第五章:第二十二話
図書館へと入っていくと返却場所にすぐに向かい、担当する司書に返却手続きの旨を伝えて作業を済ます。
それから、朝食を食べたばかりなので、休みがてらに読書スペースで少し本でも読んで過ごそうかと決めた。
これからの予定として、アマラ館を出て外で買い物をする予定を立てているのだが、なんかお腹が気になっているのも本を少し読んでいこうという一つの理由であった。
図書館内では、たまにゼフやアディルトと顔を合わせることあるが、今回は顔を合わすことは無かった。
本を選び終わると人が近くにいない場所を選び、椅子へと腰を下ろした。
『パラパラ』と表紙に花の絵が書かれている本のページをめくりながら、じっくりとは読まず軽く流し読みという感じで読み進めていき時間は経っていく。
最後のページをめくると、本を閉じ、もとの棚へと返し終えて図書館を後にした。
外に続く門へ向かう途中、お腹のことはまだ気になっており、腹に手を当てていた。
実際にお腹を下しているわけや痛みがるというわけではないのだが、昨日食べた『ポポリーム』の花びらのことが気になって、変に頭に残っているからで、俗に言う、気にしすぎというやつであった。
そんな状態でアマラ館の外へ出ようと歩いていると――
カナに見つかった。
「あっ! ディレットさーん!」
笑顔で手を振っていた。
見えなかった、聞こえなかったことにして、少し早足になり、その場を移動しようとする。
「――ッ。逃しません!」
カナは、すばやくダッシュして『ズザザーッ』とディレットの前方で立ち塞いだ。
「「…………」」
互いに無言で見つめ合う二人。
これは恋心による思いを寄せた視線ではなく、相手の動きを窺うもの――スキを見せたならば相手はすぐさまそこを狙ってくるような緊張感がそこにあった。
『ジリッ』とディレットが右に行こうとする素振りをすると――『ジリッ』とカナもその動きに合わせた。
――逃してはくれないようだ。
ディレットは、根負けして話を聞くことにした。
「カナか……花はまだ元気だぞ? 少し食べたが……」
「食べた!? たしかに食べれもする花ですが……
ゴハンもちゃんと食べれないなんて、ディレットさん本当はお金もってないんですか?
もう買って頂いた、お金は絶対に返しませんが、売る頻度は予定していたものより減らしましょう」
カナは哀れんだような目でディレットを見た。
「ぐっ。ちがう。そうじゃなくてコモモから食べれると聞いたから興味で少し食べてみただけだ」
このまま金がないように装おうとしたが、何か胸に引っかかるものがあり、それはやめておいた。装ったとしてもすぐに看破されそうでもある。
「そうですか。でも、しばらくの間は一度に売る量も遠慮してあげますから、ゴハンはちゃんと食べて下さいね」
カナの目は、やさしかった。
「ぐぅぅ。……ところでなんの用だ? さっきも言ったがまだ花は枯れてないから必要ない。買わないぞ」
「花を売りに来たんではないですよ。ただ挨拶をしようとしただけなのに逃げようとするから……ってお腹、どうかしたんですか?」
カナは、お腹に手を当てているディレットを見て不思議そうに思い、そう言った。
「んん。別になんでもないんだが、何かちょっと気になってな」
「そうですか……あっ! じゃあちょっと来て下さい」
「え? 何を言ってるんだ? 俺はこれから買い物に行かないと行けないから、また今度な」
と、ディレットは『NO!』と言える男。
軽く片手を上げ、別れの意思を示した後、再び外に続く門へと歩き出そうとしたら――
『ガッ』と強い力で腕を捕まれた……
「いいですから、いいですから」
と、カナは笑顔で言い。
ディレットは強引に腕を引かれ連れ去られていく――割とおっきい男が少女にお持ち帰りされようとする光景であった。
「ア゛ー……どこに連れて行かれるんだ……」
少しげんなりとした感じに『ズルズル』と無抵抗に引きずられていく。
ディレットにとって少女の腕を振り払うことは簡単に出来るものだが力をいれると、その戦う者とはとてもいえない指や腕を痛めさせてしまいそうで、なんとなく出来なかったのだ……
でも、その地面には一つの線が『行きたくない』といった思いを表しているかのように、くっきりと伸びて残していった。




