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特殊ステージ『南海沖――呪われた航路』


 お次はリーザ・モアが持ってきたミッション『南海沖――呪われた航路』を選択。


 黒い翅を広げたリーザ・モアの立ち絵が大海原を背景に現れる。空から海中に沈んだ難破船を見下ろしている格好だ。


『おっきな船ですこと。客船かしら。貨物船にしては外観が凝っていますし。人間どもはこの百年で贅沢することを覚えたようね。それは魔族か、人間の中でもごく少数の王族にしか許されない特権でしたのに。まったく――――虫唾が走るわ』


 リーザは糸目で、口許くらいしか表情が作れないからいつも笑っているようにしか見えないけれど、声と台詞に迫力があるとそのギャップについドキっとさせられる。


 この南海沖はどこの国にも含まれない海域で、かつては魔族が支配していた海だったという設定である。


『商船も兼ねているならマジックアイテムがあってもおかしくなさそうね。水に濡れるのは嫌だけど、これも魔王様のため。調査いたしましょう』


 海に潜る。


 魔族であっても呼吸ができなければ死んでしまうが、人間より肺活量は桁違いに多い。無呼吸状態でも一時間以上は陸の上にいるのと変わらない活動ができる。


『泳ぐのなら空のほうが得意だわ。水中はやっぱり動きづらい』


 船の中に入る。


 沈没してどれくらい時間が経ったのか、すでに魚たちの棲家と化していた。


『あら、可愛い。後で食べてあげますね』


 船内を泳いで渡っていると、目の前に大蛸が現れた。


 通路を窮屈そうに塞いでいる。


『魔族……ではないわね。天然モノのオオダコのようね。――きゃあっ!?』


 大蛸の触手に捕らわれる。


『くっ……。放しなさい! 燃やすわよ!』


 触手に巻かれて巨乳が盛り上がったリーザのイベントCGが現れた。


 はい。サービスシーンいただきました!


 別の幹部がミッションを行っていたら、このCGは回収されないのだ。


 ギチギチと蛸の触手に締め上げられるリーザ。


 船の材木を粉々に握り潰す触手の握力の前に為す術はない。


 だが、現れた立ち絵のリーザの目は相変わらず閉じたまま。


『……』


 それどころか、表情はますます無機質なものになっていく。


『蛸風情が魔王軍の幹部であるワタクシにいつまで触れているつもり? 身の程を知りなさい。焦がすわよ』


―――――――――――――――――――――

 特殊ステージ『南海沖――呪われた航路』

 勝利条件【大蛸の撃破】

―――――――――――――――――――――


 海中フィールドが展開される。


 リーザ・モアの二頭身キャラは大蛸に捕まった状態からスタート。


 リーザの部下である妖精シルフ五体が通路の端に配置された。大蛸までの通路の間には海洋生物が障害物となって漂っている。


 ステージの難易度はイージー。ただし、特殊な戦闘なので油断は禁物だ。


 まず部下のシルフは、リーザのカリスマ値が低いために命令することができない。オートで動き回るため一直線にリーザを助けにくるとは限らない。


 リーザは、捕まってはいるが大蛸とはマス目が隣接した状態なので、常に攻撃ができるのだが、それは大蛸も同じで、毎ターン必ず攻撃を食らってしまう。つまり、リーザのHPが0になるのが先か、大蛸を撃破するのが先かという、耐久バトルとなる。


 運がよければシルフたちが大蛸を囲んでボコってくれるんだけど、あまり期待できない。


 プレイヤーには、リーザにどの魔法を使わせて大蛸により効率よくダメージを与えられるか、その判断が試されるのだ。


 といっても、今はまだ使える魔法はそれほど多くないので、選択肢は少ない。ちょっと考えれば簡単に正解が導き出せるようになっている。


 リーザのターンが回ってきた。


【魔法】を選択し、【呪文】が並ぶ。


―――――――――――

◇ ファイアーボール

  フレアウェーブ

  エアーズアロー

  ウィンドスピア

―――――――――――


 火属性魔法と風属性魔法。


 それぞれ敵単体攻撃か、広範囲攻撃の二種類が揃っている。


 敵は海の生物だし、単純に考えて火属性魔法に弱いことはすぐわかる。問題は単体攻撃か、範囲攻撃かのどちらかだ。


 大蛸は体積が大きいために的も広い。範囲攻撃の方が威力はありそうだし、《フレアウェーブ》を選びたくなるところだけど。


 正解は《ファイアーボール》だ。


 それは実際使ってみればわかる。


『==聞け! 火の精霊よ! 我を監視する者よ!==

 ==孤独を排し、我の胸を暖めよ!==

 ==永久の眠りから目覚め、不正を殺せ!==

 ==ローセル、アングル、シュール、ラングラン、コギュ、ラ、マルタ==

 ==紡げ――《ファイアーボール》!==』


 リーザが呪文を詠唱し、大蛸に《ファイアーボール》が炸裂する。

 大蛸にダメージを与えた!


『15』


 大蛸の締め付け攻撃がリーザにさく裂する。

 リーザ・モアにダメージを与えた!


『7』


――――――――――――――――――

 リーザ・モア LV.  1

        HP  28/35

        MP  17/20

        MAT 18

――――――――――――――――――


 大蛸のHPは???表記だが、《ファイアーボール》を五回食らわせれば倒せる。リーザが常に先攻を取れるので、ギリギリ勝てるという寸法だ。


《ファイアーボール》の消費MPは『3』。大蛸に食らわせられるダメージポイントは大体『13』から『15』。

《フレアウェーブ》を使った場合、消費MPが『5』で、ダメージポイントは《ファイアーボール》とさほど変わらない。


 ダメージは変わらないのにMPだけ差が出てくる。つまり《フレアウェーブ》ばかり使い続けていると大蛸を倒す前にMPが枯渇してしまうのだ。魔法が使えなくなると物理攻撃が弱いリーザに勝ち目はない。


 シルフが漂う魚や海藻に攻撃を加えて経験値を獲得していく。やはり当てにならない。


 リーザひとりで大蛸退治だ。


『はあああああ――――ッ!』


 五回目。《ファイアーボール》が大蛸のHPを削った。


『【大蛸】を撃破した!』


 戦闘終了。


 リーザが触手から解放された。


『嫌だわ、まったく。体中ベトベトじゃない。あー、もう、早く帰りたい! お宝? 調査? いいわよ、そんなの。面倒臭いったら!』


 魔王様のためと言っていたのに、この変わりよう。


 気分屋なのがリーザの特徴だ。


『あら? タコの後ろに何かあるわね』


 なにかしら? と、探ってみると、そこには宝箱があった。


 中にはマジックアイテム【フェニックスの火種】が入っていた。


―――――――――――――――――――

【フェニックスの火種】を手に入れた!

―――――――――――――――――――


「よっし! 予定通り!」


 クニキリを仲間に加え、【フェニックスの火種】を入手した。


 あとは魔石と、もう一つ別のアイテムを手に入れさえすれば――


「あの計画を進められる!」


 お兄ちゃんをぎゃふんと言わせるための一手だ。


 待ってて、お兄ちゃん!


 すぐに殺してあげるからね!


「あはははは!」


『うふふふふ。魔王様、お喜びになるかしら。海中まで調査した甲斐があったわね』


 リーザの笑い声と見事にハモってしまった。


―――――――――――――――――――――――

 特殊ステージ『南海沖――呪われた航路』終了

―――――――――――――――――――――――


 残存数

 魔族 6

 大蛸 0


 勝利 魔族(殺戮蝶リーザ・モア)

 敗北 海洋生物(大蛸)



◇◇◇


 ちなみに、このステージにはあと二回ミッションが残っている。沈没船はやがて幽霊船となり、お次はゴースト退治を行うというミッションに進化するのだが。


 それはもっとレベルが上がってからのお話である。


お読みいただきありがとうございます!

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