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違和感


 伏兵として潜んでいたリリナ、ルーノ、クレハ、アザンカ、レティア、エスメの六人が合流した。勢揃いしたヴァイオラ親衛隊による連携の取れた魔法攻撃で、次々にキラービーを仕留めていく。


 白いドレス姿の敵幹部をようやく射程に収めたとき、敵幹部が疾風の如くポロント・ケエスの許へと向かっていったので、ヴァイオラ親衛隊の戦いは思いがけず終わりを迎えた。


 最初から戦場に立たされていたロアとラクト、そして最高齢であるジャンゴは気疲れからか、最後のキラービーを倒した直後にへなへなと腰を抜かした。


「な、なんとか乗り切ったね……」


「は、はは……、な、情けないぞラクト。ぼ、僕はこれくらいへっちゃらだ!」


「自分も腰を抜かしておるくせに何を言っておるんじゃ?」


「あ、あなたにそのようなこと言われたくないぞ、ジャンゴ氏! 隙を見てはずっと逃げ回っていたあなたにはな!」


「老体に鞭打って戦場に立ったのじゃぞ? ちょっとくらい休んでもよいではないか。路地裏に逃げ込むよりはよほどいい」


「なっ!? ぼ、僕を愚弄するかあ!?」


「やめときなって、ロアっち。ジャンゴ爺ちゃんに口ゲンカで勝てるわけないんだから」


「おーい、そこの男ども! さっさと立ちなさいよね! まだ戦いは終わってないわよ!」


 レティアが男たちの背中を爪先で蹴りつける。ロアは激昂し、ラクトは「はいはい」と立ち上がり、ジャンゴはレティアに蹴られて「ぬほほ」と気持ち悪い声を上げた。


「僕たちは先陣を切ったのだぞ! 少しは労わったらどうなんだ!?」


「しょうがないでしょう! それがアニの作戦だったんだから! 嫌なら昨日の作戦会議のときに言えばよかったのよ! 当日になって文句を言うなんて、男のくせに女々しいったらないわね!」


「なんだとーっ!」


「はいはい、ロアっち落ち着いて! 口ゲンカ弱いんだから! レティーもさ、あんまり意地悪いわないでよ。こっちも戦いが一旦途切れて気が抜けちゃったんだ。ちょっとくらい大目に見てよ」


「戦場のど真ん中で何いってんの? そんなに死にたいならいつまでもそうしていれば? 敵はまだまだいるのよ」


 ポロント・ケエスがいる方角とは反対側――町の入り口側からは新たに三体の敵幹部がこっちに向かって進行しているという。


 いまだ姿は見せないが、どす黒いプレッシャーは遠く離れたこの場所にいてもビンビン伝わってきた。


「クレハちゃん! 怪我をした王宮兵さんたちの手当てをしに行こう!」


「う、うん! ルーノ、君! わ、私、それ、くらい、しか、できない、し……!」


「ううん、十分だよ! 僕たちの中で一番治療がうまいのクレハちゃんだもん! クレハちゃんが居てくれてよかったってみんな思ってるよ!」


「ルーノ君……」


 前髪で目許を隠していても、火照る頬までは隠せない。クレハは顔を見られまいと俯いたまま、ルーノと手を繋いで負傷者の許へ走っていく。


「ねーえ? そろそろ移動しなくちゃいけないんじゃなーい?」


 エスメの指摘を受け、アザンカは周囲を警戒した。


「そうですよね。あの、リリナさん、アニさんの作戦だとこの後……」


 リリナは全員の無事を確認してほっとしたのも束の間、キッと表情を引き締めた。


「はい。私たちの役目は終わりました。直ちに撤収します」


「でも、敵はまだ残っていますが……」


 敵幹部グレイフルを素通りさせてしまった負い目もあり、アザンカは後方から来る新たな敵幹部をここで迎え撃ったほうがよいのではないかと悩んでいた。


 責任感あるリリナもそれには同意見だが。


「アニさんの作戦どおりに動きましょう。きっと、それが一番正しいはずですから」


 キラービーを優先的に殲滅し【女王蜂グレイフル】を討伐する――それがヴァイオラ親衛隊に課された使命であった。しかし、アニは失敗してもいいと言っていた。それよりも、当初から練られていた作戦を邪魔されるほうがアニにとって都合が悪い可能性がある。


 ここまでが想定内ならこの先も予定どおりに動くべきだ。


「みんな! 負傷した兵士の方々に肩を貸してあげて、すぐにこの場から離れてください! 急いで!」


 各々が撤収していく中、リリナは町中に奇妙なものを見つけた。


 路地裏の物陰や通りを見下ろす建物の窓――そこに無数の無機質な目を見つけた。


「?」


 なんだろう……


 なんだか気味が悪い……


 何か嫌なことが起こりそうだと、リリナは予感した。



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