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最後の異世界人  作者: ピエール鈴木
1章 ラスタフォンの騎士
1/9

第1話 地に殴り飛ばされた体は開戦の音を鳴らす

「何故だろう。こんなはずじゃなかったのに…」


 静かに呟いた。


 グランドは部活動に励む生徒が息を切らしながら走っている。

 しかし、屋上の柵を乗り越えた先にいる僕に誰も気づかない。無駄に孤独を感じる。


 みすぼらしい僕を嘲笑うように、空は美しい夕日と星を映しだし始めた。


「まるで、別世界じゃないか…」


 僕は柵から手を離して宙を舞う。この手に残るおぞましい感触を今すぐにでも払いのけるために…


 もしも生まれ変わったら、自分の心のままに………ただ、真っ直ぐに生きよう。


 罪深い僕を、大地は無慈悲に殴り飛ばした。






 真っ白な場所に僕は立っていた。そして目の前には全身を真っ黒に包んだ魔女が立っている。あれが本当に魔女なのかは分からないけれども、見た目の不気味さが直感的にそう思わせた。


「ここはあの世ですか?」


 魔女は何も言わない。彼女の赤く輝く瞳が僕を見つめているだけだ。


「僕は、地獄に落ちるんですか?」


 やはり、何も言わない。沈黙が流れるだけだった。どこかに歩いていく気力もない。ずっとこのままだろうか。

 それも悪くない。何も考えたくない。


「あなたは、最後の希望。決して忘れないで。」


「へっ?」


 まるで意味がわからなかった。でも、耳触りのいい声だ。


「いずれまた会いましょう。その日まで生き抜きなさい。」


「は、はい…」


 魔女は光と共に消えていった。

 生きれなんて……

 そんなこと言われても…






「はっ!?」

 なんだ…夢か…

 夢で良かった。本当に良かった。

 肩が痛いな。僕はおもむろにベッドを見た。

 しかし、そこにあったのは…地面だった。


「●◆?◎!÷%α◎◆〇!!」


「へっ!?」


 外人が僕に声をかけている。言葉が全く分からない。英語ではないだろうな…

 起き上がって周りを見てみる。木造の家屋が至るところに並んでいて道に人が歩いている。僕は道のど真中にいた。


「〇◎.◎∈ /?」


「すみません。すみません。」


 外人さんは僕を心配してくれてるように見えるけど、何を話してるか分からないからな……ひとまず道行く人の邪魔にならないように離れないといけないな。

 あれ?…なんかやけに耳の長い外人だな。気のせいか。


「サンキューサンキュー。」


「〇◎?」


 お礼を言って離れる。サンキューぐらいは万国共通語だろ。



 痛っ


 バシャン!


 転んで頭から水溜まりに入ってしまった。でも、そんなことよりも……膝に痛みがある。右手にはあの感触が今も生々しく残っている。水溜まりに映る自分の顔は……ボコボコに腫れ上がっていた。


 夢じゃなかったんだ……



 体感的に1時間程、あてもなく歩いた。この町には、車もバスもトラックもない代わりに、馬車や牛車が走っている。日本人と思われる人は1人もいない。僕は異国の地に迷い込んでしまったようだ。携帯は家に置いてきたせいで、手元にない。

 こんな状況なら普通の人は狂ったように走り回って公衆電話でも探すのだろう。尤も、電線も電話線も見当たらないこの場所にあるとは思えないが……

 知り合いを探すべきだろうか。友達とは、暫く会ってなかったな。相手は僕を友達と思ってたのかな。何も考えたくない。



 ただ、歩き続けた。野に咲く花も、静かに佇む木々も僕が知りうるものは1つとしてなかった。きっと1人ぼっちで死ぬのだろう。……1人がこんなに寂しいとは思ってなかった。


 夜が過ぎ去り、朝日が昇る頃、僕は歩き疲れて道の真ん中に倒れこんだ。倒れた僕に数人の男達が近づいてくる。


「●◆!α%£!」


「何を言いたいんだよ……」


「£%◆◆●α◆◆!!」


 ガッ


 僕は男達に取り押さえられた。鎧を着こんだ男に肩を担がれて引きずられていく。

 この人達が誰かなど分からない。何を伝えたいかも分からない。僕がどうなるかも分からない。いっそ、このまま消えてしまいたい。


 僕は眠った。もう起きたくない。






 目覚めると目の前には、薄汚いレンガが広がっていた。地面にもレンガが敷き詰められ、横を後ろを振り向くと、鉄格子があった。誰かの泣き声や叫び声が聞こえる。色々な声が混ざりすぎて、話していることが分からない。

 ここは、まあ、留置所か。僕にお似合いじゃないか。自嘲気味に笑ってみる。


 すると部屋の隅っこから物音がした。振り向くと30代の男が上体起こしをしている。男と目が合ったが、男は相変わらず上体起こしをする。

 随分、余裕だなこの男。牢屋の中にいるのに筋トレとかよっぽど筋肉馬鹿なんだな。ムキムキだし、実際にそうなのかも…

 急に緊張感がなくなってきた。

 ここでは牢屋が家なのかもしれない。馬鹿げているが、それなら納得だ。叫び声もただの会話かもしれない。ひょっとしたら鉄格子の扉も実は簡単に開くのかも。


 僕は左手で扉に触れてみた。


 バチッバチッ


「あだっ!!」


 で、電気!?鉄格子には電気が通っている。男を見て楽観視し過ぎた。ここは牢屋だった。

 しかし、ここの文化水準おかしくないか?馬車を引いてるのに、牢屋の鉄格子に電気が通ってるって滅茶苦茶だろ。


 駄目だ。考えても意味がない気がする。


 おもむろに右手で左手を撫でる。あれ、右手の腫れが引いてる。明らかに骨が折れてたのに、痛みが全くない。


 顔にも触れてみる。全然痛くない。腫れもない。身体中を確認してみた。傷1つない。


 えっ…どう言うことだ?


 ひょっとして、今まで僕が体験してたのは、全部夢だったのか?


 アイツを……


 記憶には鮮明に残ってる。だけどその証拠がどこにもない。


 僕は……信じたかった。


 そのとき、隣から声がした。


「∈●⑤/£◆()〇◎∈!!」


 筋トレを終えた男が僕に話しかけてきた。意表を突かれて体が強ばる。この人の言葉も分からないけど、何かを話さないと…


「ハ、ハロー。」


「!◎〇●●☆÷・●⑤◎◎」


 男は笑いながらポケットからパンを差し出してきた。じんわり汗をかいてる男が持ってるパンを食べたくはないけど、お腹の虫は正直だった。そう言えば、暫く何も食べてなかった。

 黙ってパンを受け取る。


「あ、ありがとうございます。」


 一言お礼を言った後、黙ってそれを口にする。味覚がほんの少しだけ蘇った気がする。この男は優しい人なのかな?


 男は部屋の端に戻って、今度は腕立てをしている。ここが鉄格子に電流の通った牢屋で、叫び声や泣き声が聞こえるのに、この男だけがそれらと噛み合わない。何者なんだ。


 パンを食べて少しだけ頭の回転が良くなってきた。これまでのことを考えてみよう。


 分からない。全く何が何だか分からない。せめて言葉の通じる人がいれば…



「すみませーん!!日本人の方いますか!!?」


 大声で叫んだ。それしか思いつかなかった。可能性は低いけどそれしかなかった。


「すみませーん!!」


「は、はい!」


 少し遠くの方から返事が聞こえてきた。女性の声だ。

 間違いなく日本語だ。

 途端に色々な気持ちが湧き出てくる。言葉が分かる人がいるだけでこんなに嬉しいなんて、少し前までは思ってもいなかった。


「いた!!良かった!!言葉の通じる人が誰もいないんじゃないかと思ってました!!」


「私もです!!もう、何が何だか分からなくて不安で不安で!!でも、良かったです!」


「僕は、空木弥晴(うつろぎ みはる)と言います!あなたの名前はなんですか!!?」


古屋詩織(ふるや しおり)です!!空木さんですよね!?ここがどこだかわかりますか?」


 古屋さんか。絶対に覚えておこう。


「分からないです。気がついたら見知らぬ町にいて、翌日の朝に言葉の通じない男達に取り押さえられてここに来たと思います!!あと……町に来る前は、学校にいました!!古屋さんは!!?」


「私もほとんど同じです!!電車に乗っていたら急に来てました!!初日は、知らない人の民家にお邪魔して、1日泊めてもらってました!!次の日に帰ろうと思って外を歩き回ってたら、鎧を着た警官みたいな人にここへ連れてこられました!!」


 彼女も今の状況がよく分かっていないんだな。いや、逆に今分かってることを確認しよう。てきとうに一晩歩いていただけの僕が知らないこともあるかもしれない。


「何か見聞きしたことはありますか!?僕は、ここが日本にいない植物や虫がいることぐらいです!!」


「私もそれぐらいしか分かりませんでした!!強いて言うなら、この場所だと、魔法があることぐらいです!!」


 魔法??強いて言うならってオマケみたいに言ってるけど、かなり重要なところだよ!いや、冗談か?


「魔法って、手から火をボウッって感じに出したりするファンタジーによく出てくる魔法のことですか!?」


「はい!!そうですよ!!町の人も体から火とか水とか色々出してました!!私も最初は驚きましたけど、皆当たり前のように使ってて、そういう所だと思うことにしてます!!


 全然、気がつかなかった。見ないようにしてたのかも。これを信じるべきなのか……?

 ……疑っても関係性が悪くなるだけだし、とりあえずは信じよう……


「イヤー、何だか凄いですね!!」


「空木さんは使えないんですか!?」

 

 いや、使えねぇよ。馬鹿にしてんのか?……ってひょっとして


「逆に古屋さん……使えるんですか!!?」


「はい!!こっちの方に来てから急に使えるようになりました!!今のところ、周囲の景色と同化する魔法だけですけど……」


 それだけって……ス、スゲーよそれ。光学迷彩だぞ。プ〇デターじゃん。何だろう。馬鹿されてるのか本気なのかよく分からない。


「エー!!ソレハスゴイデスネ!!僕なんか全く気がつかなかったです!!」


「〇●◎☆)∈(◆??・!)〇!!!」


 遠くで何かを叫んだ。それでも、皆の声は止まらない。


「空木さん!!兵士みたいな人が来たので、一旦やめよう!!」


「分かりました!!兵士がいなくなったらまた、話しましょう!!」


 何故か分からないけど、すぐにでもまた話したい。

 でも、武器を持ってるって物騒だな。古屋さんに怪我がないといいけど……


「◆∈◎÷÷%:◆☆●÷⑤〇∈!!」


 ボウッ

 シュー!!


 牢屋の通路に火の玉が放たれた。僕の前にも一瞬だけ通った。それと同時に辺りは静まり返った。


「●◆◆:%◎◎!!」


 戦争映画で出てくるような火炎放射器の火じゃ……ないんだろうな。球体だった。てか、火事にならないのか?


「●⑤÷%◎〇£α/∈!!」


 先程までとは別の男の声が聞こえてきた。そして、男は話を続ける。


 あまりにも長い話で始めのうちは小学校の頃の校長先生の話を思い出していた。しかし、途中から話し方やイントネーションが変わるうちに、別の言語で話していることに何となく気がついた。英語や中国語のようなものも聞こえてきた。

 同じ部屋の筋肉男は、スクワットをしていた……今は気にしない。


 そして、遂にその時は訪れた。


「ワタシは、ラスタフォン王国聖シャングリラ魔法大学で言語学者であるボゥジュレン・ノイ言います。ネホン語の分かる方いれば、鉄格子の隙間手を出して下さい。」


 片言の日本語だが、内容は十分伝わる。僕は、鉄格子の隙間から手を伸ばした。他に手を伸ばしてる人が何人いるか確認したかったが、角度的によく見えない。無理矢理、頭を鉄格子に押し付けて確認しようとすると感電した。

 ともかく今は、あのノイと名乗る人の話を聞き逃してはいけないな。


「最初皆様の状況ついてですが、皆様は…」




「異世界転移をされました。」


 安易には信じられないけど…動揺と期待が溢れてきた。どうなるか分からないけど、何か凄いことに巻き込まれている。そんな気がした。


「そして、元の世界に戻る方法は現在解明されておりません。」


 その言葉を聞いて僕は安心した。きっと、僕は普通じゃないんだろう。


「そのため、皆様にはこの世界生きてもらうため、ラスタフォン王国では手始めに魔法、運動及び人格の検査してもらうことになります。」


 検査か。検査の結果、不合格だったら何が待っているのか………


「検査概要ついては後日伺いますので、落ち着いて待っていて下さい。以上です。」


 そして、ノイという男は別の言語で話し始めた。魔法、魔法、魔法。検査には、魔法も含まれていた。魔法があることを信じるとしよう。僕も、何か使えないとまずいのか?


 とりあえず、何かしてみよう。


 手に力を入れる。何も起きない。

 頭に力を入れる。何も起きない。

 足を動かす。何も起きない。

 ともかく踊る。何も起きない。

 変顔をする。同じ部屋の筋肉男が笑うだけだった。

 何かそれっぽい言葉を小声で言ってみる。恥ずかしかった。


 それから、できそうなことは何でもやってみた。でも、魔法は出てこない。たまに目の前の筋肉男が笑ってくるだけだった。もう、いっそ「これが笑顔の魔法です!」って言って滅茶苦茶に変顔して踊るのもありかもしれないな……ただのヤバイ人だ。


 知らないうちにノイと名乗る男達は帰っていた。しかし、辺りは静まり返っている。いきなり、あんなこと言われたんだ。皆、僕達と同じ状況なら理解不能だよな。まあ、これまでが既に理解不能だけど。


 …よし。兵士と思われる人もいなくなっただろうから、古屋さんに話してみよう。魔法の使い方もわかるかもしれない。


「古屋さん!!聞こえますか!?」


 シーン………


「えっ!!古屋さん!!」


 シーン………


 無視?いや、そんな柄には思えなかったんだけど……

 嫌われちゃったかな。変なことを言った覚えはないんだけど。


 もしかしたら、古屋さんが寝てるだけかもしれないという僕の淡い期待は、時間を置いて何度か問いかけてみても返ってこない声によって打ち砕かれた。


 同じ部屋の筋肉男はずっと筋トレをしていたが、僕が項垂れている時は、肩を叩いてニヤリと笑顔を向けてきた。きっと、笑えってことなんだろうな。

 言葉じゃなくて身振り手振りで分かる。こんな状況になって初めて言葉は、所詮コミュニケーションの1つのツールに過ぎないのだと思った。


 僕も笑ってみた。でも、魔法は使えなかった。古屋さんの話だと魔法は町の人が皆使えるようだ。使えない僕はこの場所で生きていけるのだろうか?


 考えても無駄だな。






 特にすることがないので眠っていたが、筋肉男に肩を叩かれて目覚めた。兵士(?)がパンを牢屋の前の床に置いていた。パン2つだけだ。あまりに少ない。

 鉄格子の間からパンを取って1つを男に渡し、もう1つを僕が食べた。パン1つでお腹いっぱいにはならないな。


 筋肉男はパンを頬張りすぐに腕立てを始める。この男はお腹が減らないのか?


 返事は来ないと思うが、古屋さんに声をかける。やはり、返ってこない。何も出来ることがない。また寝るか。


 ガシャーン!!


「●∈◎◆%α∈!!」

「◆〇⑤/÷£££・☆!!」


 バキン!!

 ガシャーン!


「◆〇α£%÷◎◎◎!!」

「●*@◇◎●▲!!」


 遠くで金属がぶつかる音と共に大声や物音がした。徐々にそれは大きくなり、牢屋全体へ広がっていった。


「▲◇@◆α%α◇!」


 目の前に通路を駆け抜ける人達が見えた。服装は兵士(?)のそれではない。牢屋に入っていた人だろう。


 脱走だ!!思わず僕は鉄格子の方へ乗り出した。感電しない。何が起きたんだ?


 突然、筋肉男が立ち上がった。彼は、鉄格子を曲げて人が通れる隙間を作った後、僕へ手招きをした。


「て、鉄格子って素手で曲げれるんですか?」


 言葉が通じるとは思わないが思わず聞いてしまった。


「〇%÷⑤●◆!!」


 いいから来いってことか?


 僕は鉄格子から顔を出して外を覗いてみた。既に沢山の人が鉄格子から外と思われる通路の奥へ逃げていた。


 今しか逃げるチャンスはないだろう。


「◆)⑤÷%●∈α☆◎!」


 筋肉男は僕に逃げろと促してくる。僕はこれに懸けるべきなのか?

 閉じ込められていた場所から逃げれば必ず追手が来る。逃げ切れない時にどうなるか分からない以上、僕はやるべきことは……


「…やめておきます。」


 きっぱりと断った。言いたいことが伝わったのか筋肉男は少し残念そうな顔をした後、僕に向けて言葉を投げた。


「●⑤◆〇∈α◎!!」


 「達者にな!!」ってことかな。何となくだけど、言ってることが分かるようになってきた気がする。ここで別れるのは寂しい気もするけど、お互いに頑張ろう。


 僕は、手を振って彼を見送った。


 そして、逃げ出そうとする他の人見送りながら僕は開かれた牢屋の中に残ることにした。


「◆●%÷∈α◎……」


 呻き声がした。何を言ってるかは分からない。だけど、その声はどこか消え入りそうな儚さを感じさせた。通路の出入口と反対の方に1人の兵士(?)が倒れ、それを囲むように脱走した人達が蹴り続けていた。


 きっと、パンを置いてきた人だ。見知らぬ人だったけど…僕の体は自然と動いて彼らの間に入っていた。僕が走った理由も殴り続ける人達の間に入った理由もよく分からない。でも、そうしなければならない気がした。


「こんなことしてないで、さっさと逃げたらどうなんだ!!」


 言葉は、通じてないだろう。それでも言いたかった。


「〇◎α◆●%!」


 ボコッ


 殴られて倒れた。その瞬間、とてつもなく後悔した。

 根拠のない中途半端な正義感でこんなことになったのだから当然だろう。


 ドカッ

 ボカッ

 ボコッ


 兵士と一緒になって僕も蹴られる。

 見ない振りをすれば良かった。大人しく牢屋に入っていれば殴られることはなかった。彼がどれだけ怪我をしようと、例え死んでしまっても、僕のせいではなかったはずなんだ。


 でも…それじゃ……


 もっと後悔したんだろうな。



 ドカッ

 ボカッ

 バコッ


 しかし、予想とは裏腹に彼らの暴行は長く続かなかった。


「●◆α☆⑤∈〇〇%」

「〇☆α÷!●◆◆●」

「●!α◎⑤%〇£?」


 良く分からないが、徐々に人が減っていって最後は僕と兵士だけになっていた。不思議だけど……良かった。


 僕は、自分が殴られた元凶である兵士を担ぎ、僕と同じ牢屋の中に一緒に運んでゆっくりと寝かせた。体中が痛むけど、これで良かったんだ。


 そして、他の兵士が来るまでずっと待った………




 やがて部屋に数名の兵士達がやって来た。彼らは全ての部屋を見回った後、僕の部屋の前にやって来て本を渡した。その本には多種多様な言語が書いていた。何ページか開くと、日本語を見つけたのでそれを読んでみる。


「いろはにほへとちりぬる…」


「ここで見込みあるのは貴方だけだったようです。」


 ……声で分かった。この老人がノイだ。


「見込みって……何もしてませんよ?僕は魔法が使えませんし、一体、どういう事ですか?」


 魔法が使えないと言ったのはミスだったか?


 ノイは少し遠くの方を見つめながら話し始めた。


「異世界人この世界の者達に馴染むには、常識いう大きな壁があります。それは、言語であり、文化です。脱走を図るような者達に資質あると言えません。貴方は、検査に合格したのです。」


 ああ……謀ったの…か……

 もし、僕の予想が正しければ……


「ひょっとして、最初に牢屋から逃げた人は、サクラだったんですか?」


「私はこの作戦の全て知る立場ではないので、分かりません。」


「ここから逃げ出した人達は?」


「分かりません。」


 これ以上は、聞かない方が身のためだな。


「●÷☆%£●!α◎◎(シーロン様。いつまで寝ているおつもりですか?)」


 突然、ノイの言葉が現地語?のそれに変わった。僕の隣で倒れている兵士に向けて言ったのだろう。

 あれ、兵士の傷が治ってる。それだけじゃない。明らかにムキムキになってる……


「●%☆÷〇◎α!%£◆◎*(この青年は是非うちの騎士団に来てもらいたいね。見知らぬ男を助けるような人間はそう多くない。)」


 男が飛び上がって立った。この人もサクラだったか………


「●☆〇◎α%〇£……(貴方様なら、どうとでも出来たでしょうに……)」


「£〇◆%%%◎α☆/∈⑤?●☆(俺はあくまで異世界人同士で喧嘩になったときの仲裁役だ。首を突っ込み過ぎると検査にならん。)」


「●⑤/☆☆%α〇〇(それもそうですね。)」


 全然分からない……これから僕はこの言葉を覚えないといけないのだろう。


「改めまして私はボゥジュレン・ノイ申します。貴方の名前教えていただけますか?」


「はい。空木弥晴(うつろぎ みはる)です。よろしくお願いします。」


「空木さんですね。よろしくお願いします。今回貴方が助けられた御仁紹介します。彼は、ラスタフォン王国王立騎士団団長ロンド・シーロン様です。」


「よろしくお願いします。」


 ペコリとお辞儀をするとシーロンは手を差し出してきた。僕はその手を握った。堅い握手だった。相手の手は硬く分厚い歴戦の戦士を思わせるものだった。


 子供の頃、漫画やアニメを見て憧れた男がそこにいた。

3話まで頑張って読んでください!!

そこまで読んで、面白くなかったら切って下さい!!

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