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葬送


 わずか数分ほどの戦いだった。


 勇者は散り、魔物はすでに立ち去った。


 やがてオプロン・トニカの亡骸の左右に二つの影が浮かび上がった。《ウォール・オブ・サウンド》で《不可視》となっていた二人の魔導兵である。


 オプロン・トニカが最期にした命乞いが彼の家族と、そしてこの場に居合わせた彼女らのことであったのは明白である。目に頼らない殺戮蝶に二人の息遣いが聞こえていないはずがなく、わざわざ見逃したのはオプロン・トニカの嘆願を聞き入れたからに他ならない。


 守れなかった。任務であったにもかかわらず。


 守られてしまった。それどころか、命を賭して救われた。


 ボロボロと崩れ落ちる元勇者の消し炭に縋りつく。


 城郭外の荒野の只中で、泣きじゃくる声が木霊した。


◇◇◇


 ようやく追いついたときにはもうすべてが手遅れだった。


 首が転がっていないかと辺りを見渡してみたが無駄だった。もうないのだと諦めた。それでも遺体の身許を割り出すのは容易であった。王宮兵第二兵団のシンボルが刻まれた騎士の鎧、歴戦を思わせる年季の入った長槍。筋骨隆々にして満身創痍の肉体がただの一兵卒のものであろうはずがない。


 槍聖サザン・グレーは戦死した。


 魔導兵の少年二人は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


 無力であったことを痛感する。この先も戦っていく魔王軍との圧倒的な戦力差も。


 悔しくないわけがなかった。


 城郭外の荒野の只中で、誰かが静かに泣いていた。


◇◇◇


 いやっふぅー。


 魔王ちゃん大勝利ィー!


 予定通り勇者二人をぶっ殺してやったぜい!


 途中でリーザとグレイフルの相手を取り替えるとか、かなりグッジョブな采配だったんじゃね?


 さっすが私! マジで魔王に向いてんじゃねーの? マジウケるんですけどw


 お兄ちゃん悔しがるかなー?


 計画の邪魔されちゃってさー。


 ぷぷぷ。ざまぁ!


 いやー、気分痛快爽快!


 苦戦した後の逆転勝利ってのがまたいいよね!


 やっぱりさ、戦いってのは相性なわけよ。


 最初からサザン・グレーにはグレイフルを、オプロン・トニカにはリーザをぶつけていればここまで苦戦しなかったんだよねー。


 ま、たとえ相性が悪くったって最後に勝つのは私だけどね?


 余計な手間を取らされたってのが気に食わないだけでさー。


 ま、私に掛かれば?


 誰が来たって怖くない?


 ってわけよ!


 次も勝つよ!


 さあて、今度は『西門の戦い』でもやっていこうかな!


お読みいただきありがとうございます!

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