第五章:第二十六話
『ヨヨヨ茶』を飲み、何とも言えないぬくもりをお腹にディレットは感じていると――
『バン!』っとディレット達が入ってきたドアが勢いよく開け放たれた。
「あっ! ディレットの兄ちゃんじゃん!」
ドアから一人の男の子が姿を見せ声を上げた。その後ろからは三人の女の子が『ヒョコ、ヒョコ、ヒョコ』っと順次に顔を出しもする。
この子供たちは、野菜の皮むきでアルバイトとして雇っている、まだ数回だが顔なじみとなった者たちであった。
四人の中では、年長者でリーダーらしき男の子を先頭に、三人の女の子たちもディレットのもとへと早足でやってくる――
「ああ。元気そうだな」
「なあ、今回も野菜の皮むきするのか? また雇ってくれよ」
「やとってー」
「やとってほしいー」
「指名してほしいです」
と、他三人の女の子も男の子の言葉から感化されたか、それぞれ口にする。
「野菜の皮むきはやる。そうだな、何もなければ今日にでも指名をいれとくか……仕事は明日か明後日に頼む予定になる」
と、言うディレット。
指名をすると少額ではあるが指名料を要求される。
であるが、ちゃんと仕事をしてくれたほうが良いので、ディレットはケチらず指名をすることにしていた。指名されたほうも自分の報酬に上乗せすることになっているので指名を取ろうと頑張って働くことに繋がってもいた。
「やったぜ。ディレットの兄ちゃんは仕事を急かしたりしないからな、ゆっくりできていいんだー。それに仕事終わったらジュースもくれたしな!」
「うん」
「おいしかったー」
「またくれる?」
「んーまあ、ちゃんと仕事をするならな、考えないでもない」
と、ディレットは言うと――
「わー」といって子供たちは、その言葉に歓声を上げる。
すると――
「リ!? アッチも! アッチもお手伝いするリ!」
と、コモモは『ピョンピョン』と跳ねながら言った。
「いや、コモモは手伝いにならなそうだから、ちょっとやめとこうか……」
「リーーー」
『ションボリ』するコモモ。
「ジュースなら昨日いっぱい飲んだだろう? でも、ほとんど吐いちゃったか……」
「ちがうリ! ディレットさんのお手伝いがしたかったんだリ!」
「……でもなー。俺らが持つ包丁をお前に渡して使ったら凶器だし、お前の持つナイフか包丁じゃ、ジャガイモ一個終わるころに全部が終わってるんじゃないか?」
「リーーー。《ウィンドカッター》さえ、《ウィンドカッター》さえ使えていれば……リー」
「『陣魔法』で調理をしようとするな、『MP』が勿体無いだろ」
「そんなことないリ。使わなけば、ただ単に消えていくだけのものリ」
「ぐっ。ちょっと言ってみたいセリフだな……」
「もう、コモモはそんなにいじけてないの。皮むきは、この子たちの仕事なんだから取っちゃダメでしょ。コモモは自分の仕事を見つけなさい」
と、カナが横から口を挟む。
「リーーー」
『ションボリ』を継続するコモモ。
「……あーーーあれだ。ジャガイモやニンニクの芽を取るくらいならできるだろ?」
「リ!? 出来るリ! 楊枝さばきなら任せてリ!」
「じゃあ、それを頼もうか……それと《フィルムゲル》は出来るんだよな? 出来ないと身体に匂いがついて大変なことになるからな」
「リ? ……たぶん、だいじょうぶリ!」
と、カナはそんなディレットとコモモの会話を『ジー』っと見つめ、ディレットは気にかかり、カナに声を掛けた。
「…………なんだ?」
「いえ、やさしいなと思いまして……」
「はっ、ちがう。『グジグジ』としているのを見てるくらいならと思っただけだ。別に何でも無い。それにタダで仕事をしてくれようというんだぞ。危険がなければやってもらうことに越したことないだろ?
って、そろそろこんな話しはやめにして、俺は買い物に行かないといけないんだ」
「……買い物って近くのとこですか?」
「ん? まあ、近くといえば近くだが……」
「じゃあ、ついていきます」
「え? なぜ?」
「今日はもうヒマにしましたから」
「は? どういう意味だ?」
「カナちゃんがいくならアッチも、アッチもいくリ!」
「えー。カナ達だけずりー。俺もいきてーよ」
「いきたいなー」
「いきたいよー」
「ついていきたいです」
「あなた達は、これから部屋掃除の仕事があるでしょ、だからダメ。仕事が無い時にしなさい。それと時間は大丈夫なの? 何かやることがあって来たんでしょ?」
「ちぇー」
と、男の子は言い。三人の女の子たちも『ぶーぶー』と言って――
「じゃあ、ディレットの兄ちゃんまたな!」
と、男の子は言って、三人の女の子は小さく手を振って『バイバイ』とした後に、奥の部屋へと行き姿を消していった。
「……勝手に話を進めるなよ……それと仕事が無い日でも勘弁してくれ。遊びに行くんじゃないんだぞ? 何も楽しいことなんてない」
「大丈夫です。勝手についていって眺めるだけですから」
「いや、だから――」
と、ディレットは何か言おうとする途中『んっ』とある考えが思い浮かんだ。
買い物が終わればいつものように『何か』を探すために一人で街を探索する予定であった。
しかし、街内で『自分にもわかっていない何か』を自分一人で探すのには限界がある。
それは自分が意識しているものにしか向かないことにも関係してくるだろう。
自分以外の目線でも見ることで何か新しい発見があるかもしれない――
そう考えると話は変わってきてしまう。
それは、お願いされる方から、お願いする方になるからだ。
ただまあ、カナはなぜかついてきたい。ディレットは何か思うようなことがあった場合、それを知らせて欲しい。と互いの利害は一致していると思われるので、わざわざお願いとしなくても大丈夫だろう。
カナの本当の利益は何かわからないが……まあ、何かジュースか食べ物だろう。と、思い至って――
「……いいだろう。ついてこい」
「え!? いいんですか……?」
いきなりの手のひら返しにカナは、なにか不審な者でも見るようにディレットを見てしまう。
「ああ、ついでにカナが知っている街をちょっと案内してくれると助かるな」
「それは、いいですけど……何かちょっと声が優しくなってませんか?」
「そんなことはない。大丈夫だ」
と、ディレットは相手を落ち着かせるような優しい声をイメージして言った。
「ええーーー。やっぱりちょっとやめとこうかな……」
反してカナは不審感が増していった。
「なぜだ!? 大丈夫、大丈夫だから。何もしないって。ちょっと、ちょっと行くだけだから、な?」
このことに関してはディレットにとってとても大事なことなのだ。
だからあまり人に頼み事をしたことないながら、それはもう一生懸命に言った。
「…………」
『ジトー』といった目線をディレットに向けていると――
「だいじょうぶリ! さっさといこうリ!」
と、コモモ(鶴)の一声か、三人はとりあえずアマラ館の外へと買い物に出かけることになったのだった。




