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カルミナント~魔法世界は銃社会~  作者: 不和焙
第一章 負け知らずの敗北者
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第四話 世紀の大戦犯

 ドクター・ベーゼ――通称「世紀の大戦犯」。


 戦争勃発前。

 彼は大きな研究所の所長として名を馳せていた。

 彼の発明した魔法道具、装置の数々は人々を豊かにし、

 彼の人生は輝かしいものになると誰もが思っていた。


 しかし戦争時、

 彼の発明品は多くの人を殺す兵器に化けた。

 それは市民にも多大な被害を及ぼし、

 都市一つを壊滅させるまでに至った。


 魔法連合は研究所を封鎖。

 逃亡したベーゼを指名手配した。

 彼は世紀の大戦犯としてその名が刻まれた。



 ――――


「間違いねぇ。こいつらドクター・ベーゼの配下だ。」


 不審者二人を縛り上げると、

 ハウンドは新人たちに説明する。


「やつは現状『特異点』にカウントされていない。

 だが近頃、奴を慕う配下が増えてきている。

 これ以上影響力を持てば間違い無く『特異点』の

 一人として闇社会に君臨することになるだろう。」


「ならここで捕らえましょう。

 配下がいるなら情報は正しかったと見て良い。」


 アランが返答したその時、

 彼らの無線に声が届く。ミストリナだ。

 ハウンドは素早く状況を伝えて

 ベーゼの部下二名を拘束したと告げた。

 すると――


『――! ()()()もか!?』


「ん? そっちもとは?」


『君らの班を含めて現在三ヶ所で、

 封魔局員とベーゼの配下との武力衝突があった。」


「なっ!? 一気に三ヶ所も!?」


『幸い今のところは全て鎮圧できているが、

 一つの街にはあまりにも多すぎるな。』


「同感です。既に配下がそれだけ潜んでいるなら

 ベーゼ本人も既に居る可能性が高いですね……」


『あぁ。そして一気に部下たちと連絡が付かなくなれば、

 既に我々が狙っている事に気付き逃走を始めるだろう。

 私はマランザードの()()に協力して貰い、

 これから街の完全封鎖を行うつもりだ。』


「……!?」


 既に話が都市一つの封鎖にまで及んでいる事に

 朝霧は驚きの表情を隠せずにいた。

 またそれはアランも同じようで、

 彼の顔からも動揺の色が見て取れた。

 だがミストリナはそんな新人たちにも指示を出す。


『既に情報が正しかったことは証明された。

 まだ黒幕の影は見えないが……

 ベーゼが我々に気付くまでには若干ラグがあるはずだ。

 ここからは電撃戦だ。支部局員も動員し捜査に当てる!』


 ミストリナの口調が更に強まる。


『ハウンドはまず捕らえた配下二名を

 支部まで連れて来てくれ。尋問を行う!

 それと朝霧。君には今からデータで送る

 潜伏候補地に向かって貰うぞ!』


 無線を終え、ハウンドは二人に目線を向ける。


「聞こえたな? 俺は支部に戻る。アラン手伝え。

 朝霧は位置データが届き次第、現地に向かえ!」


「「了解!」」



 ――――


 ハウンドたちを見送ってしばらくすると、

 朝霧の通信端末にデータが送られる。

 ミストリナが言っていた潜伏候補地。

 メッセージには既に捜査の部隊が向かっていて、

 戦力として彼らと合流しろとの事だった。


 方向を確認し思いっきり走り出す。

 すると――


「きゃ!」


 ――彼女は曲がり角から現れた老人とぶつかった。

 だが杖を使い姿勢を保つ老人はかなりの恵体で、

 朝霧の方がすっ転んでしまう。


「おっと、すまないね嬢ちゃん。

 しかし道は皆さんの物だ。

 我が物顔で走るのは悪い事だぜ?」


 老人が手を伸ばす。

 朝霧が見上げるとその顔には立派な白い髭と

 そして老人らしからぬ毛量の白髪を携えていた。

 自分よりも屈強な老人の手を借り朝霧は起き上がった。


「す、すみませんでした! お怪我はありませんか?」


「ハッハッハッ、転んだのは嬢ちゃんだ。

 それより一つ聞いて良いかな?」


 急いでいるので断りたかったが、

 手助けして貰った手前、

 朝霧は無下には出来なかった。


「は、はい。何でしょうか?」


「――嬢ちゃん、封魔局員?」


「……え?」


 老人はまっすぐ朝霧の目の中を凝視する。


「いやね。なんか今日は矢鱈と騒々しいじゃないの?

 仮に嬢ちゃんが封魔局員なら何か知ってるかなって。」


「いや……私は見ての通り只の一般人です。」


 朝霧ら散開部隊は一目では

 封魔局員と分からない格好をしている。

 老人はその服装を見ながらさらに続ける。


「うーん、それもそうか……。

 ところで君は俺の顔を見て何とも思わない?」


「え? それはどういう?」


「結構な有名人なんだがね、俺。

 もし俺の事を知らない方がいるとするなら、

 最近この世界に来たばかりっていう、

 ()()()()()()って娘さんくらいなもんだ。」


「っ――!?」


 朝霧の呼吸が乱れ始める。

 老人から一瞬たりとも目が離せないでいた。

 そして老人はそんな朝霧の顔を再び覗き込む。


「俺、()()()

 ドクター・ベーゼっていう天才発明家なんだ。

 ――ホントに知らない?」


「ッ!!!!」


 思わず「ヤバい」という感情が表に出て、

 朝霧は標的の眼前で狼狽えてしまう。

 そんな表情の変化を観察しベーゼはほくそ笑む。


「ハハッ! 名前は知ってたな?

 そして『しまった』って表情もした。確定だ。

 ――改めまして朝霧ちゃん、俺の部下を知らないか?」


「くっ!」


 朝霧は腕を思いっ切り振り回し

 ベーゼに大振りの攻撃を仕掛けた。

 が――彼の顔前でその拳はガツンと止まる。

 半透明のバリアがベーゼを守っていたのだ。


「おいおい、嬢ちゃん。

 俺が()()()しちゃうじゃねぇか?」


 余裕の声色でそう呟くとベーゼは指を突き出した。

 瞬間、指の差された方向にバリアが展開され、

 そのまま朝霧を高速で突き飛ばす。


「ぐはっ!?」


 朝霧は路上をボールのように転がり、

 大通りを挟んだ反対側の壁に激突する。

 ダメージは大きく彼女は起き上がれずにいた。

 そしえそんな朝霧にベーゼは一歩一歩近付いていく。


「ほほう、想定よりも使えるな、このバリア。

 それともぉ? 想定より嬢ちゃんが弱いのかな?」


「だ、だれが!」


「お、まだ話せるならもう一個教えてくれ。

 今回の件で封魔局に、

 ()()()()()()()()()()()()()()?」


「知……るか!」


 ベーゼは残念そうな顔を朝霧に向ける。

 そして、杖の先に魔力を貯める。


「そうかい、そうかい!

 まだ若いのに死んでしまうなんて可哀想に!」


 杖から黒い閃光が放たれた――


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