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カルミナント~魔法世界は銃社会~  作者: 不和焙
序章 ようこそ愛しき共犯者
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第三話 化け物

 土煙が舞う。コンクリートに走る亀裂が

 その衝撃の大きさを物語っていた。

 周囲からは悲鳴が上がり始める。

 事故か、爆発かと部外者たちが慌てふためく。


 そんな都内の広い車道。

 ポツンと化け物が立っている。

 フシュルルと獣の呼吸をしながら

 まっすぐ路地裏を睨んでいた。

 建物同士の暗がりからアトラスは姿を見せる。


「てめぇ、さっきのやつか?」


 化け物に対話を試みる。魔弾の照準を合わせながら。

 帰ってくるのはうめき声。意味を持たない獣の言葉。

 どうやら対話は不可能らしい。

 アトラスはつぎこそ殺すと覚悟を決めた。

 そのとき――


「ウガシャア――――ッ!!!!」


 叫びとともに化け物が突進してきた。

 腕を鋭く突き出している。

 咄嗟に二発、玉を打ち出す。


 ヒュン ヒュン  ――バキッ!!


 突き出した腕が玉を弾く、いや砕く。

 そのままアトラスは首をつかまえ、

 男の大きな体をもといた路地裏に押し戻した。

 室外機や植木鉢、細い道の障害物を

 (ことごと)く破壊しながら化け物と大男が突き進んだ。


 直後、衝突音が路地裏にこだまする。

 壁にぶつかり怪物の進撃が停止したのだ。

 カハッ!と苦しみながらアトラスは倒れた。

 膝をつき屈む大男を化け物はまだ睨む。


(クッソ! なんでこんな奴がいるッ!?

 防御魔術を平然と貫通してきやがる。

 まともに相手をするべきじゃねぇ。)


 アトラスは新たに光りの玉を三個作り出す。

 しかし、目的は攻撃の為では無い。

 二個の玉をそれぞれ握りしめると、

 残りの一個を化け物の目の前で静止させた。


「――炸裂せよ(ブレイク)。」


 そう唱えると光の玉が化け物の眼前で

 激しい輝きとともに破裂した。

 化け物が気づいた時には既に、

 アトラスは上空へと飛び逃走していた。


 魔法使い――≪魔弾≫のアトラス。

 その身に宿す()()の名は……『光玉制御』。


 自らの魔力をビー玉サイズの光の玉に変換、操作できる。

 光の玉は銃弾で撃たれても割れない硬度を誇る。

 またアトラスはその操作術を極めており、

 その光の玉を飛ばす事で人体の貫通

 加えて、()()()()()()()()()()()()()()


(見たか、化け物! 俺の十八番、光玉飛行!)


 アトラスは光の玉を両手に持ちながら飛ばし、

 自身の巨体を浮遊させた。


 化け物との距離が離れたことを見計ると、

 服の中に追加で十数個の玉を仕込んだ。

 服の中で浮遊する玉は空中の体の姿勢を制御し、

 さらに速度を加速させる。


(封魔局の追っ手もいるかもしれん。

 これ以上目立つのは――)


 ヒュー グサッ!!


 アトラスの肩を、引きちぎられた鉄パイプが貫通する。

 彼は血を吹き出し、痛みで叫びながら落下した。


 建物の屋上に不時着した瞬間、

 彼は化け物が跳躍し接近したことを視認した。

 再び轟音とともに着地したそれは

 すぐさまアトラスに襲いかかる。


「クソッタレがよぉお!! 殺ってやるよぉお!!」


 覚悟を決め無数の玉を両腕と胸元に巻き付ける。


「光玉装甲!! 殴り殺してやらぁあ!!」


 雷が落ちる。ゴングが鳴った。


 化け物が拳を振るう。

 鋭い一撃により光玉の鎧が割れる、が至らない。

 アトラスが反撃する。人体を打ち抜く速度で拳が飛ぶ。

 光る腕が化け物の腹に打ち込まれた。

 しかし、手応えはまるで無い。


「ガァ――――!!!!」


 咆吼に対し咄嗟に距離を取る。

 が、化け物の攻撃が加速する。

 重く、鋭い連撃がアトラスを殺しに飛んで行く。


 ダダダダダダダダダッッッッ!!


 防御がままならない。

 体の玉で空へと飛ぶ。だがもう逃げられ無い。

 すぐに追いつかれたたき落とされる。


 玉を放つ。砕かれる。

 再び飛ぶ。打ち落とされる。

 拳を放つ。正面から、殴り負ける。


 アトラスはあらゆる攻撃を完封され

 ついに地面にたたき伏せられた。


「……ナカ、バヤシ」


 化け物が倒れた大男にまたがり、再び連撃を放つ。


「ウガシャア――――!!!!」


 建物の屋上が砕け、下に抜け落ちる。

 落ちながらも連撃は続いた。

 各階に穴を開けながら、

 最下層に至るまでその猛攻は止まなかった。


「ウアァアア――――ッ!!」


 動かなくなった大男の上で獣が吠えた。

 それは勇ましく、それでいて虚しい声だった。


 やがて……建物の中に雨が降りだした。

 荒い工事で出来た吹き抜け、その最下層まで雨が降る。

 化け物を嘆くように降り注ぐ。



 ――――


 そのとき、化け物の周りを無数の糸が囲んだ。

 化け物が人の気配に気付き振り返ると、

 そこには赤い髪の女がいた。


 女はその橙色の瞳で周囲を見渡すと、

 とても落ち着いた口調で怪物に語りかける。


「さて……これはどういうことなのかな? お嬢さん?」


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