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カルミナント~魔法世界は銃社会~  作者: 不和焙
第三章 藍の鳥は届かない
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第四十四話 断罪

 ――魔法連合総本部――


 クーデター発生。封魔局本部陥落。

 この二つの情報は瞬く間に魔法連合議会に届けられる。


 突然の報告。事情を知らぬ者たちは慌てふためく。

 こういう非常事態にこそ頼れるのは封魔局だが、

 今回はその封魔局本部が事件の中心地。

 議員たちはどうすれば良いのか分からずにいた。


「さ、最高議長閣下! わ、我々は一体……!?」


 皆の視線が一点に集う。

 最高議長ダミアーノ・ローデンヴァイツに向けて。


 彼は煙管(キセル)を吹かしながら優雅に振る舞う。

 裏で手を引く首謀者なのだから当然ではあるが、

 傍から見れば、その余裕っぷりに頼もしさを覚える。


「封魔局が使えないのだァ。となれば彼らしかあるまい。」


 ねっとりとしか口調と共に指を鳴らす。

 それを合図に議員たちが集う部屋の中へ

 黒い服に身を包んだ一団が侵入した。


「ガーディアン! なるほど、彼らなら!」


 議員たちはまるで事件が解決したかのように喜び合う。

 その様子をローデンヴァイツは滑稽そうに見つめた。

 心に抱いた侮蔑の感情をグッと抑え、立ち上がる。


「万一にもこの総本部が落とされてはいけない。

 衛士長ォ、部隊の一部を彼らの『護衛』に充てなさい。」


 そう言うとローデンヴァイツは顎を動かす。

 彼ら、即ち魔法連合の議員たちだ。

 護衛が付けて貰えると聞き彼らは更に沸き立った。


(フッ、愚か者共が……)


 無知なる羊たちを尻目にローデンヴァイツは動き出す。

 全ては彼が新たな王となるための儀式。

 厄災は既に始まった。



 ――封魔局本部――


 クーデターを起こした局員たちは、

 局長を人質に本部の本格制圧に乗り出した。

 本部内に残っていた局員たちから武器を奪い、

 一所に集めて数人で監視を行う。


 また、その集めた局員の中から数名、

 手錠で繋がれた状態でカメラの前に引きずり出された。


「この映像を見ている諸君、彼らは封魔局の汚点だ!」


 リーダー格の男は、

 引きずり出された局員に拳銃を突きつけながら語る。


「まず一人目!

 こいつは闇社会の人間から賄賂を受け取った!

 その金で捕えるべき犯罪者を野放しにしたのだ!」


「!!」


 マクスウェルは審議にかけられた局員を見る。

 彼は滝のような汗を流す。どうやら事実のようだ。


「何か言い分はあるか!?」


「い、いや! な、何のことかサッパ――」


 ――パァン、と響く銃声。

 一切の躊躇も無く汚職局員の脳天は撃ち抜かれた。

 リーダー格の男はギロリと残りの人間を睨む。


 誰かがヒッと声を上げた。

 誰かがゴクリと喉を鳴らした。

 現場は完全に裏切り者たちのペースであった。


「さぁ、次だ。」


 今度は女性局員が狙われる。

 腕を掴まれカメラの前に引きずり出された。

 そして、先程と同じように拳銃が向けられる。


「以前、本部で進められていた極秘作戦が

 メディアにリークされるという事件があったな。」


「――ッ! あ、あれは酔った勢いで……!」


「そうか、やはりお前だったか。断罪だ。」


 男は銃口を女性局員の額に押し当てた。

 大粒の涙を溢れさせ懇願する局員。

 だが男は命乞いに耳を貸さず引き金に力を入れた。


「――待て!!」


 声を上げたのはマクスウェルだった。

 後ろ手に手錠を掛けられたまま身を乗り出す。


「貴方は最後ですよ、マクスウェル?」


「ッ……! 貴様らは一体何がしたいんだ!」


「? 放送の最初にも言ったでしょう? 断罪です。

 今の封魔局がいかに腐りきっているのかということを

 市民と()()()貴方に分かりやすく伝えているんです。」


 マクスウェルはギリッと歯を食いしばる。

 腹の立つ感情を必死に抑え、

 どうにか冷静さを保って対話を試みた。


「だからといって、こんな私刑が許されるとでも!?

 告発してくれれば法の下に断罪だって出来ただろう!

 武装を解除しなさい。今なら私から君たちの減刑を……」


 ――パァン


 再び鳴り響く銃声。溢れ出す血飛沫。

 撃たれた人間は脱力し、真っ赤に染まりながら倒れた。


「…………は?」


 マクスウェルは後ろを振り返る。

 撃たれたのは先程の女性局員。

 撃ったのは当然、リーダー格の男だ。


「な、何を!?」


「彼らの罪には確固たる証拠が足りない。

 まぁここは魔法世界。物的証拠なんてほぼ掴めない。」


「だから! 言ってくれれば私がなんとか――」


「――お前にはッ! 何も期待していない。

 優柔不断で無能なマクスウェル。お前には何もなッ!」


 男は銃口をマクスウェルに向けた。

 その目は憎悪に染まり今にも爆発してしまいそうだ。


「俺の兄はお前の部下だった。

 だが戦時中、お前の判断ミスで孤立し犬死した!!」


「……っ!」


「謝罪はいらない。アンタへの信用を失った()()だ。

 ……このクーデターで一緒に消えてもらうだけだ!」


 そう言うと男はマクスウェルの頬を蹴る。

 鈍い音と共に倒れる局長。口からは血が垂れる。


「くッ……ぐふっ! 破滅的すぎるぞ……! 貴様ら……!」


 マクスウェルは敵を睨む。

 しかしその言葉に男は内心で笑っていた。


(破滅的? 残念だったな無能局長。

 ちゃんとこのクーデターの後の動きは決まっている。)


 彼は事前に取り決めていた計画を思い起こす。

 クーデターによる封魔局の断罪と一新。

 それが完了すれば彼らは最高議長のもとに降る。

 ローデンヴァイツに余生を預かって貰う手筈なのだ。


「さぁ、断罪の続きを再開しよう!」


『――残念だが、断罪されるのは貴様らだ。』


 ――刹那。拡声器越しの声が響く。

 その場の誰もが気配に気付いた瞬間、

 彼らのいた部屋の天井が爆音と共に崩壊した。


(え……? 何で……?)


 そこにいたのは真っ赤な鳥。

 ……を模した機械装甲に身を包む白髪の男。

 神の如く宙に立ち、封魔局員たちを見下ろした。


「俺はガーディアン最高戦力『四方守護』の一角。

 朱雀の名を持つ衛兵レイブン。貴様らを抹消する。」


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