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カルミナント~魔法世界は銃社会~  作者: 不和焙
第三章 藍の鳥は届かない
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第四十五話 四方守護

 滅びの予言。七つの罪悪。

 人という枠組みを越えた上位存在、サギトへの覚醒。


 従来、これを達成せんとする魔法使いは

 いくつもの障壁に悩まされるだろう。


 一つはそのものの難易度の高さ。

 予言には覚醒の条件と思しき文言が記されている。

 強靭な精神と七つの激情、そして生贄となる魔力だ。


 前二つの条件ははっきり言って気持ち次第。

 明確な達成基準の検討もつかない以上、

 自分なら上手くいくと信じて臨むしかない。


 だが生贄となる魔力は別だ。

 魔法使いにとってそれは身近な準備物。

 どれほど用意すればいいかは感覚で察せられる。


 そして、多くの者は絶望する。


 サギトの覚醒のためには、

 彼らが今までに扱ったことの無いほどの

 膨大な量が必要となるのだ。


 多くの者はこの段階で諦める。

 そして運良く準備出来たとしても第二の障害が現れる。


 それこそが魔法連合、そして封魔局だ。


 莫大な魔力を集めようと思えば当然目立つ。

 ましてやサギトへと覚醒しようと考える輩。

 集め方によってはそれだけで逮捕されるだろう。


 故にサギトへの覚醒間近まで迫る者なら、

 必死に隠密を極め覚醒まで大人しくするだろう。


 だが……ローデンヴァイツの場合は違った。


 彼には『覚醒の仕方』に対するこだわりがあったのだ。

 これは言わば新たな王の生誕祭。

 覚醒後の君臨の仕方も視野に入れた計画だ。



 ――封魔局本部――


 クーデターの一団に伝えられた作戦はこうだ。

 本部の要所を抑え、局長を捕えて断罪する。

 断罪が済めばローデンヴァイツが介入し、

 熱い『交渉』の末に彼の下に投降する。


 裏切り者の封魔局員たちはその作戦を信じた。が――


「魔導装甲『朱雀』――起動。切り裂け『赤刃根(あかばね)』!」


 ――裏切られた。元よりそれは嘘だった。

 レイブンの背から無数の真っ赤な刃が飛ぶ。

 彼の脳波を受け、思いのままに獲物を切り裂いた。


「ぐぁあッ!」


(ッ!? ガーディアンの野郎……!

 仲間ごとカメラを破壊しやがった!?)


 刃はその場にいた者たちを襲う。

 クーデター派もそうでない者も関係無い。

 現場は多くの人間から溢れた血で真っ赤に染まった。


「ぐふっ! ……おい、どういうことだ!?」


 リーダー格の男は、

 抉られた腹を抑えながらレイブンを怒鳴り付けた。

 困惑混じりの怒気が塊のような血とともに口から溢れる。


 そんな彼の様子を、

 同じくボロボロのマクスウェルは見守る。

 しかし、レイブンはあくまでも冷淡であった。


「我々の目的は『敵』の抹消に他ならない。」



 ――同局内――


 封魔局に乗り込んだガーディアンは、

 レイブンだけでは無かった。

 黒い服に身を包んだ集団が正面から内部を侵す。


 彼らは目に入った封魔局員を容赦無く撃ち殺し、

 多くの人質が集められたエリアまで到達した。


「ほらほらー! 動くなよー?

 俺っちはガーディアン最高戦力『四方守護』の一角!

 白虎の異名で恐れられるゴーズ様だぁー!」


 軽装の男はそう叫ぶ。

 と、同時に背後から現れたガーディアンたちが

 人質を囲んだクーデター参加者たちを撃ち殺す。


「や、やった! クーデター派を倒したぞ!」


「すまないガーディアン! ここからは俺たちも!」


 人質となっていた者たちは歓喜の声を上げ立ち上がる。

 が、沸き立つ非武装の彼らをゴーズは冷めた目で眺めた。

 そして――


「あーあー、ガーディアン諸君に告ぐ。

 人質の中にクーデター派の仲間が()()()()()

 判別は不可能なのでぇ――そのまま全員殺せ。」


「え?」


 歓喜の声は、恐怖の悲鳴に変わった。



 ――中央電波塔――


『こちらシーラ。

 白虎と朱雀が封魔局本部に突入した。』


 黒服の一団は中央都市中に散開する。

 あくまでもクーデターから市民を守るという名目で。

 その中でも一際武装した部隊が通りを進む。


『では青龍よ。そちらも速やかに電波塔を制圧せよ。』


「了解した。衛士長。」


 軍団は動く。中央都市に不穏な無線が飛び交う。

 正義を騙る悪の集団が大手を振って行進する。



 ――――


「裏切りやがったなぁ!? ガーディアン!!」


 リーダー格の男はレイブンを睨む。

 苦痛と憎悪に歪んだ表情。目元には深い隈。

 そんな彼の表情からマクスウェルは事情を察した。


(なるほど……奴らを援助したのはガーディアンか……!)


「俺たちは最高議長の傘下に加わるはずだっただろ!?」


「クドいな。」


 瞬間、真っ赤な斬撃が男の首を刎ね飛ばす。

 宙を舞う憎悪の頭部。ゴロリと転び生者を羨む。


「使われたのだよ。貴様ら叛乱分子はな。」


 無数の羽根がレイブンの装甲に戻る。

 ガシャガシャと不快な金属音を立てながら、

 赤い鳥は羽根を仕舞い局長に近づいた。


「立て、マクスウェル。

 お前は本件の責任を取り晒し首にならねばならない。」


「…………ローデンヴァイツが裏にいるのか?」


「あぁそうだ。知った所で既に手遅れだがな。」


 レイブンはマクスウェルの腕を掴む。

 負傷者に対してとは思えないほど乱暴に。

 その態度からマクスウェルは敗北を悟った。


「……隊長たちの不在。偶然ではあるまい。

 となれば……なるほど? 最高議長が≪厄災≫か?」


「フン。その思考がもっと早く出れば良かったな。」


 そう言うとレイブンは、

 動こうとしないマクスウェルを蹴り飛ばす。

 だがそれでも局長は立ち上がらない。最後の抵抗だ。


「持ち運びにくい……いや、お前の()()()()()()()か。」


 思いついたかのようにそう呟く。

 その直後、再び駆動音を上げ動き出す魔導装甲。

 数本の真っ赤な羽根が収束し鋭利な刀剣へと変わる。

 そして、マクスウェルを押し倒し足を乗せた。


「では解体ショーと行こうか。」


 振り下ろされる凶刃。

 マクスウェルの足を目掛けて真っ赤に光った。

 その時――


「調子に乗るなよ、ガーディアン。」


 ――凶刃に負けないほどの『赤』が迫る。

 その閃光に気付いた時、

 レイブンは身も焼けるような熱気を知覚した。


「っ! 火柱……! これは……!」


 咄嗟に装甲を使い攻撃を防ぐが、

 その威力は凄まじく赤い鳥は室外へ押し出された。

 空中で姿勢を制御し、顔を上げる。


 するとそこには、

 本来この場にいるはずの無い男が立っていた。


「封魔局三番隊隊長……ドレイク・C・ウォーカー……!」


「この人は封魔局(ウチ)のボスだ。そう簡単に殺らせねぇよッ!」


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