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第五章:第十九話

 ビスク、クーアの二人は、ディレットの部屋へと立ち寄った用件を終えると、すぐには帰らずに三人でまた雑談に戻った。


 しばし時間は経ち。


 『コンッコンッコンッ』と窓を叩く音が三人の耳に入ってくる。


 音のする窓の方を三人は見てみると――

 小さな来客者、コモモが窓の外で『ブンブン』と勢いよく手を振って立っているのが見えた。


 窓は開いているので、勝手に入るように言うとコモモは『テチテチ』といった具合に部屋に入ってくる。


「おう、コモモ」


「今日はまだチーズ買ってないから、また今度な」


「こんにちはリ。チーズ楽しみに待ってるリ」

 といった具合にビスク、クーアはコモモに軽く挨拶をして二人は雑談へと戻る。


 そして、椅子に座っているディレットの側へと着くと。


「リ!」

 背筋を伸ばした直立の状態で『ビッ』と両腕を勢いよく上げ、バンザイをしたようにポーズで止まった。


「…………」

 ディレットは、その行動の意味するところを理解して、何も言わず両手でコモモの脇辺りを挟むように持つと、机の上へと移動させ乗せた。

 コモモとしては、前にあったオレンジタバスコ事件を共に乗り越えてから仲間意識のようなものが、クーアにもそうだが、ディレットに対してはさらに強くなり、ディレットと何か関わることが嬉しく感じるのだろう。

 それが、討伐依頼から帰ってきた時にした、会って飛びつくような行為や今のような行為に結びついているのかもしれない。

 ただ、ディレットがこういったことまで理解が及んでいるかといえばそうでは無く、このバンザイのような行為も自分で上に上がるのは面倒だから、やって欲しいんだなと思ってのことで、それに何か言うのも面倒なので素直に行動しただけである。


 机の上に着いたコモモは『ムフー』と満足そうな笑顔をディレットに向けた後、今度は机の上に今まで見なかった物に関心が向いた。


「リッ!? お花があるリ。ディレットさん、お花が好きリ?」


「ほほう、コモモ。これは、すごく高くついた花だ。どう思う?」


「すっごい綺麗リ! ディレットさんはこのお花の名前知ってるリ?」


「ん? そういえば名前は聞かなかったな……コモモは知っているのか?」


「この花は『ポポリーム』っていうお花リ。この黄色い感じがとっても美味しそう……あっ花びらとか食べれるんだったリ」


「ふーん」

 と、ディレットは興味無さそうに言った後、花びらを一枚取ると、そのまま渡してみる。コモモは受け取った花びらを『むしゃむしゃ』と食べてみせた。

 異常がなさそうなでディレットも軽く布で拭いてから一枚食べてみる。


「……味なんて特に無いし、うまくはないな……まあ、えぐみや苦味が無いから草や虫よりかはマシって感じか……コモモはこんなのが美味しいのか?」


「特に美味しいものじゃないリ。ただ食べれるっていっただけリ」


「そうか……」

 そう言った後、軽くお腹を擦った。


「でも名前も知らないのに、なんでこのお花を飾ってるリ?」


「……これはな、お前も知っているカナという女から買わされたんだ」


「リ? ディレットさん、カナちゃんを知っているリ? カナちゃんはアッチの友達リ!」


「そうだ。昨日お前のおかげで知り合うことになってしまったんだ」


「アッチのおかげ!?」

 なぜかちょっとうれしそうに言うコモモ。


「コモモ。まだ小さいお前……身体はずっと小さいままだと思うが、身体のことじゃなくな。まだ良くわからないかも知れないが、あまり俺達の情報を他のヤツにしゃべっちゃダメだ」


「このまえ、カナちゃんにもそう言われたリ。だからもう喋ってないリ」


「そうか……ならいいんだが……」


「アッチは口が堅いリ! もう焼き肉のことは言わないリ! ちょっとほっぺを触ってみてリ!」


「ん?」

 ちょっとどういうことかわからなかったがコモモの言う通りに頬に人差し指でそっと触れてみる――『ぷにっ』としていた。


「リッ(ねっ)!」


「……。……。え? えっ!? どういうことだ?」


「ふふーんリ」

 と、コモモは鼻から勢いよく息を吐き出し、胸を張って何か自信に満ちたような顔をした。


「……ほんとうか? ほんとうにもうだいじょうぶなのか?」


「だいじょうぶリ!」


「…………」


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