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第五章:第二十五話

 丸太を組んで出来たような外観の建物。その一室にディレットはいた。


 内部から見上げる天井はわりと高く、百人近くは入れそうな広さはある。置かれているテーブルは、幾つかの細長いテーブルを一列として並べ、それを二列として配置し、その脇には手作りさを感じる木製の椅子も多く並べられていた。


 今、部屋内にはディレット以外は誰もいない。ディレットは一人、中央付近の椅子に座って、そのまま放置させられて『ポツーン』とした状態であった。


 ここまでディレットを連れ去ってきたカナはというと、ディレットを座らせた後、たいした説明もなく、そのまま奥にある別の部屋へと行ってしまったのである。ディレットは、このまま逃げることも考えたが、ここまで来てすることでもないと思い直し『ポツーン』を継続することにしたのだった。


 そんな中、しばらくするとカナは戻ってきて、ディレットは言葉を掛けた――


「……ここは、お前達の宿舎か何かか?」


「はい? えっと、ここはまあ、共同スペースのような所で、みんなで食事をしたりする所でもありますね」

 カナは、ディレットが座るテーブルの向かいではなく横の位置へと座りながらそう言った。


「んで、なんで俺は、ここに連れ込まれたんだ?」


「そう、警戒しないで下さい。別に何も売りつけようとはしてませんよ?

 ここにお連れしたのは、お腹にいいものがありますので、それをと思いまして」


「え? いや、あんまり変な薬もらっても逆に困るというか……」


「そんなしっかりとした薬じゃないですよ。薬草の『ヨヨヨ草』を煎じたお茶です。美味しいですし、お腹にもいいんですよ。どうぞ」

 と、カナは湯呑をディレットの前に差し出した。


「んー。『ヨヨヨ茶』のことは知ってるが、そうではなくてな。俺は、他人からもらったものとか、あんまり口にしたくないんだ……ましてや信用をしてない者からとなると尚更――」



 ――その時、建物内に聞き覚えのある声が響き渡った!!!



「だいじょうぶリ!!!」


「! その声――コモモか!?」


「リッリッリッ(ふっふっふ)。そうリ! アッチの声だけでわかるなんて、さすがディレットさんリ! リ(とうっ)ー!」

 コモモは、天井にある木材部分からモモンガを模した着ぐるみの皮膜を広げて飛び立つと、ディレットがいるテーブルに『シュタッ』と、どこか『キメ顔』で着地した。


「リッ(ふっ)」


「お前は……毎日アマラ館に遊びに来てるのか?」


「そんな事ないリ。たまたま毎日リ」

 コモモは、『キメ顔』を解除して普通の顔に戻り、『テチテチ』と歩きながら言い、ディレットとカナの間に位置した。


「たまたま毎日ってどういう意味だ?」


「リ(もう)ー、そんな事はどうでもいいリ。ディレットさん、カナちゃんは信用できるリ! アッチを信じてリ!」


「んーーー」

 ディレットは、コモモを見つめ、何とも言えない顔をして、声を漏らした。


「そうですよ……信じて」

 カナは、潤んだ瞳で、上目遣いにディレットを見ながらそう言うと――


「あだだだだ――なぜ、顔を鷲掴みにするんです!」

 カナが痛がっているように言っているが、ディレットは別に力は入れてはいなく、カナの勝手なノリであった。


「いやちょっと、その上目遣いが誰かと被ってな……」


「もう、ひどいですよ。そんなに信用ないなら私が最初に飲んでみせます。 それならいいですよね?」


「そうリ! アッチも飲んで証明するリ! あっカナちゃん、アッチにもそのお茶、このコップに入れてリ。丁度、喉が乾いてたからよかったリ」

 コモモは、自分の『カの領域』からコップを取り出して渡すとカナにお茶を汲んでもらった。


「…………」

 ディレットが見つめるなかカナとコモモは、お茶を飲む。


「ほら、平気ですよ。飲んでみてください」

 と、口つけた湯呑を渡すが、ディレットはそれに対しては特に口つけられたものだからと文句は無く、湯呑を素直に受け取った。特に毒などを混入するようなぎこちなさやそういったことをする理由が今の所ないと思っているからである。

 ちなみに、『特質系ラステム』の『サバイバル』はランクを上げていくと、どちらから来たかなどの帰巣性に似たことや、主に自然物に対してだが、自分が食べて良い物かの良し悪しの感のようなものが働いて、なんとなく分かってきたりもする。が、個人差も影響したり低、中位ぐらいのランクでは、あまり大した判断はつくものでもない。


「リ(は)ー、ほっこりする味リー。もう、ディレットさんは飲まなくて、アッチが全部飲んであげるリ!」


「こら。コモモはちょっと暴飲暴食が過ぎるから気をつけないとダメって言ったじゃない。ディレットさん、このままじゃコモモがお茶でお腹壊しちゃいそうだから早く飲んでください」


「…………」

 そう言われ、渋々といった感じに湯呑に手を伸ばして持つ。もうお湯の温度も湯呑から手に伝わる温度で、そんなに熱くないと感じた。

 自然な感じに『フーフー』と息を掛けた後にゆっくりと口へ運び、飲み込む。

「まあ、なんともなさそうだな」

 と、ちょっと失礼なことを言いながらもやっと『ヨヨヨ茶』を飲み始めた。


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