特殊ステージ『大封リュウホウ――大岩猿討伐』
サクサク行こう。
お次はミッションではなく、【調達】コマンドを使う。
【調達】したいお目当ては【魔物】だ。なので、【峠の角笛】を使用する。とりあえず上限の五回全部使ってみよう。お目当てを引き当てられなかった場合、呼び寄せた魔物とは交戦しなければならない。
もし、すでに配下に加えている魔物が現れた場合には、【戦う】か【従わせる】かの選択肢が出てくる。【従わせる】を選択すると戦闘を回避することができるが、角笛は一回分消費する。ま、戦闘でレベル上げを行って消費分を無駄にしないようにするけどね。戦おうと回避しようと、ゲーム内で流れる時間は同じなんだし。だったら経験値を得られる機会は無駄にできない。
調達を進めつつ、強くなっていかなくちゃ。
呼び寄せた魔物は、一回目は牙猿の群れだったのでこれを撃退。
二回目。この周回では新種の【ヘルヴァイパー】一匹と【軍隊アリ・斥候】八匹だった。【ヘルヴァイパー】は巨大ヘビのモンスターで割と強く、【軍隊アリ・斥候】もデフォルメされた可愛らしいアリンコ兵だけれども油断ならない敵である。何より行動範囲が広く、ターンが回ってくる速度も早い。蛇と蟻はちょこちょことすばしっこいから。
ゴドレッドとゴブリンで辛くも勝利。
【ヘルヴァイパー】も【軍隊アリ・斥候】も配下に加わらなかった。残念。
ちなみに、【軍隊アリ・斥候】には上位互換に【軍隊アリ・兵士】と【軍隊アリ・女王】がいるんだけど、リュウホウを半ばまで侵略しないと出てこない敵だからもうちょい待ってて。女王蜂グレイフルに女王アリの群れを付けるとかなり異様な軍団になるんだ。
三回目。またもや牙猿の群れ。もう戦闘にも慣れたものであっけなく撃退。
四回目。そろそろ出て欲しいな。
毎回ドロップアイテムで【峠の角笛】が手に入る。おそらく戦うたびにドロップするだろうから魔物を呼び寄せる回数には制限がない。こればっかりはね、いつかお目当てが出てくるまで気長にいくしかないのだ。
と、思っていたら、出た! 四回目にしてようやく! ……って、むしろ割と早い段階で出てきてくれた。やっぱり幸先が良かったのだ。あとはこいつを捕まえることができれば……っ。
牙猿の上位互換モンスター――【大岩猿】があらわれた!
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戦闘『大封リュウホウ――魔物討伐』
勝利条件【大岩猿の撃破】
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◇◇◇
岩のような肌質で、牙猿の二倍くらいの大きさがある。リーザ・モアがミッションで倒した【大蛸】と同じ中ボスクラスの強さだ。
出現確率は15%。後に得られる情報から判明することで、初回プレイだと序盤で遭遇することはまずないだろう。それに、倒したところでどんなメリットがあるかなんて知らないしね。二周目をプレイしている私だからこそ、序盤からコイツを討伐する機会を得られたのだ。
知識だけは【強くてニューゲーム】だもんね。このアドバンテージは大いに活用しなくっちゃ。お兄ちゃんも条件は同じなんだから。
大岩猿を倒さないとお兄ちゃんを出し抜けない。
絶対に勝たなくちゃ駄目なんだ。
バトルフィールドは牙猿戦と同じく山岳フィールド。
ごつごつした岩の山道に、四マス分の大きさの敵NPCがでんと現れた。なかなかの迫力。接近して攻撃を仕掛けるのがちょっと恐くなるレベル。
序盤でコイツを討伐できたらかなり有利になるけれど、……レベル5のゴドレッドではたして勝てる相手かどうか。もしかして、早まった?
―――――――――――――――――
大岩猿 LV.10
HP ???/???
MP 0/0
ATK 60
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むむ。攻撃力たっか! 攻撃を3発喰らったらゴドレッドでもアウトだな。ゴブリンに至っては一撃で退場だ。
四方から囲んで攻撃し、ゴブリンが一ターンずつ盾になってゴドレッドを守るしか遣りようがない。
とりあえず、行く。
ゴドレッドを動かして大岩猿の背後へ。ゴブリンは大岩猿の正面を散り散りに。
大岩猿が移動する。移動範囲は一~二マス程度。跳んで二マス移動し、着地の衝撃で二マス分距離を挟んだゴブリン③とゴブリン④にそれぞれ『30』のダメージを与えた。
「マジ……?」
コイツ……動くぞ! ――じゃなくって。
コイツが動くだけでダメージ受けるの!? そんなの知らなかったし……ッ。
「ていうか、一周目に討伐したときって物語も中盤以降だったような気がする。みんなレベルが20とか30超えてたような……」
だから大して苦戦した覚えがなかったのか。確か、大岩猿は3ターンに一回くらいしか移動しなかったと思う。初めて討伐したときは初っ端から囲んで移動させなかったんだっけ。通常攻撃しか喰らったことないからわからなかった。
「くっそ……。だからって、逃げても何も始まんない。コイツは絶対に倒さなきゃなんだ。そうじゃないと計画がパアになる……っ」
でも、当たって砕けろ……ってワケにはいかない。このゲームにセーブ&ロードは無い。やり直しはきかないんだ。お兄ちゃんと関係ないところで大事なゴドレッドを失うワケにいかない。そんなことになったらお兄ちゃんに大爆笑されること間違いなし。
ゲーム廃人の私が、ゲーム素人のリア充お兄ちゃんに得意ゲームで負けてちゃ目も当てられないっての! ここは気合で攻略するしか……ッ!
ゴブリンを接近させて攻撃――大岩猿にダメージを与えた!
『8』
やばい! ザコい! 全然ダメージ与えらンねえ!
五匹が連続して攻撃してもせいぜい『40』くらいか。大岩猿の最大HPってどれくらいだろう? 400は無かったと思うけど。つか、無いと信じたい!
ゴドレッドの攻撃――大岩猿にダメージを与えた!
『32』
うーん……ッ。ま、まあ、許容範囲……かなー?
固有スキルを途中で挟んでいけば5~6ターンもあれば倒せるかな。その前にこっちが全滅しなければ……だけど。
ゴブリンで大岩猿を囲んでそれぞれ攻撃。
『7』
『8』
『7』
『8』
一ターンで大岩猿に与えた合計ダメージポイントは『70』だった。
これを5ターン繰り返せば『350』だ。でも、大岩猿の攻撃で何匹のゴブリンが生きていられるか。ゴドレッドだってどうなるかわからない。
とにかく2ターン目。やることは変わらない。
ゴブリンたちの攻撃――大岩猿にダメージを与えた!
『7』
『7』
『9』
『7』
『6』
ゴドレッドの攻撃――大岩猿にダメージを与えた!
『30』
合計ダメージポイント『66』!
「うーん……ッ」
歯がゆいなあ! もうちょっとダメージ与えられないものなの!?
と、思っていたら、大岩猿の攻撃だ!
片手で薙ぎ払うようにして、正面に居るゴブリン三匹に一斉攻撃。
ゴブリン③に『55』のダメージ!
ゴブリン④に『58』のダメージ!
ゴブリン⑤に『57』のダメージ!
ゴブリン③がやられました!
ゴブリン④がやられました!
ゴブリン⑤がやられました!
「ピンチ! ――って、うわあああッ!?」
大岩猿がさらに移動。二マス移動して、二マス帰ってきた。え? うそ? 一ターンで二回も移動できんのコイツ!?
着地の衝撃でそれぞれにダメージを与えた!
ゴブリン①に『30』のダメージ!
ゴブリン②に『31』のダメージ!
ゴドレッドに『25』のダメージ!
さらに、大岩猿の攻撃。
「ぎゃああああああああああっ!?」
ゴブリン①に『54』のダメージ!
ゴブリン②に『53』のダメージ!
ゴドレッドに『53』のダメージ!
ゴブリン①がやられました!
ゴブリン②がやられました!
「やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい――――」
――――――――――――――――――
ゴドレッド LV.5
HP 77/155
MP 0/0
ATK 42
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次のターンで確実に死んでしまう!
コマンド入力!
逃げるが勝ち!
『帰還命令! ゴドレッドは逃げ出した!』
『魔物討伐に失敗しました!』
『ゴドレッドのカリスマ値が2減少した!』
『ゴドレッドの魔王への好感度が1減少した!』
「くううう……。指揮してるのは魔王――つまり私だから、無茶な戦い方させたってことで信頼が失われちゃうんだ……」
なんつーシステムだよ。死んだら生き返せないし、シビア過ぎんぞこンのっ!
くっそう。
チックショウ。
計画がオジャンじゃんか。
計画を練り直さなきゃだ。……次回討伐に行くときはゴドレッドのレベルが10を超えてからにしよ。部下もゴブリンなんかよりレベルの高いモンスターに変えてっと。
腐ってばかりいられない。
今度こそ、倒しちゃる。
見とけよ、大岩猿め!
ああもう、ほんとチョーくやしいいいいいいいいいいッ!
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