仕切り直し
戦闘終了のファンファーレが鳴り響く。
――槍聖サザン・グレーを撃退した!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
第一章第四ステージ『王都アンハル~勇者討伐~ ―北門の戦い―』終了
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ふう。
とりあえず、最悪の展開だけは免れた。
サザン・グレーを倒せなかったのは痛いけど、リーザを失うわけにいかないから。痛み分けで終われたのは現状ではベターだ。
それにしても、どうしてサザン・グレーは撤退なんてしたんだろう?
それまで置き物のようだった魔導兵①と②が動いたと思ったらいきなり戦闘終了なんだもん。
もしかして、サザン・グレーのHPが半分を切ったから?
中ボスとの対戦で、一定時間が過ぎたり、HPをある程度減らすことができたらステージクリアっていうパターンは、RPGではよくあるし、この【魔王降臨】にも確かあったはずだ。
まあ、設定したのはお兄ちゃんだろうけど。
でも、何でだろう……。
うーん?
『魔王様、お願いがあります』
「んや? なに、リーザ?」
考えごとから意識を引き戻される。
画面上にリーザの立ち絵が現れた。
『先ほどのあの勇者の後を追わせてくださらないかしら。今度こそ確実に仕留めてご覧にいれますので』
「え!? だ、駄目だよ! リーザのHPもMPもすっからかんだし、あいつと相性最悪だし! またこんなバトルすんの懲り懲りなんだけど」
『けれど私、我慢なりませんの』
リーザのデフォルメ二頭身キャラがフィールド上を動きだし、サザン・グレーが走っていったほうへと向かう。
――って、おいおい。
「勝手に動かないでってば!」
『魔王様といえど邪魔立てするなら許しませんわ』
あーもー。頑固なんだから、リーザは。
ていうかさー、このゲームのキャラたちみんな、どうしてプレイヤーの言うこと聞いてくんないの?
それだけでハードモードじゃん。もー。
「わかったよ! わーかーりーまーしーたーっ! その代わり、一旦止まって! アイテムでHPとMP回復すっから」
HPを回復する『ハイポーション』とMPを回復する『マジックポーション』をリーザに使う。
全回復。
このままもう一戦しようと思えばできなくないけど。
でも、今のままだと部下がいない状態なんだよね。やっぱり一旦シミュレーションパートに戻って編成し直したいなあ。
……ハア。
それができたら苦労しないってね。
「リーザ、行くのはいいけど、今度は私の指示に従ってもらうからね。マジでヤバくなったら撤退するから。わかった?」
『……仕方ありませんわね。それで手を打ちましょう』
ま、なんだかんだで聞く耳はあるんだよね。魔王に対してだけは。
聞き逃さなかったよ。ピンチのときに呟いた、お父さま、ってセリフ。
まったくもー。リーザったらツンデレなんだから!
お読みいただきありがとうございます!
よろしければ、下の☆に評価を入れていただけると嬉しいです!




