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SHs大戦  作者: トリケラプラス
第二話「オタクランドサガ」
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2-1 いざとなり街へ

<低めに読み上げる女性の声>

SHアークは改造人間である。

彼女を手術したのは欠けた円環の継手(カルヴァリー)。史上最大最強のありえん。組織。

 アークは復讐のため今日もカルヴァリーとたたか……ってないね。

 呑気に平穏を満喫してる。今日はメアとお出かけかみたいだね。

 行き先はこの方角だと……。ふむ、今度は何を見せてくれるだろうか。


 桜舞う街頭を行く一匹と一人の影があった。

 傷だらけの身体を晒す軽装のアークと年相応に活発な格好のメアである。


「なーなーアークー。今日はどこにいくのだ?トバかトバかトバなのだ?」


 メアの舐め腐った声色にアークは二マリと振り向き珍しく浮ついた声で返事を返してやる。


「よーくわかってんじゃねーか。パチンコだよ。パチンコしに……嵯峨にいくんだよ」


 びっと指を天高くつき上げ太陽を指すアークにメアは冷たい水を浴びせるような視線を向ける。


「たまの休みの小学生をどこに連れて行くと思えばとなり町までいってやることがパチンコ……無職はひまでうらやましいのだなー」


「普段なら顔面陥没させてやるところだが……感謝しろよ。今日のアタシは機嫌がいい。なぜなら……!」


 能面のような面構えと化したメアに対し、興奮した面持ちで赤黄に目が痛くなるようなピラピラの広告を眼前に突き出してやる。

 幾重にも折り目のつけられたソレにはこう書かれていた。


「うっふん、おとめじゅく。……なんなのだ。いかがわしいのだ。アークはドスケベなのだなー……」


「ちっげぇよ!いやそれも打つけど……その上だよ」


そこにはデカデカと赤文字のロゴでこう書かれていた。


「フィン……ランド、サーガ?」


アークは胸を張り鼻息荒く語り出す


「おおよ!フィンランドサーガ!略してフィンサガ!スゲエアニメなんだぜ……!バイキングたちによって荒廃しきったフィンランドの社会福祉を立て直すために七人の女体化フィンランド偉人が生前との常識や性別のちが……」


メアは熱っぽく語り出すアークの言葉に観念し。


「そのフィンサガがどうしたっていうのだ?」


「よくぞ聞いてくれたな。このフィンサガ……なんと待望の初パチ化!本日新台入替だ!!こりゃいくっきゃねえだろ!でもよー。この一大事だってのに入荷してんのがこのあたりだと隣町のパチしかねえんだよなー。つーわけで行きます。嵯峨」


「”擬態”するほどなのだ…‥‥?やれやれ仕方ないのだ。たまには付き合ってやるのだ」


 言われたアークの尻には普段見慣れた尾がなく。まるで普通の露出癖の少女のようであった。体中に残る傷跡を除けばの話だが。

幾つもの信号を渡り、無視しやがて普段過ごす町並みとは異なる姿が見え始める。


「と、そろそろだぜ……」


「ここが……」


「「嵯峨」」


 辿り着いた嵯峨。眩いネオン電灯にホログラム広告の数々。電気街というべき町を沢山のグッズを背負った人々やアニメからそのまま抜け出したような格好をした人々が練り歩いている。


「おいアレ。見ろよ」


 その中でも一際目立つ存在がいた。

 真っ赤なバンダナに極厚の眼鏡。水色のジャケットにシャツインGパン。指抜きグローブに大きなリュックから丸めたポスターを覗かせているのは、


「クラシック・オタクファッションだ。最先端だぜ。イカスな……服に着られてるんじゃねえ。完璧に着こなしてやがる。スタイルいいし素顔は相当の美人とみたぜ。尻がエロい」

「1、1、0なのだ」


「まぁて!落ち着け……!!落ち着いたな……じゃ、アタシあいつにパチ屋の場所聞いて来るから!」


「そんなの聞かなくてもヌーヌル先生で……やっぱりスケベザメなのだ……!」


 制止も無視してクラシックオタクファッションの女性に話しかけにいったアークにむくれメアは道路の小石を蹴る。

 そうする間にもアークは女性の前に辿り着き喰いかかる。


「なああんたこの辺でパチ「ひぃようぇ~~~!?」


「お、おおおう」


 夜道で変質者に話しかけられたかのような絶叫を上げ。後ずさる女性にアークも流石にショックを受けたようで少しの間硬直する。


「やらんかにな……なにようござるか……!?は!も、もしやこれが噂に聞くオタク狩り!もうだめぽでござる!?教会でやりなおさせていただきたいでござる!異世界でも可!」


「やー、その……パチ屋……」


「パチっと!スタンガンでパチっとするのでござるか!?熟練の狩人でござる~!どうか家宝と推したちには手をださないで欲しいでござる~~!どーかどーか!」


 話を聞かず路肩で土下座を始めたオタク女性に気圧されアークはじりじりと後退を余儀なくされる。騒ぎに次第に周囲の通行人たちの視線も集まって来る。


「か、顔あげてくれよアタシはただフィンサガ台について聞きたかっただけ「フィンサガ……」


 慌てふためいていた女性が特定の単語に耳ざとく反応し静かになったことに気付いたアークは再び対話を試みる。


「あー……っと。フィンサガ。フィンランドサーガ。知ってっか?アタシの好きなアニメなんだけどー「もっちろんでござる!」「うおっ!?」


 土下座の体勢から跳ね飛びあがりアークの両手を握りしめた女性は鼻息を荒くしてまくし立て始めた。


「フィンサガといえば一昨年の夏アニメの超ダークホース的作品でござるからな……!単なる偉人女体化だけではなく真性女性バレであったり多重人格キャラかと思えば中身が混ぜ物であったり変化球も多かったでござるな……!NO.4が札束風呂に親指を立てて沈んでいくシーンは涙なしには見れなかったでござるよ。名シーンといえば2話の」


「だよなー!アタシとしては六話で神が怒って振り下ろしたウコンバサラを積み立てた年金で障壁貼って真っ向から押しとどめるとこが好きでさー。あそこの札束の偉人リアルとは違うけど近縁者で固めてあるんだってな。凝ってるよな~」


「ぬう。なかなか通なところを。設定資料なども隅まで読み込んでいるとみた。おぬしできるでござるな。で、あれば本日のビッグイベントについては当然既知でござろうな」


 分厚いレンズの眼鏡に手を当て逆光を煌めかせるオタクの言にハッとしたアークは周回遅れで本題を切り出す。


「ああ~!そうそうそれだそれ。アタシら今日はフィンサガのパチ打ちに来たんだけどさ。ここらで入荷してる店。アンタしってっか?」


 問われた女性は待ってましたとばかりに背後の大通りを指さし。


「フム。フィンサガ入荷のパチンコ店であればあそこの通りを右に行けばすぐでござるよ」


「さーんきゅ!じゃアタシらいくけどアンタもこねえ?フィンサガトークしながらフィサガしようや」


「むむむむ。それは何とも甘美な誘い……!であるが、やらんかもこのあと重大案件を抱える身。断腸の思いで断らせていただくでござる……いけたらいってたでござる」


 重いものを持つエモーションからヨヨヨと悲しむエモーションを繰り出すやらんかは心底名残惜しそうにアークを見送ろうとするも。アークはその肩を抱き。携帯端末を自身とやらんかが映るようにかざる。


「そうかい残念。じゃ代わりに一緒に写真撮影で我慢さしてくれ。アンタみたいにクラシックスタイル着こなしてるやつ初めて見てスゲー感動したんだよ。記念にな」


「でゅ、でゅひっ!やらんか大感激でござりゅう……ど、どうぞご尊顔を写しなされ……」


「マスク外してなー」


「おうふ」


 こうしてアークはパチンコ屋の情報とクラシックオタクスタイルの女性とのツーショットを手に入れた。


「じゃーなー!楽しんでくるぜ~!あんたもがんばれよ~」


 メアと共に目的地へと意気揚々と歩みを進める。

 後に残された女性は手を振りそしてマスクを掛け直す。その口元を歪に歪ませながら。


「……ごゆっくり」


第二話開始でーす。

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