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暗闇の罠


 闇の中を走る音。立ち止まり、斬撃が轟く。


 同時に、下忍①のキャラのやられモーションが動いた。


 テキスト欄に『王宮兵①の攻撃! 下忍に「42」のダメージを与えた!』という表示が流れる。


――――――――――――――――――

 下忍①    LⅤ.10

        HP  57/99

        MP  15/15

        ATK 38

――――――――――――――――――


 王宮兵①の居場所を把握した。下忍①が向かった先はフィールド上の右上だ。時計でいうところの一時の方角。長椅子の間から出てきたと思しき王宮兵のナンバリングは「①」。この配置は既製版と同じ。他も同じなら時計回りの順に①②③④⑤が配置されているはず。


 またもや闇を駆ける音。


 斬撃。


 下忍②に王宮兵②が攻撃した。ダメージは『40』。


 下忍②がいる位置はフィールド上の真ん中右。三時の方角。


 それからも次々と王宮兵の位置が特定されていった。――六時の方角に王宮兵③。八時の方角に王宮兵④。十時の方角に王宮兵⑤。


 全部既製版の配置と一緒だ!


 お兄ちゃんはこのフィールドの配置をいじっていない可能性がある――!


 魔導兵は元々既製版には登場していなかったので参考にしない。


 サンポー・マックィンの配置は固定。


 ここまで変更がないってことはおそらくベリベラ・ベルの初期配置にも変更はない!


「わかった! ベリベラの居場所はあそこだ! 行け、クニキリ!」


『御意』


 じりじりと移動を刻んできたクニキリを大移動させる。移動範囲が広いクニキリはこのターンで一気に十マス動かした。向かうは五時の方角。礼拝堂の入口脇にある長椅子の真横だ!


 ベリベラ・ベルはそこにいる!


 ここ、というマスの隣のマスに到達する。予想通りなら移動を終えたクニキリに『攻撃』のコマンドが表示されるはず。


 表示されたコマンドは――、


―――――――――

 ◇『待機』

  『忍法』

  『アイテム』

―――――――――


 あ、あれ? 『攻撃』コマンドがない? どうして!?


 ま、まさか、ベリベラの居場所はここじゃない!?


 でも、移動は絶対にしていない。闇の中でした足音は五つ。そのすべてが王宮兵のものだった。それは下忍への攻撃でも明らかだ。


 ……待てよ。聞こえた足音すべてが王宮兵のものだったなんて言い切れなくないか?


 ターンが三巡して五人の王宮兵がそれぞれ三回移動した。つまり、足音の合計は十五回だ。しかし、この暗闇の中で誰がどう動いたのか知る術はない。


 動いたのは本当に王宮兵だったのか。本当に三回動かないと会敵しない距離にいたのか。もしどこかにブラフがあったなら、この十五回の足音のうちいくつかはベリベラの移動音だった可能性も出てくる。


 ベリベラはどこにいる?


 それに、サンポー・マックィンはどうして光魔法を使わない? もう使ってもいい頃なのに。


 クニキリを『待機』させ、下忍たちをそれぞれ王宮兵に反撃し、距離を取って行動終了。


 二回分の『待機』があり、そして――。


《シャドークロー》


 闇属性魔法が放たれた!


『ベリベラ・ベルの魔法攻撃! 下忍⑤に「46」のダメージを与えた!』


――――――――――――――――――

 下忍⑤    LⅤ.10

        HP   7/99

        MP  15/15

        ATK 38

――――――――――――――――――


 クニキリの部下は闇属性の魔族だ。闇魔法には耐性がある。下忍だからこのダメージで済んだと言える。もっとも、《シャドークロー》は低位人撃魔法。上位互換の魔法でこられたらいくら下忍でも瞬殺されていたことだろう。


「ていうか、下忍⑤!? てことは何!? ベリベラがいるのは十時の方角ってこと!?」


 神父のすぐ近くかよ!


 最初からその近くに配置されていたのか、はたまた王宮兵に紛れてそこまで移動したのか。


 ともかく、ベリベラの大体の位置がわかった。


 あとは神父の光魔法で居場所を特定するのみ。


 そのとき、


《シャドークロー》


『魔導兵①の魔法攻撃! 下忍⑤に「30」のダメージを与えた!』


『下忍⑤がやられました!』


 なによそれ……!?


 魔導兵①が闇魔法? しかも、ベリベラと同じ《シャドークロー》って。


 しかもしかもッ、ベリベラと同じく下忍⑤を攻撃してんじゃん!? どういうつもり?


 その後、一回の『待機』を挟み、パイゼル、ナナベールと順番が回ってきた。パイゼルは前進。ナナベールは無駄に動かさない。


 四巡目が終わり、五巡目が始まった。クニキリのターンが回ってきた。


「どうして魔法使わないかなあサンポー!?」


 バトルが始まってまだ一度もフィールド上に光が当たっていない。正規版では三ターンに一回は確実に光魔法を使ってきたというのに。


「そうか。同じ属性持ちの魔導兵を同じ攻撃範囲内に置いておけば、どっちがベリベラかわからなくなる……! たとえ闇雲に攻撃して当たったとしても、ベリベラを引き当てる確率は二分の一だ!」


 いや、他の魔導兵②③をその場に置いておくだけで確率は四分の一にまで落ちる。サンポーが光を照らさないかぎりそれがベリベラ・ベルかどうかの判別がつかない。


 暗闇フィールドを暗闇のままで展開する。それが奴らの狙い……!


 絶対お兄ちゃんの入れ知恵だ。


「こんなの勝てっこないじゃん!」


 やべえ……。


 どうしよう……。



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