来事を聴いていた。


「たしかメア君によるとオウカ君がお手洗いに行きたいと言ってイッコウ君に鍵を開けてもらって一緒に東館に入ったみたいだね。その後事情聴取が終わった私がガンホー氏を連れて東館一階に。もちろんお手洗いだよ。」


その横で探偵はミニアークに何やら画像を見せてもらうと幾度か部屋と見比べた後、シャボン玉を吹かせ始めた。今までより一際多い量を噴き出し切った彼女は深い息を吸ってそして大きく宣言した。


「コテリンー!!ポーちゃん閃いちゃったぞ~!!」


 突如として奇声を発した探偵に嫌味な刑事はあきれ顔でたしなめた。


「君ねえ。お嬢様がたが悲嘆にくれているのがわからないのかい?空気が読めないものに探偵が務まるとは──」


「まあまあ。探偵である彼女が何か閃いたと言っているんだ。その言葉は最後まで耳を傾ける価値があるんじゃないかな」


「はい!実にその通りですね!さあ、続けたまえよ」


トンネルの掘削作業ができそうな手のひら返しを受け探偵は笑みを作る。


「ポーちゃんがわかったのはその動機。今までなんとなくしかわからなかったけど今のでそれがはっきりしたんだよね」


「待てよ、動機?犯人はどうしたんだよ」


 もっともなアークの疑問にも探偵は直ぐに答えてやる。


「もっちろん。名探偵ポーちゃんには抜かりはないのです。とっくにわかってるよ。……さあ、みんなをホールに集めて!ポーちゃんの推理ショー。はーじめーるよ~!」


 天真爛漫自信満々な探偵の指示に皆は息をのみ、そして顔を見合わせてこういった。


「「いや……みんな集まってるけど……」」


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