表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/335

第二ステージ開幕


 あっぶなー……。


 緊急ミッションってこんなに難易度高かったっけ? 馬車を破壊するのがあと一歩、あと一ターン遅れていたらクニキリもグレイフルもやられていたかもしれない……なんて。


 運がよかった。


 乗り切った今でも呆然としている。胸がドキドキいっている。あー、心臓に悪い。


 商人勇者ポロント・ケエスにしてもそう。


 あいつのスキルって金銭を魔力代わりにして魔法を連発するだけだと思ってた。あと、受けたダメージまで負債という形に変えて破産させない限りノーダメージ、なんていうバリアまで駆使してくる。それがポロント・ケエスの主な戦い方だったはず。


 幹部すら操るなんて……。


 きっとお兄ちゃんの入れ知恵に違いない。


 まあ、操られたっていってもたったの2ターンだけだったので(槍による中距離普通攻撃とクニキリへの直接攻撃)、そこまで手強いって感じはしなかった。


 でも、今回みたいに敵に囲まれた状態で数ターンも動きを止められてしまうと結構ヤバイ。いくら幹部でも集中砲火を浴びせられたら相手が雑魚でも殺される。次はその辺り特に注意しないと。


【ミッション】では、あわよくばレベル上げしたいとかいって、欲をかいて敵の殲滅を目指すのは避けたほうがよさそうだ。今後は勝利条件を満たすことを最優先に行うよう心掛けよう。


 気になったのはもう一つ。


 クニキリが手に入れた【雷の指輪】だ。


 これって、北国ラクン・アナでミッションをこなしたり戦闘したりしたときに、偶にドロップできるアイテム【魔法の指輪】の一種だ。何でそんなものがアンバルハルで手に入ったのか。


 ラクン・アナとの交易?


 そもそもこの緊急ミッションの意味って……。


 ああもうっ。わけわかんない! お兄ちゃんめ、一体何考えてんの!?


 ラクン・アナでしか見られない魔導兵がいたことにも驚きだった。あ、あとエウネとハウリの双子エルフもね。あの双子はラクン・アナ攻略のときにちょろっと出てくる【エルフの森】の住人だ。こんなに早い段階で出てくるのも謎すぎる。


 入り組んでいると感じる。


 ゲーム盤をひっくり返して、駒をデタラメに配置しなおしたみたいな。


 うーん、こうなってしまうと、こっちだけ正攻法でしか攻められないのって不公平じゃない?


 向こうはゲーム盤内部を直接変えられるんだよ? キャラに入れ知恵とかできるし。ズルイよね。そんなんできるんだったらこっちだって味方にあれこれ教えてスキルを増やしたりしたいよ。まったくもう! プンプンだよ!


 くっそー。


 何が悔しいって、ちょっとわくわくしちゃってることなんだ。


 思いもしないことをしてくるサプライズ感っていうのかな。しかもそれをギリギリのところで凌いだときの快感ったらね。


 心をぞわぞわさせてくれるんだ。


 いいね。いいよ……! 楽しくなってきた!


 これから勇者ポロント・ケエスを殺すのが楽しみだね!


 お兄ちゃんの入れ知恵で強くなったポロント・ケエス。でもさ、それ知っちゃったらこっちだって対策立てられるんだよ? お兄ちゃんだってそれくらい折込済みだろうから、ある意味ゲームをフェアに進めようとしてくれている。


 お兄ちゃんは真剣にこのゲームを楽しんでいる。


 それがよくわかる。


 あんなろくでもないお兄ちゃんのくせにさ、きっと笑顔でプレイしてるに違いない。


 なんでだろう。想像するとにやけてしまう。どうしてそんなことが嬉しいのかな。


 わかんないや……。


◇◇◇


【商業都市ゼッペ】に【侵攻】をかける。


【戦闘開始】コマンドをクリックしない限りバトルは開始されない。キャンセルして選択画面に戻ることも可能だ。だから、作戦を立てるために、ひとまず敵勢力と出撃ユニット数を確認してみた。


――――――――――――――――――――――――――――――――

 第一章第二ステージ『商業都市ゼッペ――商人ポロント・ケエス』

 勝利条件【ポロント・ケエスの撃破】

 出撃ユニット数【4】

――――――――――――――――――――――――――――――――


 うん……?


 あれ? 固定ユニットがある。出撃ユニットの枠内にグレイフルの顔イラストがすでに埋まっていた。固定ユニットっていうのは選択不可で出撃が確定しているキャラのことである。こういうのって大概、個別シナリオと連動していたりするんだけど。グレイフルと【商業都市ゼッペ】って何か因縁ってあったっけ?


 固定ユニットにカーソル合わせて決定ボタンを押してみる。すると、グレイフルの立ち絵が現れた。


「ねえねえ、グレイフル。どうして固定ユニットなの?」


 話しかけるとグレイフルは応えてくれた。


『魔王様ですの? 次の侵攻はぜひわらわに一番槍をお任せくださいまし』


「どうしてよ?」


『どうしてですって? 決まっていますでしょう! ポロント・ケエスとかいう虫けらをこの手でくびり殺してやらないと気がすまないからですわ! わらわが受けた屈辱、きっちり晴らさせていただきますわ!』


 ああ……、こりゃ梃子でも動かせそうにないや。


 まあいっか。出撃ユニット数は四つ。こっちの投入キャラは全部で六つ。


【女王蜂グレイフル】が決まっているから、残る枠はあと三つ。



【魔王】

【鬼武者ゴドレッド】

【殺戮蝶リーザ・モア】

【魔忍クニキリ】

【赤魔女ナナベール】


 この中から選ぶことになる。


 ポロント・ケエスとの相性を考えると……、やっぱり【操る】スキルを撥ねかえす【不死影アーク・マオニー】を部下に従える魔王を投入するのが最善だろうか。


「ん……いや」


 お兄ちゃんがあえて見せたのなら、これは罠。


 こちらの大将をわざわざ最前線に配備するのは、総力戦ならともかく局地戦においては愚の骨頂。司令塔は後方でふんぞり返っているものなのだ。


 決めた。この三人にしよう。


 あと、余ったひとりは【偵知】に送っておこう。同時進行で効率よくゲームを進めるんだ。――と、その前に、【迷いの森】を攻略したときに消費したアイテムを補充しておかないとね。


 ナナベールに責任を取ってもらう形で【錬金】をよいしょよいしょ。


 幹部それぞれの【武器強化】や【部下増強】も行っていかないとね。第二ステージが始まるギリギリまで育成していくんだ。


◇◇◇


 そろそろかな。


 ナナベールを【錬金】に釘付けにしていると、最悪、次ステージ開始に置いてきぼりを食って参加させられなくなってしまう。まだ少ないけどアイテムの補充はこれくらいでいいかな。


「じゃあそろそろ出陣だね。――あ、クニキリは【偵知】に行ってね。【南境マジャン・カオ】へ。侵略候補地の拡張をしに」


『御意』


「さあ、第二ステージだよ! みんな!」


――――――――――――――――――――――――――――

 出撃ユニットを選択してください。――ユニット数【4】

――――――――――――――――――――――――――――


【鬼武者ゴドレッド】

【殺戮蝶リーザ・モア】

【女王蜂グレイフル】

【赤魔女ナナベール】


―――――――――――――――――――――

 こちらでよろしいですか?――【YES】

―――――――――――――――――――――


 はてさて。お兄ちゃんは、今度はどんな作戦を立ててきたのかな。


 敵はたぶんポロント・ケエスだけじゃない。でも、こっちは最優先でポロント・ケエスを殺す。勝利条件を満たす。あえてあっちの思惑には乗らない。


 もう驚かされないよ――なんて、言わないよ。


 純粋に楽しむことにしたよ。私。


 だからお兄ちゃん、もっと私を驚かせてよ。


 思う存分、楽しませてよね。



――――――――――――――――――――――――――――――――

 第一章第二ステージ『商業都市ゼッペ――商人ポロント・ケエス』

 勝利条件【ポロント・ケエスの撃破】

――――――――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――

 ゴドレッド    LV. 10

          HP  503/503

          MP    0/0

          ATK 110

――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――

 リーザ・モア   LV. 12

          HP  370/370

          MP  222/222

          MAT  94

――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――

 グレイフル    LV. 11

          HP  402/402

          MP   75/75

          ATK  83

――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――

 ナナベール    LV. 15

          HP  400/400

          MP  390/390

          MTK  77

――――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――――

 ポロント・ケエス LV. 12

          HP  800/800

          MP  200/200

          ATK  12

――――――――――――――――――――――


お読みいただきありがとうございます!

よろしければ、下の☆に評価を入れていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ