【最適解】を進む男
「ヒィッ!く、来るなァァァ!!」
山道を掛ける人影。
必死の形相で逃げる男を追う。
異様な速さで木と木の間を通り抜けるせいで、一向に追い付けない。恐らく何らかのスキルを使っているのだろう。
【-----。】
事実、使っているようだ。
尤も、先ほど右腕を切り飛ばしたお陰で本来の速さ程ではないらしい。
それでも追い付けないのだから、スキルというのは恐ろしいものだ。
「ちくしょう!ちくしょう!上手くいってたんだ、なのに、なのに!」
火事場の馬鹿力というやつか、追いかける男の速さが更に上がる。
一本道ではなく木々が邪魔して見辛い。このままだと、ああ、クソ。
見失った。
「………。」
辺りを見渡すが、男の姿は完全に見当たらない。
逃がしたか、どうする?どう追いかける?
【-----。】
血の跡。
あっちか。
「ぅぐっ、クソッ、クソッ」
少し開けた所で男が踞っているのを見付けた。
血を流しすぎたのか、顔を青くしてこちらを見ている。
男は犯罪者だ。
指名手配もされていて、現に釣り上げる時には向こうから仕掛けてきた。
だから、いつも通り、殺す。
「く、来るな、頼む、後生だ。」
立てないままの男に近付く。
後数歩で剣が届く。
「許してくれ、助けてくれるなら、金だってやるから!」
男の言葉を無視して更に近付く。
「やめろ、やめてくれ、お願いします………。」
【-----。】
………。更に近付いて男の目の前に立つ。
生死を問わない賞金首の犯罪者ならば、首だけを引き渡せばいい。
首を落とすために剣を振り上げ、
男と目が合った。
悲壮な顔が、醜悪に歪んだ。
「---っ!かかった!てめぇら今だやれぇ!!!」
男の声が、辺りに響いた。
それだけだった。
「………な、なんで………?」
「お前の仲間なら途中で全て殺した。」
男が信じられないものを見るように此方を見た。
「7人全員だ。」
「ッ!てめぇは!さっきもだ!なんで上手く行かねぇ!?何でこっちの狙いが分かるんだ!?それがてめぇのスキルなのか!?」
先ほどと違い、間違いなく恐怖に顔を歪めて叫び出す。
「そうだな、ワンパターンなのがダメらしい。」
「は?」
首だけになった男の顔は、酷く間抜けな面だった。
【-----。】
うるさい、黙れ。
せめて人を殺す時くらい、最期の言葉は聞いてやりたい。
それが、すっかり人殺しに慣れてしまった、擦りきれた俺の少ない良心だ。
それにどうせ、このくらいなら大した問題じゃないんだろう?
【-----。】
だろうな。
ただ、これ以上時間をかけても癇癪を起こされることは明白だ。
男の首を片手に街を目指す。
そう言えば仲間の首はどうしたものか、まぁいいか。
【大したロスは無いので続行です。】
夜中のテンションで書いたので初投稿です。
あらすじで何となく分かった兄貴は通っていいゾ。
わからない方は、内輪ネタがあるので不快に感じるかもしれません。
少しでも嫌に感じたらブラバしてくださいね。