いつもの初詣(オネエさんとお姉さんのロマンシス)
一月二日。まだ神社には出店が並び、参拝客もやって来る。
楽しげな賑わいが、年始を彩る。
「今年こそ、運命の相手をつかむわよ~」
ジョセフィーヌが、鼻息荒く言った。艶やかな臙脂の地に、金の鶴が踊る着物を品よく見事に着こなしている。
「アンタ、毎年願掛けしてない?」
隣の映子は、ダークグレーのパンツスーツを粋に着こなし、落ち着いた雰囲気。細身のブラックロングコートが、すらりとした彼女をよりいっそう引き立てていた。
「うるっさいわね。……そっちは?」
「無病息災」
参拝の列が進む。あと二人分進めば、彼女たちの番だ。
「そっちもいつも通りじゃないのよ」
「だから、いつも健康なの」
「なるほどね。神様も、アタシの願いも叶えてくれないもんかしらね」
「運命の人が、まだこのへんに来てないから無理なんじゃないの」
「そこは神通力的なあれそれで、このへんに来るようにして欲しいわ」
「あれじゃない? それはあっちの願い事と相反するとか?」
「例えば?」
「地元で就職とか。その会社で活躍するとか。そういう願い事」
「ああん、今年こそ新天地で挑戦とか頼んでちょうだいよ運命のひと~」
「ふふっ、そうだといいねぇ」
ちゃりりん、がらんからんがらん
パンパンッ
新年の空気。初詣のざわめき。屋台のトウモロコシの、いい匂いがする。
隣には、気心の知れた友。
いつも通りの、お正月。
「……さ、お参りも済んだし。屋台まわろっか」
「アタシ、トウモロコシ食べたーい」
「アタシも。あ、あとたい焼きかな」
「いいわねぇ」
二人でくっついて、もう願い事より食い気に意識が回る。
いつものお正月。
今年も、よろしくお願いねと、ゆるく笑いながら進む。
END.
この二人(『いつも好きな男が自分以外とくっつくオネェさんの話』https://ncode.syosetu.com/n1607ha/)です。仲良し。