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様子見


 クニキリとナナベール、それにそれぞれの部下たちがフィールドの中央に固まって配置された。


 まずは敵の位置を把握したいところだね。


 この暗闇フィールド内では味方キャラと神父の勇者サンポー・マックィン以外の何もかもが不可視になっている。画面上ではクニキリやナナベール、部下たちの二頭身キャラが真っ暗なフィールドに浮かぶように立っている。


 唯一見える地面はサンポー・マックィンがいる祭壇周辺だけである。これはサンポー・マックィンが光属性をもっているからって理屈だろう。


 そして、サンポー・マックィンが光魔法を放った直後、暗闇が光に照らされて敵や障害物の姿が浮かび上がるっていう仕様だ。フィールド上を視認できるのはこの瞬間のみ。光るのは一瞬だけだしその範囲も狭いから確認するだけでも大変なんだ。


 将棋やチェスで相手の駒が見えない状態でやっている――みたいな感覚。私、将棋もチェスもやったことないけど。たぶんそんな感じじゃないかな。


 地形と敵の位置を把握するためにはサンポー・マックィンの魔法を甘んじて受けなきゃならない。ね? この西門フィールドがどんだけ大変かわかるでしょ?


 サンポー・マックィンの姿だけは見えているから先に狙いたいところなんだけど、サンポー・マックィンを殺しちゃうと他の敵の居場所がわからなくなる。サンポー・マックィンは最後まで殺しちゃ駄目なんだ。だというのに遠距離魔法を連発してくるからさー、我慢して耐久しなきゃならんってわけ。ったく、このフィールドを考えたひとマジ鬼畜だわ。


 でも、私はすでに知っている。どこにどんな障害物があって、敵キャラがどこから来てどんな攻撃をしてくるのかも。


 懸念があるとすればお兄ちゃんがどれだけ設定をいじってくるかだ。


 これまでの傾向からして、フィールド上に障害物を増やしたり減らしたりすることはできても地形を大きく変えることはできないみたい。だから、ここの礼拝堂みたいな造りはそのままの可能性が高い。


 中央に大きな通路があって左右に横長の座席が並んでいる、一般的な礼拝堂。

移動できる床は通路と座席の間のみ。この座席間の端っことかに宝箱が用意されてあったりするんだ。正規版ではね。


 ……でも今回、宝箱はたぶんない。天然の洞窟フィールドなんかとは違って、ここはお兄ちゃんのホーム。わざわざ私のためにドロップアイテムを用意してくれてるはずないもんね。あっても絶対トラップだね! もうバレバレ! わかってるんだから!


 なので今回、宝箱は全部無視。


 勝利条件の【勇者の撃破】を優先していく。


 となれば、必要な位置情報はシスターの勇者ベリベラ・ベルのみ。


 作戦はこう。ベリベラの居場所をまず見つけ出して速攻で叩きにいく。


 ベリベラ撃破後は取って返してサンポー・マックィンを襲いに行く。それで完了! 完璧! クリア! ざっつらいと! 私ってば冴えてるぅ!


◇◇◇


 クニキリのターンからスタートだ。


 クニキリは移動範囲が広いから索敵に有利だけど、防御力がそんなに高くないのであんまり突っ込みすぎるとやられる危険性がある。相手の攻撃射程圏内に入らないギリギリのところを攻めていく。


 既製版では、ベリベラ・ベルはサンポー・マックィンとは真逆の位置にいる。ゲーム画面で見たとき祭壇側を奥とすれば、入口側の手前にいることになる。


 クニキリをベリベラがいるであろう入口側に五歩前進させる。


 お次はクニキリの部下、下忍たちだ。①~⑤の下忍たちを順に移動させていく。今回、こいつらもレベルが『10』になっているから、気力ゲージがMAX状態のときクニキリとの連携スキルを発動させることができる。ま、そんなに強くないんだけどね。


 下忍たちも索敵に使う。むしろ、こいつらをバンバン動かしてサンポー・マックィンの標的になってもらいたい。サンポー・マックィンが光魔法を撃たないことにはベリベラは見つけられない。五方向に拡散させた。


 敵のターン。タタタッ、と闇の中を走る音だけが響く。王宮兵だと思うけど、プレイヤーにはデフォルメキャラが何一つ見えない。


 駆け足が五回鳴り響き、『待機』の間がこのあと五回続いた。おそらく勇者二人と魔導兵三人だろう。


 こっちのターン。画面が移動しパイゼルの二頭身キャラを中心に捉えた。


 メイド服の女の子の立ち絵が現れた。


『あの~、ナナ様? 私、どうしてここにいるのかいまだにわかってないんですけど』


『そりゃおまえ、主人に付き従ってこそのメイドだろ? 主人の行くところには必ずついていくもんだ。たとえそれが戦場であってもな』


『き、聞いてませんよ~!』


『言ってねーもん。ま、せいぜいがんばれよ~』


『うう~、私、戦いってあんまり得意じゃないのにな……。――でも、やるからにはナナ様のお役に立ってみせます! 見ててください! ナナ様!』


 移動する。攻撃力も防御力もあるパイゼルは神父の許へ。命中率が低いのが玉に瑕だけど、当たれば一撃一撃がクリティカルヒットだ。


 最後にナナベールの番。


 うーん……。


 うん。やっぱりナナベールはスタート地点で待機っと。敵の出方を見てから動いたほうがよさそう。ナナベールの魔法はステータス異常を起こすものが多いから、こっちから敵に近づくよりも、近づいてきた敵にその手の魔法を掛けたほうがきっといいはず。


 二巡目も同じようにしてそれぞれのキャラを移動させる。


 敵も王宮兵のみ動かしてあとは待機。次の三巡目辺りでクニキリか下忍が会敵しそう。


 さて、序盤は様子見。


 敵はどう出る?



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