第一章:第二話
アマラの施設内には、色々と店があるという。
ただ、武器、防具などを売る店は無いとのこと。
なので、街内にある防具を売っている店へとディレットは歩き向かうことにした。
防具を今買うのには、いくつか理由があるのだが、その一つに体の成長がある。
ジィーラ皇国では十四歳になる年で成人とされているが、年齢が十五、六歳までは体の成長が続くものが割と多くいる。
ディレットの身長は百八十センチを少し超えるぐらいで、今はもう成長は止まっているように見える。
これらの事と、出費の関係などから必要が迫るまで買わずにおいていた。
◇
――数十分後、武器、防具を売っている量販店へと到着する。
店は五階建ての建造で敷地も広く大きい店であった。
ディレットは、店員に要望する品の売り場を聞くと三階だといわれ大きな階段をのぼり向かうことにする。
一階と二階は武器専用の売り場、三階と四階が防具専用の売り場となっている。
四階は金属製の防具を専門にしているそうだが、今回必要としているものは革、布製などの軽量を主とした防具製品。
三階に着いて売り場を見る渡すと、兜、鎧、篭手、具足の一式が人形に着けられて店内に並べられていた。
人形の首には木札が吊り下げられていたり、紙が貼られている。そこには防御値、価格などが書かれていて性能などを客は確認できるようなものだった。
ディレットが今回というか鎧類は初めて買うのだが、買おうとしているものは、防御値が高くなくてもよいので、軽く、動きやすいものを考えている。
理由の一つは、長期間、長時間装備することを考慮して、体の負担を抑えるためである。
この考えは、他の討伐者達もそう考えていて革、布系装備の者が多い。
もう一つは、これから相手にする主なモンスターは『ゴブリン』と呼ばれる下位モンスターで、力は脅威とまではいかない。なので、防御値がそれほど高くなくてもこと足りるからだ。
ディレットは、ゴブリンとの戦闘経験は行商途中で何度か遭遇して、防具無しで戦い問題なく屠ってきた。
なら、防具などいらないのでは、と思われるがそういうわけにもいかない。
これから向かう場所は、整備された場所では無く、木陰に隠れて攻撃されるものが毒のものだったり、多方面複数からの攻撃もありうるからだ。
毒を持つ者の攻撃は、かすり傷でも動きが止まってしまう場合や死に至ることがある。
ディレットは、今まで一緒にいた高位ランクである母や行商仲間達とは目的のために別れたのだ。
とっさに解毒薬を使ってくれるような者は、ディレットの側に今は誰もいない。
鎧といえば、魔法で鎧に似たものを作り出すことが出来る。
《プロテクトゲル》と呼ばれるものである。
だが、ディレットはある理由から魔法を行使する源のエネルギーである『マナ』の使用を極力節約したいと思っていて、《プロテクトゲル》の発動も極力控えてもいた。
◇
ディレットは、店内を一通り物色して見てまわった。
そして、『防御値:四』の『レザーアーマー[オーガ]』一式の購入品を決めた。 ※[]内(ここでは『オーガ』)は主要素材を表している。
最終確認のため、店員に声をかけて実際に装備をしてみる。
装備室では、店員に装備を手伝ってもらったが、一人でも問題なく装備出来るような作りだ。
「よくお似合いですよ」
装着した姿を鏡で見ていると店員が使い古した言葉をかけてきた。
カッコよさより今は防具の性能だと、ディレットは思いながら体を動かしたり跳ねたりしながら防具の具合を確かめた。
「――問題ないようだし、これを貰おう」
「ありがとうございます。
一式全部で金貨一枚と銀判貨一枚と銀貨六枚でございます。
このまま装備して行かれますか?」
ディレットは「このままでも問題ないだろうし、少しならしも含めて着ていこう」と思い。「そうだな、じゃあこのままで」といって装着していくことにする。そして「これが代金」といって貨幣を手渡す。
【貨幣】
貨幣の種類は、銅貨、銀貨、金貨、朱金貨、黒金貨とある。
百枚毎で貨幣価値が上がり十枚毎では銅判貨、銀判貨、金判貨と貨幣がある。
例:銅貨百枚 = 銀貨一枚
金貨百枚 = 朱金貨一枚
銅貨十枚 = 銅判貨一枚
銀貨十枚 = 銀判貨一枚
と、なっている。
◇
「――ありがとうございました。またのご利用お待ちしております」
店員の笑顔を後に店を出た。
次は、宿泊とパーティメンバー募集のためアマラ館へと向かう。