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約束


 パイゼルの攻撃!


 クリティカルヒット!


 ベリベラ・ベルに大ダメージを与えた!

『177』


――――――――――――――――――――――

 ベリベラ・ベル  LV.17

          HP  423/600

          MP  156/200

          MTK  93

――――――――――――――――――――――


「げぼっ!」


 ルーノの顔面を狙った拳はベリベラ・ベルの胸部にめり込んでいた。


 背骨に到達した衝撃は全身を駆け巡り指先まで痺れさせている。浮き上がりかけた足許に力を込めて床を踏みしめる。本来なら礼拝堂の端まで吹き飛ばされてもおかしくなかったが、踏みとどまれたのは勇者としての意地がそうさせたのかもしれない。


 あるいは、たった一つの約束――。


「勇者……様……?」


 背後。見目麗しい美少年が腰を抜かしていた。ベリベラ・ベルは振り返ることなく彼の安否を感じ取り、ほう、と安堵の溜め息を吐いた。


「怪我……なさそうですね。よかったです」


 その顔を潰されていたらと思うと怖くなる。彼は将来必ずいい男に成長する。いつか毒牙に掛けるその日までキレイなままでいてもらわないと困る。


「ど、どうして……?」


 なぜ庇ったのか――その質問には低俗な動機と、勇者という立場上の使命感など回答は様々あるが、そんなものは後付けか自身を奮い立たせるための欺瞞に過ぎず、危険を顧みず自ら盾となった理由は実のところ一つだけだった。


「占星術師様のご命令です。君を守るようにと」


「アニが? 僕を?」


「はい。理由は話しませんでしたが、まあ、君のような可愛らしい男の子なら守るのに理由は要りません。人類の宝です」


 アニがなぜルーノを気に掛けるのか、少しも考えなかったと言えば嘘になるが、正直ベリベラ・ベルにはどうでもいいことであった。


 ベリベラ・ベルにとって重要なことはルーノを守ることへの対価である。


◇◇◇


 ――では、一つ約束してくださいますか?

 ――いつか私を迎えに来てくださると。


 言葉だけで何の意味もない約束。


 本当に迎えに来てほしい人は別にいるのに。


 ――ああ。いいぜ。それでアンタがルーノを守ってくれるなら。


 余計な一言だ。乗せたいならもっと気の利いたことを言えと思う。


 でも、占星術師は彼じゃないから。


 これはベリベラ・ベルの中にだけ生きている約束。


◇◇◇


 ルーノだけは死なせない。


 それが、ベリベラ・ベルがこの戦いにおいて唯一立てた誓約だった。


 不思議だった。単なる口約束だとわかっていても力が後から後から湧いてくる。試したことすらない魔法をぶっつけ本番で成功させられたし、届くはずのない距離にいたルーノをこうして守ることもできた。


 体内からせり上がってきた血液を口内でせき止めて、飲み下す。


 ほら。本当は床を這いずって悶絶するような痛みなのに、どうして耐えて立っていられるのだろう。吐血さえ我慢して笑みを浮かべているのはなぜだろう。


 力が漲ってくる。


 約束を果たすまでは――。


「私が君を守ります」


◇◇◇


 あれれ?


 べリベラ・ベルが間に割って入ってきた。何で?


 まるでこの【魔導兵①】を庇ったみたいに……。


 まあ、ベリベラが動いたおかげでクニキリも《エナジードレイン》から解放されたし、結果オーライなんだけど。


 もしかして、この魔導兵①がお兄ちゃんってことはない?


 仮にもし、魔導兵①②③の中にお兄ちゃんがいたとしたら……。


 お兄ちゃんなら勇者すら自分の盾にして利用しそうじゃない?


 うん。ピンチになったらきっとする。私にはわかる。兄妹だもん。私だって似たような状況になったら絶対誰かを盾にすると思うし。


 ここにいる魔導兵がお兄ちゃんなのか。


 それとも、ただの引っ掛け?


 あるいは……利用できる駒だから死なせたくないだけとか?


「うーむ」


 よくわかんないや。




 とりま、殺してから考えよう。



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