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短編もの

嫉妬と熱意、謙虚さと傲慢の渦

作者: 忍原富臣

 ーー私の物語は面白くないのだろうか


 投稿サイトのアクセス数を見てため息を吐く。私の中の小さな嫉妬心に薪がくべられていく。

 メラメラと燃える火が次第に大きくなっていく。


 ーーどう足掻いても駄目だな


 嫉妬の熱が勢いを増して燃え上がり、頭の中にある物語を焼き尽くす。

 物語が消えていく。灰になっていく。粉々になって塵と化す。


 ーー所詮は非才、平凡、何を夢見ているのか


 今日もまた、私の物語が跡形もなく消えていった。

 誰にも見られない私の物語。やはり、面白くないのだろう。なら、無かったことにした方が気が楽だ。


 ーーコップの水を頭から飲み干す


 頭から水は飲めない。滴る水が床へと這いずっていく。冷静さを取り戻せと自分に言い聞かせる。


 ーー何を見比べているのか?


 不意に自身が問いかけた問いの答えは分からない。だが、その問いが何かの確信を突いていることは理解していた。


 ーー謙虚さが己を邪魔する


 自分をあらわにすることが怖い。素を見られ否定されることが怖い。誰かと向かい合うことが怖い。拒否されることが怖い。


 ーーお前は臆病者だ


 知っているとも。だから、自分の道が見えないし分からない。不安で仕方がないんだ。


 ーーなら、進めばいい


 進んだ所で私の物語は埋もれていくだけ。


 ーーならば、自分で埋もれた作品を表に出せばいい


 そんなこと、どうやって……。


 ーー見て欲しいのなら、多少なりとも傲慢であれ


 ……………………。





 創作を続けて数年……これで3587回目の同じ問いかけに不敵に笑みが零れる。

 感情の絵の具が混ざりあい、茶黒と紺色、灰色、オレンジと汚れた赤色に染まっていく。


 嫌いな自分が形成されていく。嫌いな感情が形成されていく。


 嫉妬と熱意に焼かれ、謙虚さがそれを鎮静化させる。そして、襲い来る傲慢という欲望が己の存在を誇示しようと躍起になる。


 私はあと何回、この感情の荒波を乗り越えれば良いのだろうか。




 ーーとある創作者の手記より

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