頭に響く『声』
【はいよーいスタート】
【開始地点はいつものスキル判別の儀です。どうやらレアケを引いたようですが、特に支障はありません。こんな所で無駄運を使うんじゃあないッ!】
【早速ですがステータスチェック………はい、間違いなくなんの変哲もない村人です。ごく稀に変な血が混じっててレギュ違反になる事があるので、ここでしっかり確認する必要があったんですね(2敗)】
「………えっ。」
女性のような『声』が急に聞こえた。
村の中では聞いたこともない声。誰かに語るように、しかし僕にしっかりと届く声で、突然に。
【で、スキルは『RTA』と………お、隠れスキルで『成長補正』ですか。これは通常の鑑定では見付からないスキルで、後天性スキルの取得に補正がかかる効果があります。いいゾ^~これ。】
【そして身体能力ですが、所詮は一般村人なので全て最低値です。このままではスライムにすらボコされますが、これから鍛えるので問題ありません。】
周りの人で、僕にしゃべりかけている人で、口の動きと『声』が合う人はいない。
全く意味のわからない内容を言葉にする女の人の『声』は、そんな僕の内心を無視して、捲し立て続ける。
【後は肝心な外見ですが………幼い顔付きで世の中のお姉さまを虜にするショタフェイス、キョロキョロと不安そうに辺りを見渡す庇護欲をそそる姿は………がわ"い"い"な"ぁ"だい"ぢぐん"】
なんだ、これ。
【外見はそんなに重要じゃないだろって?馬鹿やろうお前むさいオッサンやらピザデブよりかロリショタの方がモチベ上がるだろいい加減にしろ!え?将来的にはそうなるかも?いえいえ、ショタのうちにクリアするので大丈夫です。安心しろってぇ(慢心)】
頭が痛い。
【以上、今回の主人公君は控え目に言って当たりです!『成長補正』だけでお釣りがくるくらいなのでこの子で続行しましょう。】
急に頭を抱えだした僕を見て、周りの人が、司祭様が心配そうに声をかけてくる。
大人の男の声、女の声、おじいさんの声、子供の声、女の声、
声がぐちゃぐちゃに混ざって頭に響く。
「………!………!」
【さて、そんな主人公君ですが、いつまでも主人公君と呼んでは味気無いので呼び方を変えましょう。】
「………!!……………ホ…………!」
【やはりここは時間と安定性を考慮してぇ………。】
「ねぇって!大丈夫!?」
「ホロ!」
【私のパートナー、ホロ君です。】
聞きなれた幼なじみの声と、気色の悪い女の『声』が聞こえたと同時に、
僕の意識はそこで途切れた。