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SIDE―妹③ 離反


 BGMが消え、無音のままシナリオが勝手に進んでいく。


 不穏な空気の中、画面に映し出された背景は玉座の間。


 玉座に至るまっすぐに延びた赤絨毯の上に鬼武者ゴドレッドの立ち絵が現れた。


『――魔王様。恐れながら、お話したきことがございます』


 この〝演出〟を目撃することは稀である。ある一定条件を満たさなければ開かれることのないイベントの一つ。プレイヤーに絶望を与えるシステム上のペナルティ。


『……』


 劇中の魔王はすでに何かを悟っている。


『魔王軍から――いや、余の許から離れるつもりか?』


『……。申し訳、ありませぬ』


『理由を聞かせてはもらえぬか?』


『これ以上、我が騎士道を穢させぬためです』


 ここでは語られないが、ゴドレッドはこれまで度重なる不当な扱いに魔王に対し不信と失望を募らせてきた。


 決定的だったのは勇者アテアとの戦闘時に、騎士にあるまじき卑劣な騙し討ちを強制させられ、望まぬ勝利をあわや拾いそうになったことだ。傷ついた自尊心に思い至らない魔王への不信はこのときついに限界を迎えた。


『それで余に叛意を向けるか……。人間側に付くつもりか?』


 この問いはあまりに配慮に欠けていた。


 ゴドレッドは激昂し目を赤くした。


『我が敵に寝返ることなどありえない! 仮定することすら烏滸(おこ)がましい! いくら魔王様であってもそれ以上の侮辱は許さん!』


 ゴドレッドの本質を最初から見誤っていたが故の誤解であった。


 この戦士が求めるものはただ一つ『純粋な力の証明』に他ならない。強者との闘争だけが彼を彼たらしめる唯一の存在証明。そこに打算や保身を疑うことはゴドレッドの魂すらも冒涜する。


『言葉が過ぎたようだ。撤回しよう』


 だが、あえて魔王の無神経さを弁明するならば、それが上に立つ者の責務なのである。


 魔王軍を『民』と捉えたとき魔王は一国の『王』である。たとえ忠臣の不興を買うとわかっていても国を広げて民を救うためには個人の気持ちを踏みにじることも時には必要になる。


 卑劣さを強要してでも戦争に勝たなくてはならなかった。


 魔王は『王の責務』を全うしたに過ぎないのだ。


 畢竟、ゴドレッドの『個』よりも魔王軍の『群』を優先させただけの話である。


 ゴドレッドもそれは理解している。だからこそ、彼は魔王に叛意を向けたりせずに『離反』を申し出たのである。


 とある条件を添えて――


『我がここを離れたとて魔王軍の損失とはなりますまい』


『どういう意味だ?』


『我は強者との戦いを望んでおります。よって我はこれより放浪の旅に出て、各国の勇者に決闘を申し込んで参ります。この武力を思うままに振るってみたい。この命が続くかぎり。このことは取りも直さず魔王様の前に立ち塞がる障壁を排除することに繋がりましょう』


『……なるほど。つまり、その邪魔立てをするな、ということか』


『はい』


 それが身勝手を自覚するゴドレッドなりのケジメの取り方であった。


 これより後、ゴドレッドは魔王や魔王軍のためではなく、自分自身のために勇者と戦っていくことになる。


『おまえは余の右腕であった。寂しくなるな』


『どうかお達者で』


 ゴドレッドの立ち絵が消え、玉座の間を閉ざす扉の音だけが無情にも響き渡った。


 今後、ゴドレッドが本編に登場することはない。



――――――――――――――――――――――

 ゴドレッドの忠誠心が『0』になりました。

 ゴドレッドが魔王軍から『離反』しました。

――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――――――――

 ※プレイヤーは『ゴドレッド』を使用できなくなりました。

―――――――――――――――――――――――――――――



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