表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カルミナント~魔法世界は銃社会~  作者: 不和焙
第三章 藍の鳥は届かない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

148/666

第十七話 追撃

前話にて一部改稿を行いました。詳しくは活動報告をご覧ください。

 ――領主邸――


 暴動発生から数十分後。領主邸にもその報せが届く。

 邸内では使用人たちが慌ただしく動き回り、

 外を領主の命により私兵たちがぐるりと囲んでいた。


 が、その配置は領主邸の防衛というよりむしろ、

 内部からの脱出を阻むためのように思えた。


「お、お待ちくださいお嬢様……!」


「止めてくれるな、私も封魔局の隊長だ。」


 足止めを受けていたのはミストリナだった。

 引き留めるメイドたちを払い外へと向かう。

 すると正面玄関で一人の執事が立ち塞がった。


「君は?」


「お初にお目にかかります、ミストリナ様。

 私はミゲル。六年前から仕える者でございます。」


「六年前……私が出ていった後に来た者だな。

 さしずめ、じぃや後任の執事といった所か?」


「はい。彼は私の師でありました。

 それよりも、今はお部屋にお戻りください。

 嫁入り前の大事なお体。何かあっては困ります。」


「気遣い結構、既に傷物だ!

 それと勝手に決められた縁談など受ける義理は無い!」


 彼女の自嘲めいた台詞にメイドたちは困惑する。

 それでもミゲルは態度を崩す事無く対応し続けた。


「全て旦那様の指示です。ご理解ください。」


「よし理解した。が、尊重はしない。通せ。」


 強制は無駄。そう悟ったように溜め息を漏らす。

 代わりにミゲルは別口からの説得を試みる。


「ミストリナ様、貴女が参戦する必要は無いかと。」


「何?」


「現在この街にはアーサー様、エヴァンス様ら

 二人の隊長がいらっしゃいます。そして六番隊員も。

 彼らは強い。苦戦はあっても敗戦は無いでしょう。」


 確かにそうかもしれない、とミストリナは納得する。

 だが、それだけでは参戦しない理由とはならない。


「私も隊長だ。加勢すればその苦戦すらあり得ない。」


「ごもっとも、ですが必須では無いはず。

 それよりもミストリナ様が行うべき、いや!

 ミストリナ様にしか出来ない役割がございます。」


「?」


「テスタメントはソピアー市民の支持を得ていた宗教。

 今回で彼らも目を醒ますでしょうが、それはつまり、

 多くの民衆が心の拠り所を失うということです。」


 ミストリナはその後に続く言葉を悟った。

 教団は倒すべきだが彼らの敗北は民衆の不安を煽る。

 であるならば、戦闘後の人心を(やす)んずる必要がある。


 封魔局の中でその役割に最も適しているのは

 隊長格であり領主の娘でもあるミストリナだろう。

 そして、最も手っ取り早い手段が目の前にある。


「ミストリナ様は街の全員にとって娘のような存在。

 身を固め跡継ぎを。それだけで皆は安心なのです。

 そしてそれこそが、我が師の最期の望みでした。」


(じぃや……)


「何もすぐに決心する必要はありません。

 一先ず今はお部屋に戻りましょう、ミストリナ様。」


 ミゲルの言葉に促され、

 何かを言うわけでも無くミストリナは身を翻した。



 ――――


 刃物と瓦礫が宙を舞う。爆発音が虚空に響く。

 対峙するは三つの影。中距離から敵を狙う。


 影の二つは封魔局員、ハウンドとジャック。

 彼らの敵は教団幹部、使徒サンクトゥスだ。


(敵の祝福は大体把握した! 追尾投擲!

 投げたモンが何処までも追ってくる厄介な能力だ。)


 飛び交う凶器から身を守りながら

 ハウンドは敵の祝福を分析した。

 対するサンクトゥスも同様に分析に励む。


(爆破と飛行、厄介! どちらも私の攻撃に対応可能。

 これは、戦場を優位な場所に変える必要があるな!)


 サンクトゥスは交戦しながらも周囲に目を向ける。

 この場の避難誘導は概ね完了され、人通りは無い。

 たが、より遠くに目を向ければ僅かに人影が写った。


(活路は見えた! そこだ!)


 サンクトゥスは明後日の方向へ向け棒切れを放つ。

 それはすぐに向きを変え目的を持って飛行した。

 すると、サンクトゥスはその棒切れに手を取った。


「補助スーツ、機能開放。軽量化!」


(ッ!? 下に何か着て…………な!?)


 ハウンドはその光景に驚愕する。

 軽量化したサンクトゥスは掴んだ棒切れに引っ張られ

 何処かを目的地として空中を滑空した。


「ジャック、追えッ!! 向こうに人集(ひとだか)りがある!」


「ッ! 了解!!」


 ジャックも浮遊し使徒を追う。

 追撃してくる封魔局員の姿を見留め、

 サンクトゥスはニヤリとほくそ笑んだ。


(だろうよ。危険人物は追うしかあるまい。

 さぁ来い! あの場所で決着を着けるとしよう!)


(!? あの野郎……まさか! ()()()()に向かう気か!)


 眼前に巨大で豪華な建造物が現れた。

 ジャックは敵の目的地が其処であると理解する。

 そして二人は真っ直ぐその内部へと飛び込んだ。



 ――ソピアー大博物館――


 正面玄関の扉を突き破り、

 ジャックとサンクトゥスは館内へと躍り出る。

 突然の襲来に内部の人間たちは悲鳴を上げる。


(人が多い……! 避難所に指定されていたか?)


 チラリと見ても人間たちが群がっている。

 少し手を伸ばせば触れられる。人質が多い。


 ジャックにとって不利はそれだけでは無い。

 広いとはいえ室内。飛べる範囲は限られている。

 それはハウンドの爆破も同じ。室内では制限される。


(――! 敵は何処だ!? マズい、見失なった……!)


 民衆に気を取られている間にサンクトゥスは姿を消す。

 ジャックは一旦彫像に着地し、警戒心を張り巡らせた。

 すると、一人のスタッフが恐る恐る語りかける。


「あ、あの……封魔局の方ですよね? 一体何が……?」


「下がってて! 民間人もここから避難を――」


 ――瞬間、無数の武具が飛来してきた。

 乱雑に投げ飛ばされたそれは全てジャックに集約する。


「――このッ! 程度ッ!!」


 双剣を振り回し迫る凶器を打ち払う。

 鋭い槍を剣で払う。重たい斧を剣で払う。


 しかし迫る武具はまだまだ尽きない。


 次第に剣を振るう手が痺れる。

 打ち払う毎に腕が折れそうな痛みが走る。

 そして、迎撃の合間を短刀がすり抜けた。


「ヅッ!! 痛ってぇ……!」


 短刀の刺突を皮切りに

 数本の凶器はジャックに到達した。

 死の雨が止む頃には彼の体は血塗れだった。


「ひっ! だ、大丈夫ですか!?」


「フゥ……! フゥ……! 問題無い……下がれ……!」


「はっ! この武具はウチの展示品じゃ?」


(! なるほど……有利な戦場を選んだ訳か……)


 ジャックは敵の意図を察知した。

 それと同時にハウンドも館内へと侵入する。


「ジャック!? お前生きてるか!?」


「フゥ……! おっさん、少しいいか?」



 ――――


 朝霧は大剣を片手に街中を駆ける。

 狂気限定顕在を併用しながら時短を図った。


(ホンマ、エグいなぁ……アンタの身体。)


「戦闘だけが取り柄だって知り合いにも言われた。

 だからもしパオラの手助けも必要になったら、

 その時は身体を貸すから協力してよね?」


(ええけど、そん時はそのゴツい剣は持てんで?)


「え? どうして?」


(そら自分、そないなモン持っとったら安定せぇへんよ!

 跳躍だけ、とかなら行けるかもしれへんけど、

 例えばそっから身体捻って曲芸するんは無茶やで!)


 なるほど、と朝霧は納得し考え込む。

 目標である固有戦闘術は大剣とアクロバットの融合体。

 しかし専門家からはそれは困難と念を押された。


「……もし、もしもだよ?

 もう一段階、運動性能が上がったらどうなる?」


(もう一段階? どの程度かにもよるけど……

 まぁたぶん可能なんちゃう? え? 出来るん?)


「いや。()()無理かな!」


 僅かに苦笑しながら腕の装備に目を落とす。

 もう一段階の運動性能向上。希望はあった。

 そんな事を考えていると朝霧は目的地へ辿り着いた。


(とうとう来てしもたで……テスタメントの本拠地。

 奴らの聖堂が内部に隠蔽されとる街のシンボル……!)


「ここが……時計塔……!」


 そびえる巨大な塔。この街にとっての時間の支配者。

 朝霧を歓迎するように時刻を告げる鐘が鳴る。


「待ってろ……テスタメント!」



 ――博物館――


 館内を走り回りサンクトゥスは武具を集める。

 数本をキープし持ち運べない分はとにかく投げる。


(此処は投擲物に困らない。が、まだ飛んで行くか。

 目的がまだ死んでいない証拠だ。しぶとい奴め。)


 サンクトゥスは胸元から一つの瓶を取り出す。

 中にあるのは黒煙では無く、色のついた液体だった。


(いざとなったらこれも使って――)


 ――その時、サンクトゥスはある音に気付く。

 それは風切り音。何かが高速で接近する音だ。


(分かっている。どうせ浮遊の方の封魔局員だろ?)


 サンクトゥスは近くの展示物に手を当てる。

 鋭利な刃物をいつでも飛ばせるように準備した。

 やがて音の発生源が、姿を視認出来る所まで接近した。


「は!? なんだあれは!?」


 接近したのはジャックでは無かった。

 飛来して来たソレは、展示されていた()()

 全長二メートルを越える質量がサンクトゥスに迫る。


「――ッ! 避けねばッ!」


 サンクトゥスは急ぎ脇に逸れる。

 が、それを追尾するかのように彫像も軌道を変えた。

 角度がズレたことによって、

 サンクトゥスはこの怪奇現象の原因に気付く。


(!? 彫像の後ろに……人影!?)


 像に隠れ潜んでいたのはジャックだった。

 展示品移動のために使う魔法器具を片手に、

 彫像を抱えてサンクトゥスへ向け飛んでいたのだ。


(フッ! 盾のつもりか? ネタが分かれば怖く無い!

 適当に刃物を投擲すれば彫像を避けお前を突き刺す!)


 勝ちを確信し使徒は三本の刃物を投げる。

 だがしかし、それと同時にジャックは反撃に出た。


 手に持つ魔法器具ごと彫像を投げつけたのだ。

 空中にそれぞれの投擲物が放り出される。

 やがてそれはスレスレの所を交差した、その時――


「今だ! ハウンド!!」


 ジャックは無線に怒鳴り付ける。

 応、という野太い声が聞こえたかと思うと、

 彫像は空気を揺らすほどの衝撃と共に爆発した。


(――なッ!? 何ぃぃいい!?)


 割れんばかりの振動がジャックに迫る刃物を弾き、 

 弾丸の如く炸裂した大理石の破片が敵の手足を叩き砕く。


「めちゃくちゃだ……! 危うく自分もタダでは……!」


「承知の上! むしろこの程度のリスクでも足りない!

 俺がミストリナ(あいつ)らと同じくらい戦果を上げるにはな!」


 ジャックは二丁拳銃を取り出し向ける。

 その鬼気迫る表情に恐怖心を覚えながらも、

 サンクトゥスは胸元の小瓶を投げつけた。


(何だ!? 液体……?)


 ジャックは反射的にその瓶を発砲してしまう。

 直後、液体は発火し周囲に巨大な火柱を上げた。

 タイミングの分かっていた彫像の破片は防げるが、

 完全に不意を突かれた火炎にジャックは燃える。


 すぐさま地面に転がり落ち、

 回転と共に引火した上着を脱ぎ捨て事なきを得る。

 が、その間にサンクトゥスはまた滑走していた。


「ぐっ……逃がすか……!」


 既に限界に近い体を持ち上げジャックは飛ぶ。

 互いに激しく消耗しあい速度は出ていない。

 ジャックは棒切れを掴む敵の腕に発砲した。


「がぁっ!?」


 サンクトゥスは思わず手を離す。

 その体に飛びかかりジャックは拘束を試みた。

 しかし既に制御は効かず、

 二人は窓を突き破り博物館の外へと飛び出した。


「このっ……! 何としても……俺の力で……!」


 二人はボロボロの状態で地べたに這う。

 そんな中でもジャックは力を振り絞り前へと進んだ。

 そこへ、彼を嘲笑うかの如く一台のバイクが停まる。


「はぁぁ、教団の援護とかダル。そう思わない、ゼノ?

 ……ったく、あの骸骨頭。戻ったら一発ぶん殴ろ。」


「アハハハ! 大変だったな、シックス!」


 それは赤と黒を印象付ける服装の女と

 一見女性のように見える青い長髪の青年。

 肩には特異点勢力の一つを象徴する龍のドクロの印。

 そう、彼らは――


「――『亡霊達(スペクターズ)』!?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ