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カルミナント~魔法世界は銃社会~  作者: 不和焙
第一章 負け知らずの敗北者
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第二話 アリスとアラン

 封魔局――魔法連合直下治安維持組織。


 後方オペレーター含め、その総勢は約二万名。

 魔法世界の総人口が約十五億人に対し、

 封魔局員わずか二万名。


 日本の人口約一億三千万人に対し

 日本警察が約三万名であることを見ると、

 この少なさが露見する。


 しかもこれはあくまで総勢。

 地方の民事事件や軽犯罪を対応する局員が含まれている。

 闇社会の凶悪犯と戦い命を掛ける()()()となれば、

 その数は封魔局本部の約二百名にまで減少する。


 そして、彼ら二百名はそれぞれの配属がある。

 それが封魔局『魔導戦闘部隊』、

 一番隊から六番隊である。


「……以上が我々六番隊の立ち位置だ。

 封魔局の主戦力二百名。

 それを六つの部隊に分けるため、

 一部隊の人数は約三十名ちょっとだ。」


 六番隊員ハウンドが新人たちに説明をする。

 六番隊の新人は全部で七名。

 その中に朝霧と彼女に感情をぶつけてくる二名はいた。

 ハウンドの説明が終わると今度はミストリナが口を開く。


「一部隊三十名と言っても、

 基本は二、三名がチームで動く。

 部隊全体で動くかは敵の規模によって決定する。

 つまり一部隊丸々動くような案件は

 相応に大きな事件が発生した時、ということだ。」


 ミストリナが新人たちを見渡す。

 彼らは気圧される事なく彼女を見つめ返していた。


「よし。ジャケットの支給を行おうか!」


 ジャックとハウンドが封魔局の制服である、

 青を基調としたジャケットを配る。

 ついに来たと新人たちに期待の表情が浮かぶ。

 それは朝霧も例外ではなかった。


 各々の服の上にジャケットを羽織る。

 このジャケットを着ていれば

 誰の目にも立派な封魔局員に見えるだろう。

 そんな新人たちを見回しミストリナは満足そうに頷いた。


「では今日はこれで解散だが、既に君たちは封魔局員だ。

 皆、自覚を持って行動するように!」


「「了解!!」」



 ――朝霧の部屋――


 朝霧は困惑していた。

 部屋を間違えたかと番号を見るがやはり合っている。

 ここは一ヶ月前から朝霧の部屋だ。

 がしかし、果さてどうしてだろうか。

 屈託無い笑顔が朝霧の眼前にはあった。


「わー! 綺麗な部屋ですね! 朝霧さん!

 こんなに整理整頓されてるなんて流石ですー!」


「あのアリスさん……? なんでここに居るの?」


 アリスはベットの上に堂々と寝転ぶ。

 当然このベットも朝霧の物だ。

 彼女は布団に顔を埋め込みながら答えた。


「まぁまぁ! 消灯までまだ時間ありますから!

 あ、因みに私も本部寝泊まり勢でーす。」


「あれ? 本部に部屋が割り当てられるのは……」


「はい! ()()()()()()()()です!」


「……そう。」


 怒ってでも追い出そうかと思っていたが、

 朝霧は途端にそんな気分では無くなってしまった。

 ベットの上でゴロゴロする少女を見つめ、感傷に浸る。

 こんな明るい少女にも暗い過去があるのだと思うと

 どうしても朝霧は悲しくなってしまった。


「家が無い理由は……聞いてもいい?」


「はい! 調子乗ってたら追い出されました!」


(違った。良し退かそう。)


「わーあーあー! もう少しお話しましょうよー!?」


「いいから出てけ。私はなんかもう疲れたの。」


「あー分かります!

 ()()()君がすっごく睨んで来てましたよね!」


 一番疲れるのはお前だという気持ちは収め、

 聞き馴染みの無い名前に朝霧は疑問を抱く。


「アラン君って?」


「ほら! 朝霧さんをずっと睨んでいた人ですよ!

 本堂アラン。魔法世界創世の頃からあったっていう流派、

 本堂一刀流の免許皆伝。とっても強い人ですよ!」


「へぇー、日系人だったんだ。

 でもなんで私を目の敵にしているの?」


「うーん? あくまで私の推測ですけど……

 アラン君って今期の()()入隊者なんですよ。」


「主席!? 彼が?」


「はい! 本来ならもっとチヤホヤされてる人なんですよ。

 けど今期は……」


「私に全部持ってかれたと……なによ、逆恨みじゃない。」


 腕を組み不満を漏らす。

 さぞかし深い因縁でもあるのかと思えば、

 大したことは無かったとバカらしくなっていた。

 だがアリスならここで朝霧に共感しそうなものだが、

 返ってきたのは意外にも彼への擁護だった。


「うーん、まぁ……彼なりに焦っているんだと思いますよ?

 本堂一刀流って今()()()だと評判なんですよ。」


「落ち目? なんで?」


「五年前の戦争に本堂道場の門下生も参戦したんです。

 ただ、その……戦果が、あまり良くなくて……」


「なるほど?

 落ちた名誉を取り戻すため頑張って主席になったのに、

 ポッと出の私に台無しにされた。

 それに同じ部隊だから今後も手柄の取り合いがある。

 そう思われた訳ね。……ありがと、教えてくれて。」


 感謝の言葉に感激しているアリスをつまみ出し、

 朝霧は独りアランの事を考える。

 これから同じ六番隊として戦う仲間。

 遺恨禍根は残したくは無い。


(――今度あったら話をしてみよう。)


 ドンドンと叩かれる扉を押さえ、

 朝霧はそう心に決めた。


 そして翌朝、

 ミストリナより六番隊メンバーに

 初めての任務が言い渡される。


「早速だが諸君。

 本日よりしばらく都市マランザードに行くぞ。

 今回は六番隊全体で動く……まぁつまり大事件の発生だ。」



 ――都市マランザード――


 ミラトス同様ゴエティアと海を挟んだ向かい側に

 都市マランザードは存在している。

 向かいと言ってもその距離は

 ミラトスとは比べものにならないほど遠く、

 気候も大きく変わってくる。


 この都市を形容するなら砂漠の都。

 周囲三方向を砂漠に覆われ残りには海が広がる、

 いわゆる海岸砂漠の場所にその都市はあった。


 やや中世感の残る建物、封魔局支部の中に

 六番隊のメンバーが集まる。

 隊員たちにミストリナが指示をする。


「今回の任務は短く言えば兵器取引の阻止だ。

 それも闇社会で特に危険とされる人物たちの、

 大きな大きな取引の阻止だ。」


「危険人物……てことはつまり……」


「あぁ……」


 ミストリナが隊員たちに目を配る。


「まだ確定では無いが……

 情報によれば一方は違法兵器開発で

 指名手配されている老博士。名をドクター・ベーゼ。

 そしてその取引相手は――特異点≪黒幕≫だ。」


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