表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
274/335

第一層① 開戦


 画面が移動し、二列に並ぶ十体の人間兵から一歩前に出ているキャラクターにフォーカスが当たる。


 ロマンスグレー。口ひげが似合うイケオジキャラの立ち絵が現れた。


 王宮兵千人隊長リンキン・ナウトだ。


『この戦いでアンバルハル王国の命運が決まる! 家族、友人、祖国――各々が守るべきもののために剣を執れ! 行くぞ! アンバルハルの勇者たちよ!』


『オオォオォオォオ!』


 彼が鼓舞すると部下たちが雄叫びを上げた。


 バトルフィールド内に、魔王以下魔王軍幹部の二頭身キャラが駆け込んでくる。


 魔王の立ち絵が現れる。


『ほう……。どうやらあの人間を倒さぬかぎり先ヘは進めぬようだな』


 すると、ゴドレッドの立ち絵が応じるように並んだ。


『あの者は忠義の士にございます』


『わかるのか?』


『目を見れば。我と同類に違いありませぬ。命を燃やす戦場を欲しています。あのような手合いには策を弄さずに正面からぶつかって打倒することが最善かと』


『あなたが戦いたいだけでしょう? ゴドレッド』


 リーザ・モアが茶々を入れ、魔王が哄笑した。


『好きにするがいい。だが、あの首は早い者勝ちだ。よいな、ゴドレッド』


『願ってもありませぬ!』


『では行くぞ! まずは人間の兵士どもを蹴散らすのだッ!』


 会話劇が幕を閉じ、いよいよバトルスタートだ!



―――――――――――――――――――――――――――――――

 第五ステージ『リームアン平原~アンバルハル王国最終決戦~』

 ―第一層―

 勝利条件【リンキン・ナウトの撃破及び人間兵の殲滅】

―――――――――――――――――――――――――――――――


◇◇◇


 戦いが始まった。


 両軍が一斉にぶつかって、広大な平原のあちこちに土煙が舞い上がった。


 数こそ人間側のほうが多いが、異形の魔族はその一体一体が恐ろしい力を秘めている。単独で撃破するのは難しく、少なくとも三人一組で一体に当たってどうにか勝てるような戦力差だ。それを踏まえると数の優位はほとんどなく、かろうじて拮抗しているような戦況であった。


「……」


 リンキン・ナウトは魔王軍幹部たちをじっと観察した。


 こちらに向かってくるのは最前線の軍隊を指揮しているのが自分であると見抜いたからだろう。


 確かに自分が死ねば、職業兵である王宮兵も国中から募った民間の傭兵たちも一瞬にして烏合の衆に成り果てるだろう。リンキン・ナウトがいるからこそ戦える部隊として機能しているのだ。戦争に勝ちたいと思うなら第一に自分の命を優先すべきと弁えている。


 だが、兵たちの士気はリンキン・ナウトが前線に立っていることで上がっていた。その活力があって初めて魔王軍に対抗できている。死ぬわけにいかないからと言って、自分がこの場から退くこともまたできない。


 ならば――迎え撃つしかあるまい。


(私の命運もここまでか……)


 せめて占星術師がこの戦場に間に合うまでの時間稼ぎに徹してみよう。それだけでも自分がいたことに意味があったのだと誇れるような気がする。


(さらにその先も見たくあったが)


 どちらにしろ、この戦いに勝たねば始まらない。


 剣を引き抜き、鞘を投げ捨てる。


 アンバルハル王国一の剣士、リンキン・ナウト――出陣。


「来るがいいっ! 魔王軍!」


 砂塵を巻き上げて突進してくる最初の幹部に剣先を突き付けた。


「をーっほっほっほ! 一番槍は頂きましたわーっ!」


 白いドレスをふわりとたなびかせて、優雅な素振りに似つかわしくない速度で駆けてきたのは魔王軍特攻隊長【女王蜂グレイフル】だった。


 手にした傘型の槍をくるりと回転させ、逆手に持ち替えて投擲の挙動に入る。槍投げの要領で踏み込み、100メトル以上離れた場所からリンキン・ナウト目掛けて投げた。


 ギュオンッ!――風が唸りを上げる。傘の魔槍がドス黒いオーラを纏って迫り来る。


 刀身を正面に構えて傘の石突を受け止める。だが、それも一瞬――石突の側面を滑るようにして刀身を横にずらし軌道を変え、いなした傘は背後遠くに飛んでいく。


 防御が成功した。しかし。


(受けただけでこの衝撃……ッ! まずい! 今ので両手が痺れて……ッ)


 次の動作が間に合わない。


 気がつけばグレイフルはすでにリンキン・ナウトの懐深くにまで肉薄しており、握った拳を大きく振りかぶった。


「喰らいやがりなさいなッ!」


 右ストレートの拳がリンキン・ナウトの腹にめり込んだ。


「ごふっ!?」


 ドンッ――と、自身が砲弾になったかのように勢いよく吹き飛ばされた。


 空中で姿勢を制御して地面を滑りながらもなんとか着地する。20メトルほど吹き飛ばされたが、図らずもグレイフルの間合いから抜け出せたのは僥倖と言えた。


 殴られたダメージもそれほどではない。


 すぐさま剣を構えて態勢を整えた。


「あら? 意外と頑丈ですのね。壊れにくい人間は張り合いがあって好物ですわよ。そうでなくては面白くありませんわ!」


 再び特攻してくるグレイフル。


 襲い掛かる拳打の乱舞にリンキン・ナウトは刀身を盾にして防ぎ切る。


「そら! そら! そら! そら!」


「ぐくう……ッ」


 息を吐かせぬ怒涛の連撃に反撃の余地はない。


 リンキン・ナウトは防戦一方を強いられた。


◇◇◇


 グレイフルの攻撃!

 リンキン・ナウトに『88』のダメージを与えた!



――――――――――――――――――――――

 リンキン・ナウト LV.15

          HP  ???/???

          ATK 111

――――――――――――――――――――――



 グレイフルの先制攻撃が決まった。


 通常攻撃でダメージ『88』か……。グレイフルの基礎能力値を上げといたのは正解だったみたいだね。


 一番機動力がある上に、中ボス級にもまあまあダメージを与えられる攻撃力は使い勝手が抜群にいい。


 でも、グレイフルひとりで倒せるだなんて思ってない。


 所詮は『中ボス』って言ってもボスはボス。油断できない相手に変わりないのだ。


 リンキン・ナウトの恐いところは偶に出てくるクリティカルヒットだ。


 グレイフルも接近戦が得意だからと言って相手の土俵でだけで戦うのは得策ではない。ヒット&アウェイを繰り返し、他幹部も加えた波状攻撃で確実にHPを削っていく。


 リンキン・ナウトのHPって『???』表記だけど、正確な数字は正直覚えてない。


 まあ、一周目ではそれほど苦戦してないし大したことないと思うけど。


 一ターンずつ、一ターンずつ。丁寧に。確実に。


 こっちの消耗をできるだけ少なくしつつ、敵を殲滅するのだ。


 リーザに手番が回ってきた。


 離れた場所にいる人間兵に魔法攻撃だ!



 リーザ・モアは《ヒートボール》を放った!

 人間兵⑦に『118』のダメージを与えた!



――――――――――――――――――

 人間兵⑦ LV.15

      HP  182/300

      MP   0/0

      ATK 60

――――――――――――――――――



 人間兵⑦に《残り火》が絡みつく!

 人間兵⑦に『22』のダメージを与えた!



―――――――――――――――――

 人間兵⑦ LV.15

      HP 160/300

      MP   0/0

      ATK 60

―――――――――――――――――



《ヒートボール》の効果でこの後も一ターンずつ人間兵⑦の体力を削っていく。こいつはもうしばらく放っておいていいだろう。他の奴にも《ヒートボール》を食らわしていく。


 ナナベールに手番が回ってきた。


 近くにいる人間兵③と人間兵⑨にまとめて範囲魔法を掛ける。



 ナナベールは《マインドコンフュ》を放った!

 人間兵③は混乱した!

 人間兵⑨は混乱した!



 こいつらにターンが回ってきたら味方同士で攻撃し合ってくれるはずだ。こいつらはしばらく放っておいてヨシっ! っと。


 クニキリに手番が回ってきた。


 クニキリにはグレイフルの加勢に入ってもらう。


 リンキン・ナウトを遠距離からクナイで攻撃だ!



 クニキリの攻撃!

 リンキン・ナウトに『35』のダメージを与えた!



 確実に削っていくよ!


 で、お次はゴドレッド!――なんだけど、こいつ足遅いからなー。いまだにフィールドの下方にいるし、一人だけ人間兵にすら会敵していない。リンキン・ナウトのところまで辿り着くのにあと何ターン掛かることやら。


 大丈夫ぅ、ゴドレッドぉ?


 強敵と戦いたいって散々言ってたくせにさ。そんなんじゃ大将首どころか雑兵の首すら横取りされちゃうぞ? ぷーくすくす! なっさけなーい!


 ま、焦ることないよ? アンタの出番は後でちゃーんと回ってくるからさ。


 さあて、次々!


 さっさとこの『第一層』を終わらせちゃうんだから!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ