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魔軍要塞ハザーク砦


 戦闘終了のファンファーレが鳴り響く。


 ――商人ポロント・ケエスをやっつけた!


――――――――――――――――――――――――――――――――――

 第一章第二ステージ『商業都市ゼッペ――商人ポロント・ケエス』終了


 勝利 魔族(女王蜂グレイフル)

 敗北 人類(勇者ポロント・ケエス)

――――――――――――――――――――――――――――――――――


「――お、おう……」


 理想的な形での幕引き。グレイフルは失われず、短時間でゲームをクリアできた。


 ていうか私、何もやってなくね?


 ほとんどNPCグレイフルがひとりで勇者をやっつけたじゃん。


 しかも何? 固有スキル《王台》って? そんなの公式にも載ってないっての!


 強くなるのは嬉しいけどさー、勝手に強くなるなよなーっ!


 育てる楽しみが減るわっ!


 ……でもまあ、それくらいしてもらわなきゃハンデにならないか。今回のステージもお兄ちゃんの策略どおりって感じだったし。


 そう、まるでグレイフルが暴走するのを見越していたかのように敵キャラが配置されていた。


 見越してたっていうか、【グレイフルが暴走する】っていうイベントを足したのがお兄ちゃんなんじゃないの?


 だったらそれ、もうゲームマスターじゃん!?


 めっちゃズルイ!


 めっちゃ楽しそう!


「お兄ちゃんめ、絶対向こうでエンジョイしてやがるぜ……っ」


 それはともかく、さっきのバトルフィールドの中にお兄ちゃんは居たのかな?


 バトルの中で姿を見せてくれなくちゃこっちは殺しようがないんだけど。


 ふーむ……


 お兄ちゃんの性格を考えるに、まだまだ序盤のこの段階でそんな戦いは挑んでこないはず。やるならもっと準備を整えてから。もっと舞台が整ってから。


 私も同じ性格だから、よくわかる。


 仕掛けるなら、早くても第一章のラストステージだろう。


 たぶんそれまでにいろいろとヒントを落としてくれるんじゃないかな。


 お兄ちゃんがどのキャラなのか――というヒントを。


 人類側の誰かか。もしかして、魔族側にいる誰か?


 まだまだ情報が足りない。


 さあ、次だ。ちゃっちゃか物語を進めよう。


 早く会いたいよ、お兄ちゃん。


◇◇◇


 アドベンチャーパート――


【商業都市ゼッペ】を滅ぼした魔王軍だったが、都市を征服しただけで占領することはしなかった。そこに住む市民たちは昨日までと同じような暮らしができた。しかし、都市の外に出ることは許されなかった。


 軟禁状態である。それが意味するところは巨大な人質の檻。


 また、魔王の目的は神の討伐と、魔族による世界支配である。人類を根絶やしにするのは簡単だが絶滅させたいわけではない。人類はやがて魔族のために働く奴隷として飼うつもりでいた。それまでは徒に数を減らすことなく、状況に応じて利用する腹積もりだ。


 脆弱な人間の管理は難しい。ならば、好きに遊ばせておくほうが統治は容易い。


 というわけで、アーク・マオニーの影を放ち四六時中市内を監視するに留めて、基本的には放置した。ゼッペに固執する意味はないし、それほどこの都市に価値はない。


 人類に魔王軍の存在を知らしめることができればそれでよかった。


『――おそらく神が黙ってはいまい。すぐに別の勇者を送り込んでくるはずだ』


『攻めるばかりじゃなく、向こうの出方も窺う。そうすることで見えてくるものがある。そういうことかしら、魔王様?』


『そのとおりだ、リーザ・モア。神の居場所、そして戦力がわかれば今後の戦い方も決められる。想定にあわせた準備を進められる。何より、人間の世界が混乱に陥れば見えてくる穴もあろう』


『人間は一枚岩ではありませんものね』


 百年前の人魔大戦で学んだことだった。


 結集し力をあわせた人類は強敵だ。しかし、結集するまでが長かった。さらに、結集したことで生まれた小競り合いにより何度となく分断していた。各地の勇者と各国の王で会議を重ね連合軍を誕生させたことで、ようやく人類は一つにまとまったのである。


 つまり、勇者と王さえ亡き者にすれば、人類は烏合の衆のままでしかなくなるのだ。


 人類の希望を取り除く。神を討伐するのはその後でいい。


【軍議の間】にゴドレッド配下のオーガがやってきた。


『報告します! 人間の兵たちが列をなしてまっすぐこちらに向かっております!』


『ほう。早速掛かったか』


 魔王たちは今、アンバルハル草原に建設した【魔軍要塞・ハザーク砦】を拠点にしていた。


 人類にプレッシャーを掛ける狙いもあった。まんまと挑発に乗ってくれたようだ。


『その中に勇者もいれば探す手間も省けるのだがな』


 すると、側に控えていたアーク・マオニーが一旦影に潜り、しばらくしないうちに戻ってきた。


『魔王様♪ 魔王様♪ 勇者がいました♪ あの中に勇者がいましたよ♪』


『好都合だ。誰ぞ、迎え撃て。今度は一匹残らず殲滅せよ』


 魔王軍の力を見せ付けるときがやってきた。


 ゴドレッドが一歩進み出て具申する。


『魔王様、その役このゴドレッドに仰せ付けくださいますよう』


『よかろう。鬼武者よ。存分に腕を揮うがよい』


『ははっ』


―――――――――――――――――――――――――――――――――

 第一章第三ステージ『魔軍要塞・ハザーク砦――剣聖バーライオン』

―――――――――――――――――――――――――――――――――


 魔王軍初めての迎撃戦がはじまる――



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