第五章:第二十七話
ディレット、カナ、コモモの三人はアマラ館から外に出ていき、街内で買い物を済ましていって終えると、そこからディレットの個人的用件である『何か』探しの為に、あまり遠くまでは行かないで付近を軽く眺めながら散歩をするように歩いて回っていった。
コモモは、最初三人でお出かけできて嬉しかったのかテンション高く、何を言うにも身体が動き『ピョンピョン』といったように忙しく跳ね回っていたのだが、次第に疲れを覚えていったのか、今はカナが持つ籠の中で眠ってしまい、『スヤスヤ』お休み中である。
「――Rrr(Zzz)……」
そして、そろそろカナも疲れが出始めるかもしれないとディレットが思った頃に、散策は終えることにした。
今回の散策では案の定、収穫は何も無かった。
些細なことでもいいからと思っていたが、期待もあまりしていなかったので、特段気落ちをするということも特には無い。
ディレットは、カナに散策を終える事を言うと共に軽い礼のつもりと一休みも込めて、お茶でもご馳走しようと『プレイス~シオン~』店へ寄っていこうということを言った。
それに対してカナは、別にそんな礼などいらないなどと言って断ったのだが、ディレットもまあ自分も喉が乾いたからついでだと、そう遠慮しなくていいなどのようなことを言い聞かせ、了承の返事を貰う。
そして今、三人(一人は籠の中で夢の中だが)は『プレイス~シオン~』店の前に来ていた。
「ここですか? なんか立派そうに見えるんですが……」
カナは店内のオシャレ雰囲気を外から嗅ぎ取ったのか腰が引けたように言った。
「ああ、ここぐらいしか、あまり店は知らないからな。俺はどうかと思うが、皆が絶賛していてな、コーヒーがうまいらしい。カナはコーヒーを飲んだことがあるか?」
「コーヒーですか? いえ、ないです」
「そうか、じゃあ飲んでみるといい、何事も経験だ。不味かったらまた別に頼んでもいいし、他に何か食いたい物があれば頼んだらいい。全部奢ってやるから安心しろ」
「ありがとうございます。でも……ここに私みたいなのが入っていいんですかね?」
「ん? なぜだ?」
「なんか入りづらいといいますか……私、薄汚れているこんな見てくれですので……」
カナの服装は、この国で一般的に着られている、袖が長く、丈が膝ぐらいまである感じの上着に細いベルトを締めて、下にはズボンを穿いている装いで、それらは薄汚れていたり継ぎ接ぎが目立ってもいる箇所もあるが、そういった装いは、今いる街内の区域では割と多くいるのだが、店内の雰囲気に比べると浮いたように感じてしまうのではといった発言だった。
「そんなのは問題ない。店内に入ると最初はちょっと戸惑うかもしれないが、俺は一回来たことがある。もう免疫もついた。
まあ、オシャレ空間といってもよくよく思い出してみると、特に価値がなさそうな物をただなんかいろいろ飾っているだけの気がするしな、入って数分でも居ればなんてことはなくなる。それに恰好なら俺もたいしてそんなに変わらんだろ?」
そう言ったディレットの服装は、つい最近買った物なので綺麗なものだったが特になんともないシャツとズボンだった。
「……そうなんですが――」
「なんだ? ――ああ、そうか……女か……わかった……」
ディレットは何か思いついたのか、独り言のようにそう言うと収納空間から艶がある生地に刺繍が施されたフード付きの赤いマントを取り出して、
「じゃあ、これを貸してやるから被ってみろ」
と、言った。
「なんです?」
「これはな、あーと……俺は行商していた時があったんだが、わりと高級店とかと取引することが多くてな。
交渉の相手をするのは主に母上とかだったが、外で待っている時とかでも外見を気にするヤツとかはいたんだ。
これは、そういったヤツ用で外見だけでも見栄えがいいようにと母上がこのマントを買って渡されたものだ」
「へー。ディレットさん討伐以外でも働いていたんですね」
「なんかちょっと引っかかる言い方だな……まあ、いい。これでも被ればいいだろ?」
「大っきすぎますよ。余計に変に見えますし、なんにしても、これじゃ歩けないです……」
「あーだ、こーだうるさいヤツだな。問題無い――ホラ」
と、ディレットは言ってマントをカナに被せた後、『ヒョイ』と横抱きにする。
「きゃっ!」
と、カナは小さく驚きの声を上げた。
「ふん。やっぱりそういう声も出すんだな」
と、ディレットはカナの様子を軽く確認すると――
「じゃあ、いくぞ」
と、言って店の扉へと向かっていった。
「ええっ!? こんな状態で入るんですかーーー!?」
「問題ない。大丈夫だ」
「――そうリーだいじょうぶリーRrr(Zzz)……」
と、籠の中にいるコモモは『むにゃむにゃ』と眠りながらそう言った。
バァーーーン!!! ――ディレット、ダイナミック入店!!!




