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四面楚歌


 一方、クニキリとシスターベリベラ・ベルの戦いは膠着状態が続いていた。


 ベリベラ・ベルは今も闇の中で息を殺している。カウンタースキル《影法師》を恐れているのか慎重になっているようだ。


 動くに動けないのはクニキリも同じであった。ベリベラ・ベルが焚いている『淫靡の香』の影響で【混乱】状態が続いていた。


 ベリベラ・ベルの幻惑により方向感覚が狂わされている。敵の位置を正確に把握することが難しく、カウンターでなければ刃を合わせることもできない。


 じりじりと互いに相手の出方を窺ったまま時間だけが過ぎていく。


 ベリベラ・ベルが痺れを切らして襲いかかってくるのが先か。


 クニキリがステータス異常から回復して仕掛けるのが先か。


 そのとき、祭壇のほうから眩い光が広がった。


 神父の勇者サンポー・マックィンの光属性魔法 《セントファイア》の光である。


 礼拝堂の暗闇を一掃し、ほんの一瞬ではあるが、ベリベラ・ベルの姿が浮かび上がった。この一瞬の好機をみすみす逃すクニキリではない。たとえ【混乱】していても標的を捕捉できないようでは魔王軍の幹部は名乗れない。


 ほぼ反射的にクナイを投げつけていた。


 再び闇に沈んだベリベラ・ベルだったが追尾するクナイからは逃れられなかった。


「くあうっ!」


 手応えあり。


 左腿を直撃し、シスター服を破いて深々と肉をえぐった。


 全体のダメージポイントからしたら大した痛みではないだろうが、突き刺さったままのクナイは確実に足の動きを鈍くする。


 クニキリから仕掛けずとも、向こうの攻撃を封じ続けるかぎりこちらの負けはない。


 また、《影法師》の効果で、待機しているだけで体力は自動回復しており、HPはすでに全回復していた。


 さあどうする? 闇に潜んだまま膠着状態を続けるか。


 それとも、玉砕覚悟で攻撃に打って出るか。


(拙者はどちらでもいいぞ。時間を掛ければ不利になるのはてめえらだ)


 やがて神父を打ち倒したナナベールが合流するだろう。そうなれば、ベリベラ・ベルの勝機は万に一つもなくなる。


(そら。てめえに残された道は一つだろうが。仕掛けてこいよ)


 あくまで待ちの姿勢を貫くクニキリの、――背後。


「紡げ――《シャドークロー》」


 ベリベラ・ベルのいる方角とは正反対からの魔法攻撃。


 飛んできた影の手が脇腹をえぐり取っていく。思わず苦悶を漏らした。


「ぐう……ッ」


 カウンタースキル《影法師》発動!


 攻撃をしてきた敵に向けて自動的にクナイを投げつける。


 闇の中に吸い込まれていったクナイだが、床や石柱にぶつかることなく目測よりもだいぶ手前の空間で柔らかい何かに突き刺さった。おそらく人体。手応えは右肩。


致命打でなかったのは残念だが、もう一方の標的が仕掛けに食いついてきたことに内心でほくそ笑む。


(てめえらのこと忘れていたわけじゃないんだぜ。拙者の部下を真っ先に殺してくれた礼はきっちりさせてもらう)


《影法師》の反撃対象は無差別的であり、当然これまで様子見に徹してきた魔導兵①②③にも適用される。


 四方を魔法使いに囲まれている状況でありながら、クニキリは怯むどころか逆に闘志に火が付くのだった。



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