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鬲皮視霆榊・ウ蟄蝉シ?(莉ョ)④--SYSTEM ERROR:[魔王軍女子会(仮)④]


『あのー、魔王様、ナナ様、お茶の準備ができました』


 と、ナナベールからの追及がひと段落ついたところで、画面上にパイゼルの立ち絵が現れた。


『おー、入ってくるタイミング図ってたんか。遠慮すんなっての。ここはおまえの部屋でもあるんだぞ』


『そうなんですけど』


 パイゼルはそう言うと、苦笑いを浮かべながら上目遣いに私を見た。


『やっぱり魔王様がいらっしゃると思うと緊張してしまいます』


「あ、ごめん。急に押しかけちゃって」


 私としても【錬金】するつもりでナナベールの研究室を訪問したのに。ついつい話し込んでしまった。反省。


 パイゼルは『いいえ! 魔王様は悪くありませんから謝らないでください!』と慌てたように恐縮した。


『そ、それに何だか難しそうなお話をしていらっしゃいましたし。お邪魔するのも悪い気がして』


『そっかあ? むしろお茶出してくれたほうがありがてーけどな。めんどくせー話してたから喉乾いちまったぜ』


 ずずず、とお茶を飲むナナベール。


 ナナベールにとって魔王の正体はめんどくせーお話なのね。ま、いいけどさ。


 しかし、こうしていると何だか同年代の女の子が自分の部屋に遊びにきたみたいな感覚に陥る。相手はゲームキャラなのに、変なの。


 自分の声で会話ができるってだけで親近感って増すもんなんだね!


 うふ、くふふ……。なんだろう。楽しいなあコレ!


「あ、そうだ! ねえねえ! だったらさー、恋バナしようよ恋バナ! 女の子同士集まったらコレっきゃないっしょ! ナナベールは好きなひととかいないの?」


 ナナベールが『ぶふぅ!』とお茶を吹き出し仰天した顔になった。


『はあ!? いきなり何気色わりぃこと訊いてんだ?』


「だって、こんな機会なかなかないし。いいじゃん、女子会っぽくてさ!」


『女子会ってなんぞ? てか、うちは色恋になんぞ興味ねー!』


「えーっ!? そんなこと言ってぇ、じ・つ・は?」


『うっわ、めんどくせー。そういうノリやめろや! うちはマジでそういう話嫌いなんだよ!』


「むー。あ、だったらパイゼルは?」


『へ!? あ、あの、何のお話ですか?』


「だからあ! 恋バナだって言ってんじゃん! 女子会って言ったらこういうトークテーマは普通でしょ!? パイゼルには好きな男の子とかいないの? あ、そっか。パイゼルってずっと森の中で生活してて、こっち来てからも研究室に閉じこもりっぱなしだったもんね。さすがに出会いはないかー」


『ええっと……』


「じゃあさ、幹部の男はどう? カッコイイなあ、とかそういうのない?」


『か、カッコイイのはナナ様です!』


「あ、そういうのいらないから。男って言ったでしょ。クニキリとかどう? あれで結構女の子に人気あるんだよ。私も好きなほうかも」


『ええ!? ま、魔王様がですか!? そ、その、戦力的なお話ですよね?』


「ううん。顔的に。私、面食いだし」


『ぇ、ぁ? ええっ!?』


「目の保養って大事だし? そっちも当然チェックするっての! 私の推しメンはやっぱりアディユス様かなー。パイゼルは知らないだろうけどめっちゃカッコよかったんだからアディユス様は! 美形なのはもちろんだけど、性格も歪んでて萌えるんだよねー! 拗ねて半泣きになるイベントとかマジで神! 萌え死ぬからガチで! 泣き顔カワユスなんだよ! くふぅ、思い出しただけでヨダレがうへへえ! マジしゅきしゅぎりゅうううう!」


『うわぁ……』


「待てよ? 今アディユス様が生きてたらこうして会話できたんだよね? うわあ、そしたらなんて声掛けられてたんだろう。やっぱ最初のうちはツンツンしてるんだろうなあ! 『私に近づくな下郎!』とか言ってさー! で、親密度が上がったら私のこと気になりだして、そんでいつかは『おまえ、面白い女だな』って言うんだよ! ぃひゃあ、おもしれー女きちゃぁああ! んでんで最終的には『私にはおまえだけなんだ! お願いだ! 一緒にいてくれ!』とか言い出すんだよ! でゅふぁ! 何コレいつの間にか乙女ゲー始まってんし! ちょー最高なんですけど!」


『……』


「そう考えたらお兄ちゃんがアディユス様殺したの今になってまたムカついてきた! あーもーっ! ほんと性格悪いったらないわバカ兄貴めぇ! くっそう悔しい! ああもうくっそう! めっちゃめっちゃ悔しいチクショウチクショウきぃいいいいいいい!」


 思わず膝に置いてたクッションをボッスンボッスン床に叩きつけていた。


 いま目の前にお兄ちゃんがいたら絶対ぶん殴ってるわ!


 はぁはぁと興奮していると、パイゼルの立ち絵が怯えたものに変わっていた。


『う、ぁ、あ……、ま、魔王様……、魔王様が……』


「ん? どしたのパイゼル?」


『ひぃい!?』


 え? 悲鳴を上げられた? 何で?


 すると、ナナベールが溜め息を吐いた。


『あのな、魔王様。多分だけど、パイゼルには魔王様の声とか口調は以前のまま聞こえてるんだと思うぞ?』


「んん?」


『つまりだな、いかついオッサン声で「余はアディユス様萌えなのである!」みたいなこと熱弁しているように聞こえてんだと思う。このドン引きっぷりを見るに』


「はいいい!?」


 じ、じゃあ、さっきまで喋くってたこと全部魔王口調に変換されていたっこと!?


 ――恋の話をしようではないか。女子同士集まったのであればこれしかあるまい。


 ――余は面食いなのである。


 ――思い出しただけでヨダレがうへへえ。


 みたいに聞こえてたってことぉ!?


 最後のはどっちにしろアウトだろうけど!


 そりゃ引くわ!


『わ、私、奥の部屋お掃除しに行ってきます! ま、魔王様、ごゆっくりぃ!』


 そうして、パイゼルはわかりやすく画面からフェードアウトしていった。


「……えっと。つーことは私、パイゼルに対してめっちゃセクハラめいたこと言ってたことになるの?」


『まあ、単純に気持ち悪かっただろうな』


「マジかよおお! すげえ恥ずいじゃん! どうして素の私の声で聞こえてないかなあ!?」


『いや、素の声でも引く内容だったけど。つーかよー、今考えるべきはそこじゃねーだろ。どうしてうちにだけ魔王様の素の声が聞こえるようになったんだ? うち、別に特別なことしてねーけど』


「……」


 いや、どうだろう。


 私としてはナナベールだけってところにしっくりくるところがある。


 多分だけど、ステータスにも表示されない『裏好感度』みたいなものがあるんだと思う。もしくは『シナリオ進行度』的なやつ。


 ナナベールとはある程度交流を深めてきた。それできっと私かナナベールどっちかのスキルが解放されたんだと思う。現実の私を認識させる(できる)っていうスキルが。


 このことはまだナナベールに伝えなくてもいいか。推測でしかないしね。


 ひとまず、お兄ちゃんを見つけ出して殺す以外にも目標ができた。


 魔王軍幹部全員に私を認識させてやる!


 幹部全員を攻略してやるんだ!


「ふふ、ふふふ、楽しくなってきたぁ!」


『おーい、魔王様よーい。変なこと考えてんじゃねーだろーな。うち、めんどくせーことは御免だぞー』


 当面の目標は女キャラ全員に私を認識させること。


 みんなと友達になるんだ!


 そして――今度こそ開くぞ、本物の女子会を!


(隠しシナリオ 了)



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